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高橋 源一郎 (Genichiro
Takahashi)
作家 |
| 81年のデビュー以来、ポストモダンを代表する作家として活躍する高橋源一郎氏。22年前に英語での読者を想定して書いたというデビュー作「さようなら、ギャングたち」の英訳版の完成を期に、朗読会のためトロントを訪れた高橋氏にお話を伺った。 |
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「理解困難」、「掴み所がない」とされながらも、数々の賞を受賞するなど高い評価を受けている高橋氏の小説。その一方で彼は、文芸ものからグラビア写真集の書評を始め、雑誌のエッセイ、スポーツ紙上での競馬予想など、あらゆるジャンルに首を突っ込んでいる。「僕のことを競馬評論家だと思ってる人もいるけど、それはそれでいいです。まあ小説も書きますよっていう感じで」と言い切るそのレイドバックな姿勢の裏には、ポップカルチャーの中にも文学を見る鋭い洞察が隠されている。
目の前で『ベンヤミンの翻訳論』という難解なテーマを、驚くほどさり気なく、シンプルに説明してみせる高橋氏には、あっという間に人を惹き付けてしまう危険さがあった。
広島県尾道で生まれた高橋氏は、小学校1年生の時に父親の経営する工場が倒産したのをきっかけに、引越しを繰り返すようになる。
「30代後半までに、40回近く引越してるんです。どこに行っても自分の定住地ではないという、絶えず不安な気持ちはあります」
そして69年、学園紛争が激化する時代背景の中、東大の入試が中止された唯一の年に大学に入学する。
「東大に入る予定だったんですが、違う大学(横浜国立大学)に行くことになりました。東大に入っていたら多分、フランス文学者になって、その合間に小説っぽいエッセイを書いて、嫌われているオッサンになっていた可能性が高いです(笑)」
彼が在籍8年で満期退学をしたという横浜国立大学は、当時最も学生運動が激しかった大学の一つで、校舎が11ヶ月間、封鎖されていたという。そして69年秋にバリケードが解除されると、積極的に運動に参加していた高橋氏は逮捕されてしまう。
「18歳から19歳の10ヶ月間を拘置所で過ごしました。客観的に言うと、時代に翻弄された学生の一人。そのことは作品にはまあ影響してますよね。でも、今だと政治活動をするなんて特殊な学生に見えるけど、当時は学生の3分の1は運動に参加してましたから。ごく普通の学生がちょっとでも関心があったら出て行くっていう感じだったですね。時代がお祭りみたいなね」
「本を読むのが最大の趣味の一つで、楽しみにしている新刊は自分から書評を書きたいと言う」と語る高橋氏。最も影響を受けている作家は、『さようならコロンバス』などで知られる現代アメリカ文学の巨匠、フィリップ・ロスだそうだ。そして好きな作家は、55年に『アメリカンスクール』で芥川賞を受賞した小島信夫。
「小島信夫さんは、日本の作家で一番すごいと思います。僕の小説もわけ解んないって言われるけど、(小島氏の作品は)僕のよりも全然わけが解んない。小島さんの作品を読むと、どうもこの作家はボケつつあるかもしれないなと思うんです。でもフリをしてるだけかもしれない。誰も到達していない、『アルツハイマー的ボケ方文学』という新ジャンルですね(笑)。これからは『老人とボケ』だなと思います。小島さんは目標です」
その発言が示す通り、自身の老後も精力的に創作活動を続ける計画であるという。
「今年53歳で、平均寿命を75歳と考えると、あと残り22年。書きたい小説もあるし、他の分野でもやりたいことがあるし、22年って結構短いんですね。とりあえず書きたい小説が沢山あるので、ここ数年のハイペースを保ちつつ、もっと丁寧に書きたい作品が来たら足を止めて集中してやる、という感じです」
一方で、仕事をやりすぎるとインプットの時間がなかなか取れないという弊害もあるという。書評のための読書時間は取れるが、映画を観たり美術館へ行く時間がないそうだ。
「1週間休みがあったら、1日5本ずつ映画を観たいです。大好きなゴダール(仏映画監督、ジャン・リュック・ゴダール)のDVDが10本、手付かずのままなので、『ゴダールウィーク』にしたいですね。彼の映画は気合を入れて時間を取って、さあこい!って観ないとね」
そんな高橋氏から、最後に一言。
「日本では読書時間が減っていると言われますが、こんなに面白くて安上がりな娯楽、アートを活用しない手はないと思います。持ち運び便利な小型で、大量の情報が入っていて、任意のところをぱっと開ける『本』というのは、非常によく出来ているんです。だってパソコンで本を読むのはやっぱり面倒臭いでしょう?
ローテクなのにこんなに役に立って、しかも面白いものを、もっと読んでください」
インタビュー/後藤 美穂 |
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高橋 源一郎【genichiro Takahashi】作家
1951年、広島県生まれ。横浜国立大学経済学部中退。81年のデビュー作「さようなら、ギャングたち」で群像新人長編小説優秀賞を受賞、88年には「優雅で感傷的な日本野球」で三島由紀夫賞を受賞する。ポップ文学の旗手として多くの作品を発表する傍ら、軽快で鋭い文芸評論、競馬コラムを執筆。現在、鎌倉市在住。高橋源一郎公式サイト:
www.funk.ne.jp/ ̄gen1rou/index.html |
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『SAYONARA, GANGSTERS』
(英訳版US$19.95Vertical Inc.) 詩人の「わたし」と恋人の「S・B(ソング・ブック)」と猫の「ヘンリー4世」が営む超現実的な愛の生活を独創的な文体で描いたデビュー作。発表時に吉本隆明が絶賛、81年群像新人長篇小説賞優秀賞を受賞した作品。※日本語版「さようなら、ギャングたち」(税込¥1,260
講談社)も好評発売中 |
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『日本文学盛衰史』
(税込¥2,625 講談社)
漱石が、鴎外が、自然主義者が浪漫主義者が、そして、近代文学の創始者たちの苦悩が、百年後の日本に奇蹟のように甦る。石川啄木が伝言ダイヤルにはまり田山花袋はアダルトビデオを監督する。02年伊藤整文学賞受賞作品。 |
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