bits lounge
トロントの各界で活躍する著名人にインタビュー

ホームへ > インタビュートップへ > シンディ・タウンゼンド/ マリア・ナピック
BACK NEXT
Cindy Townsend / Maria Knapik
シンディ・タウンゼンド/マリア・ナピック (ソプラノ歌手)
無名の若手作曲家による新作オペラ「Harvest Sky」がミッドタウンの小さな教会で公開され、予想を遥かに超えるパワーで観客に感動をもたらした。ダイヤの原石のようなこの作品を『陰と陽』の魅力で彩ったのは、シンディとマリアの2人だった。

トロント在住の若手作曲家、ダグラス・ライスによる新作オペラ「Harvest Sky」の公演は、冷たい風が吹きすさぶ土曜の夜、セントクレア駅近くの小さな教会で行われた。ステージには椅子が二脚のみ。至って質素な会場だ。しかし客席は満席で、公演が始まるとすぐに、観客は舞台にグイグイ引き込まれていった。そして公演後には満場一致のスタンディング・オベーションが長い間響き渡った。

音楽一家での幸せな子供時代
その3時間前、公演直前の慌しさが漂う会場の片隅で待っていると、可憐な雰囲気をたたえたシンディが時間より少し早く現れた。今回の公演で純粋無垢な悲劇のヒロイン、エレノアを演じる彼女は、ニューブランズウィックの音楽一家で幸せな子供時代を過ごしたというだけあって、おっとりしていて、いかにも育ちが良さそうだ。ソフトな声で控えめに話し、少女のような可愛らしさを感じさせる。

「私が歌を始めたのは、もうずーっと、ずーっと昔よ(笑)。父がビッグバンド(大人数編成で演奏するジャズのスタイル)をやっていたり、家族には音楽に携わっている人が多かったせいか、音楽に囲まれて育ったの」
その後トロントに移り住み、トロント大学のオペラ・プログラムを専攻した彼女は、そこでカナダを代表するソプラノ歌手、ルイス・マーシャルとの出会いを果たす。切なく美しい声で観客の心を掴むシンディの優れた表現力は、この恩師によるところが大きいという。
「ルイスは子供の頃から聴いていたアーティストだもの。そんな彼女と出会い、教えを受けることができたのは、すごくラッキーだと思うわ」

8人姉妹で歌手デビュー

シンディに「Harvest Sky」の海外公演の可能性について訊ねていると、マリアが現れた。燃えるような赤毛と真っ赤な口紅に、白い肌のコントラストが印象的な、華やかな女性だ。魅力的な笑みを浮かべながら悠然とした様子で挨拶し、いきなりこう切り出した。

「ダグラスの作品は多国籍の影響があって、様々な年代、国籍の人に楽しんでもらえるわ。この作品は今後、(海外でも)大きな可能性を持っていると思う」
8人姉妹の末っ子であるマリアは、「The Eight Knapik Sisters」として、子供の頃から姉妹でテレビやラジオに出演していた。そのためか、物腰が堂々としていて、人目を引くオーラを発している。「Harvest Sky」の自由奔放でセクシーなダンサー役でも、小悪魔的な魅力と迫力の美声を披露して観客の度肝を抜いた。

それぞれが大切にしているもの

2人が揃ったところで、ソプラノ歌手としてそれぞれが最も大切にしているものを訊ねてみた。その歌の歌詞をよく聴き、吸収し、その歌詞にストーリーを語らせるようにすることだとシンディがまず即答する。

「言葉って強いものだわ。言葉によって、一つ一つの瞬間をつくりだすことができるから」
そこでマリアが異議を唱える。
「私にとっては逆だわ。感情は声を通して伝わるし、メロディは言葉よりも強いと思う。音楽というのは、最もパワフルな言語ね」 シンディがにこやかに付け加える。「今彼女が言ったことは、結局私の言ったことと、根本は近いと思う。私もマリアに同意するわ」

そこでマリアは満足げに頷くと、更にこう語った。
「海外公演では、その国の言葉を話せないこともあるわ。でも、歌を唄い始めると(会場の)雰囲気がガラっと変わって、突然お互いに理解できるようになるの。音楽は国境を越えるのね」そんな彼女がオペラをやっていて特に大変だと感じるのは、暗い役を演じる時だと言う。
「その時演じる役柄に深く入り込むようにしなきゃいけないでしょう? 3ヶ月間毎日、最後に死ぬ役を演じていたら、どのくらい気分が落ち込むか想像してみて(笑)。でも強烈な感情を味わうのが好きな人にとっては最高の職業よ」

最後に「Harvest Sky」での役柄は本当の自分に近いと思うかと訊ねると、2人は顔を見合わせて悪戯っぽく肩をすくめた。そしてマリアが先に口を開いた。
「ダグラスは完璧なキャスティングだと思っているみたい(笑)」
隣でシンディが同意を示すかのようにクスリと笑った。

インタビュー/後藤 美穂
シンディ・タウンゼンド
【Cindy Townsend】
ソプラノ歌手
ニューブランズウィック生まれ。ジャズ演奏者の父を持ち、幼少の頃よりクラシック音楽を学ぶ。トロント大学ではカナダを代表するソプラノ歌手、ルイス・マーシャルに教えを受ける。 美声と可憐な容貌を武器に、欧米各地でオペラなどに数多く出演。11月にはステラ・ハートが彼女のために曲をかいたクリスマスCD「Chestnuts & Sugarplums」の公演を行う予定。
サイト : www.cindytownsend.com
マリア・ナピック
【Maria Knapik】
ソプラノ歌手
ポーランド生まれ。幼少の頃より8人姉妹「TheEight Knapik Sisters」の末っ子としてTVやラジオに出演。奨学金を得て英国で音楽を学んだ後、ソロのソプラノ歌手としてデビューする。2002年にはNYのカーネギー・ホールでニューヨーク・グランド・オペラ・オーケストラと共演。ヨーロッパ各地でも数々の賞を受賞している。迫力ある声と華やかな容姿で、バラエティに富んだ役柄をこなす。
作曲家ダグラス・J・ライス氏
"Harvest Sky" Synopsis
1930年代の世界大恐慌下、天涯孤独の女性、エレノアが、新しい人生を求めて田舎町にやってくる。そこで恋に落ちたエレノアだったが、収穫祭の夜に悲劇が起こり…。
純粋さを永遠に失ってしまう女性の悲劇を、美しくドラマティックな音楽で彩る、愛と裏切りの物語。カナダ出身の新進オペラ作曲家、ダグラス・J・ライス氏(Douglas J. Rice)が作詞、作曲、演出の全てを手掛けた。

E-mail: webinfo@bitslounge.com | Copyright (C) Bits Box. All Rights Reserved.