 |
是枝 裕和
Hirokazu Kore-eda
映画監督 |
| 登場人物に寄り添い、心の機微を映し出すカメラ。映画監督・是枝裕和は、その類稀なるヒューマニズムで観る者の心を揺さぶり、大切な事を忘れてはいないかと問い掛ける。 |
|
最新作「誰も知らない(英題:Nobody Knows)」が出品されたトロント国際映画祭に参加するため是枝裕和監督がトロントを訪れていると聞き、早速、ダウンタウンのとあるホテルに監督を訊ねた。
ホテルの一室で、朝の8時からマスコミ各社の取材を受けていたという監督は、少し伸びをして立ち上がった。「お疲れですか?」そんな問いに「いえ、大丈夫です」と応える様子は、映画に全情熱を傾ける学生のように爽やか。そんな監督だからこそ、出演した感受性豊かな5人の子供たちとのコミュニケーションがスムーズに取れたのだろうか? 映像から伝わるまっすぐな人間らしさ、その原点を探すために、監督の幼少時から学生時代、そしてテレビのドキュメンタリー制作を経て映画と出会った監督の『これまで』と『これから』について伺った。
子供時代は本を読んでいることが好きだったね。一人でいる時間が多かったからかな。小学校が家から離れていたんだ。40分ぐらい離れていたかな。小学校が終わって家に帰ってきちゃうとね、学校の友達が(家の周りに)いないんでね。一人で本を読んだり、粘土で遊んだりね。
そうだね、どうして映画がやりたくなったんだろうね。なんだろうね。本を読むことは好きだったので、本当は物を書く人間になろうと思って大学に行ったんだけど、大学がつまらなくなってしまって、大学の周りにあった映画館で暇を潰すようになったのが映画にはまるきっかけとなったんだと思う。それかな、映像に関わる仕事をしたいと思ったのは。
でも、僕が大学を卒業する頃には、今でもそうですけど、撮影所が演出の人材を採用する事はなくなってましたし、なかなか映画の撮影現場にスタッフとしてもぐりこむという方法が見つからなかった。(映画の)自主制作をやっていたわけでもないし、じゃあとりあえず、映像(テレビ)の現場で働いてみようかと思ったんですよね。
最初はそのぐらいのつもりでテレビと関わったんだけど、やってみたらおもしろくてね。そこで学んだことってすごく多いんですよ。方法論とか、自分のテーマの深め方とか。テレビのドキュメンタリーをやっていて、そこで、こう、社会的な出来事からモチーフを見つけて作品化していくというプロセスが、自分の中ですごく自然なものとしてあってね。その延長線上で今、劇映画をとってるんです。
だから、テレビのドキュメンタリーからステップアップしたというよりも、今でも出来れば、テレビのドキュメンタリーもやりたい。テレビのドキュメンタリーというのと劇映画というのが、自分のなかで、こう、両輪としてあって、両方出来てるのがバランスがいい。
ただ、作品作りの方法は、今後変わるかもしれないですけどね。少し、フィクションをやろうと思っているんでね。また、違うアプローチをしていくかも知れません。次回作(の時代劇)とかね。
う〜ん、なぜ時代劇なのかといわれると難しいけど、ちょっと、その、今 言ったようなドキュメンタリー的な根っこから作品を作っていくというプロセスと、ちょっと違うアプローチを映画に対して、してみたいなと思ってね。あの、全く違うものをやろうと思ってね。それで、ミュージカルか時代劇をやろうと。ただ、自分の中ではっきりとして出てきたものが時代劇だったので…。今、脚本を練っているところだね。
最近では、時代劇(侍もの)にスポットがあたっているけど、世界を視点に置いてテーマを選んだり、話しを作ったりはしないね。世界とか、ハリウッドとか、考え始めるときっと失敗するだろうな。ダメ、ダメ(笑)
それより、いまは自分の納得いく作品を作りたい。もう少し、映画。映画はわかんないからね。撮れば撮るほどわかんなくなるので…あの、もう少し色々なアプローチをしながら、より納得いく作品作りをしていこうと思っています。
インタビューの最後に、「映画を作ることを通して、世界を見る眼を鍛えている感じがする。人を理解するためにも(映画監督は)凄くいい職業だと思っているし…そういう意味で、自分を豊かにしてくれるものとして今は映画と関わっています」と、映画に対してのビジョンを語ってくれた是枝監督。映画に対するその真摯な情熱と、こちらを見据えるまっすぐな瞳が彼の誠実な人柄を伝え、何故、彼の映像は観る者に訴えかけるのか、その理由が分かった気がした。
インタビュー/西尾 裕美 |
|
 |
 |
 |
映画監督。1962年、東京生まれ。87年に早稲田大学第一文学部文芸学科卒業後、テレビマンユニオンに参加。主にドキュメンタリー番組を演出、現在に至る。95年に初監督した映画『幻の光』が第52回ヴェネツィア国際映画祭で金のオゼッラ賞を受賞、注目を集める。以降『ワンダフルライフ』、『ディスタンス』などの作品を発表。04年夏に発表された4作目の監督作『誰も知らない』では、主演の柳楽優弥が最年少でカンヌ国際映画祭主演男優賞を受賞、話題となる。
公式サイト
http://www.kore-eda.com |
 |
『誰も知らない』
是枝 裕和 /
プロデューサー・監督・脚本・編集
http://www.daremoshiranai.com
都内の2DKのアパートで大好きな母親と幸せに暮らす4人の兄妹。しかし彼らの父親はみな異なる。学校にも通った事がなく、3人の妹弟の存在は大家にも知らされていなかった。ある日、母親はわずかな現金と短いメモを残し、兄に妹弟の世話を託して家を出る。この日から、誰にも知られることのない4人の子供たちだけの『漂流生活』が始まる。
シネカノン有楽町、渋谷シネ・アミューズ他、全国ロードショー公開中
カナダでは11月5日公開予定(英語字幕) |
|
 |
|