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トロントの各界で活躍する著名人にインタビュー

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黒沢 清
Kiyoshi Kurosawa
映画監督
登場人物の思考回路や行動の意味を語らず、観る者に『予測不可能の恐怖』を感じさせるそのユニークな作風が、国際的に高い評価を得ている黒沢清監督。トロントに滞在中の彼が、映画祭参加作品『アカルイミライ』を語る。

―『アカルイミライ』は、監督の他の作品に比べて感情をよりストレートに表現した解り易い内容だと言われていますが?

「今までは、ハッキリしないものは、最後まではっきりさせないようにしてきました。でも今回はもう一歩だけ踏み込んで、メッセージ性を持たせました。曖昧であることに飽きた、というのが一つの理由です」


―主役の雄二は他人とのコミュニケーションがうまく取れずに社会に対する苛立ちを募らせる若者。そして、そんな彼に歯がゆさを感じるのがその親世代の真一郎ですね。監督ご自身はどちらの世代により共感しますか?

「本当は中立でいたかったんですが、最終的には真一郎にふと感情移入してしまった。不本意ですね(笑)」

―今回起用した俳優の、どういう点に魅力を感じられたのでしょうか?

「まず、自分がどういうポジションにいるのか分かっていない新人を雄二役にして、撮影が終わる頃に『自分が主役なんだ』と気付いて欲しかった、オダギリさんは期待通りでした。彼は映画の主役は初めてですが、資質があると思いました。
守を演じる浅野さんはその逆です。日本映画界の中心にいるように見えて、実は外側にいるという雰囲気が、表面上は普通だけど、自分は社会と全く相容れないと認識している守の役にぴったりだと思いました。
真一郎役の藤さんは、昔の栄光を背負っているようなところが全くない人だと聞いていたので、年上の役者さんを主役級で使うのが初めての僕でも、大丈夫だろうなと思い起用しました。実際、すごくやりやすかったです。精神的にはあの人が一番若いですね」

―英語の字幕では作品を100%表現しきれない、というジレンマは感じますか?

「これは避けられない言葉の壁ですよね。でも、日本語だと曖昧なことが、英語だとはっきりして、伝えたいことが伝わるということもあります。どっちがいいとは言えない。全くの別バージョンと考えています」

好きな映画はありますか?

「沢山あるんだけど…(しばらく考え込んだ後)山中貞雄監督の『百万両の壷(*注1)』。これは世界でも5本の指に入る、恐ろしい大傑作です。最近観た中では、ポランスキー監督の『戦場のピアニスト(*注2)』が素晴らしかった。単純なヒューマニズムで『戦争は悲惨だ』と言うのではなく、戦争をとことん馬鹿にした映画ですね」

―今後どういった作品を撮ってみたいですか?

「今までやったことのないものをやりたい。今までやったことをもう一度と言われるのが一番嫌ですね。色々な映画を撮って、『映画とは何か』ということを知りたいです」
映画祭関係者で賑わうダウンタウンのホテルで、意外なほど感じ良く、丁寧に取材に応じてくれた黒沢監督。淡々とした中にユーモアがそこはかとなく漂うその口調は、監督の作品のイメージそのものだった。

インタビュー/後藤美穂


*注1/『丹下左膳余話 百万両の壺』(1935年) 今なお熱狂的なファンを持つ故・山中貞雄監督が、25歳の時に撮った喜劇の大傑作。

*注2/『The Pianist』(2002年)
巨匠ロマン・ポランスキー監督が、ナチス占領下のポーランドで必死に生き延びようとするユダヤ人ピアニストの苦難を、実話に基づいて力強く描いた名作。アカデミー賞監督・脚色・主演男優賞受賞作品。
黒沢 清 Kiyoshi Kurosawa
映画監督。立教大学在学中より8ミリ映画を撮り、83年に商業デビュー。92年に『カリスマ』の脚本がサンダンス・インスティテュート・スカラシップを受賞する。コメディからホラーまで、その多彩でオリジナルな作品は国際的に高い評価を得ている。代表作は『ニンゲン合格』、『CURE』、『大いなる幻影』、『回路』(カンヌ映画祭国際批評家連盟賞受賞)など。55年神戸生まれ。

『アカルイミライ Bright Future』
監督・脚本・編集:黒沢清
出演:オダギリジョー、浅野忠信、藤竜也
サイト:www.uplink.co.jp/brightfuture

2002-Japan-Color 115min
おしぼり工場で働く雄二(オダギリ)は、常に行き場のない苛立ちを抱えている。そんな彼が唯一心を許すことのできる相手が、バイト仲間の守(浅野)だった。ある日、その守が大切に育てていたクラゲを雄二に託し、突然姿を消してしまう。一人残された雄二は、やがて守の父、真一郎(藤)の下で働くようになり、2人の間にはいつしか不思議な関係が生まれる・・・。カンヌ映画祭パルム・ドール賞ノミネート作品。
※トロント映画祭は13日に終了しました。 日本版DVD/VHSは、公式サイト又は Amazon.comなどで入手可能。

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