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トロントの各界で活躍する著名人にインタビュー

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杉野信也 (フォトグラファー)×
可児ひろ海 (ファッションデザイナー)
トロントに拠を構え、世界的に活躍する写真家・杉野信也。日本のファッション界から飛び出し、今や海外でも高く評価されるデザイナー・可児ひろ海。奇跡的に実現した2人のコラボレーションを誌上に再現。

日本のファッション・シーンを牽引するブランドを一堂に集めた展覧会『NO KIMONO』が、去る12月4日に開幕した。それに遡ること1ヶ月、私はそのショーに参加するデザイナー達のプロファイルを持ち、杉野氏のスタジオを訪れた。杉野信也、商業写真の分野では、カナダ国内で彼の右に出る者はいない。一方で氏は、ファッション関係の写真は撮らないというポリシーを貫いている。私は常々、その頑なな姿勢は、ファッション界に対して厳しい眼力を持つことの裏返しであると私は常々感じていた。
今の日本で熱烈な支持を得ているこれらデザイナー達の作品を杉野氏はどう見るか? ただそのことを確かめたく、ファイルを手渡す。と、杉野氏は、あるデザイナーの資料に眼を留めた。それが可児ひろ海によるCOCOON(コクーン)である。
「俺、これ撮るよ」
思いもしない申し出に事態は急展開した。日本のカリスマ・ブランドCOCOONを杉野信也が撮る!
事前の打ち合わせは全くなし。当日まで、お互いにどんな洋服が来るのかも、どんなモデルが着るのかも、何も分からない真っ白な状態で撮影に挑んだ2人。緊張感とクリエイティヴィティが渦巻く感動的な撮影。そこに一体、何が生まれたのか? 2人の言葉に耳をかたむけよう。

自分で何か感じるものがないと、
お仕事になっちゃうわけですよ(杉野)


可児 ひとつ質問があるのですが、なぜ私の作品を選ばれたのですか?

杉野 とにかく面白いと思った。『なぜ選んだか?』っていうと、もう直感て言うしかないでしょう。作品見て、あっコレだ! というね。誌面に載る以上、そこで恥ずかしいものは出したくない。やはり自分で何か感じるものがないと、お仕事になっちゃうわけですよ。当初、撮影に可児さんが立ち会えないと聞いていたから、好きなように、失礼な言い方だけど完全に素材として撮ろうと思ったんですよ。ところが本人が来られることになったので、それなら可児さんの好きなように遊んでもらって、それを撮ろうと。そこから自分の素材として作っていこうと思ったんですよ。

可児 なるほど。

杉野 餅は餅屋っていうくらいで、僕が可児さんの洋服を触ってもしょうがないんです。本人がやるのが一番いい。

可児 私もそこが心配だったんですよ。服は誰にでも着せられるけど、伝えたい事がズレちゃうんじゃないかと。それに、今まで一発で上手くいくことはあまり無くて、どこまでイメージや言いたいことが共有できるかが心配だったんです。色んな悪条件が重なった中で、こんな最高の撮影になったのは奇跡ですよ。

今、ここにあるもので一番
良いと感じたことをやろう、
という純粋な気持ち(可児)


可児 スタイリングはあって無いようなもので、それをどう解釈するかっていうことが全部写真に出てくると思うんですよ。洋服をデコラティブにすれば、そこの共有している部分がボケたりするんですけど、今回は素材のみだったから良かったのかもしれない。モデルと洋服だけっていう、シンプルだけど一番難しいことをやったのかもしれないですね。今まで色んな撮影をしてきましたけど、(カメラマンとの)解釈の違いとか、美しいと思うポイントがズレていたりして、あまり納得できるものが出来なかったんですよね。年齢もあるのかな?

杉野 いや、年齢は関係ないです。もしあるとしたら、僕に変な気負いが無かったからでしょう。例えば、メイクさんが頑張りすぎると空回りするし、写真家が頑張りすぎても、スタイリストがそうでも空回りするんですよ。セットも色々考えたんですけど、結局何もなしでそれだけで勝負する。それが一番いいと思ったんです。

可児 きっと事前に打ち合わせをしていたら、こうは成らなかったと思いますね。今、ここにあるもので、一番良いと感じたことをやろう、という凄い純粋なものだった気がします。

杉野 写真てね、考えすぎると撮れないんですよ。『Shooting from the hip』という西部劇で使われる言葉があるんです。要するにピストルを見ないでパッと撃つ事なんだけど、いいものが出来る時っていうのはそういう時なんですよ。

可児 今日みたいな出会いが本当にあるんだなって思うと、これからの原動力になりますね。やはり自分の世界の中だけで作っていても、そこから先に発展できるものが見えないと、そこで止まってしまうと思うんです。

杉野 僕はずっと直感で生きてきたから、自分で、いいと思ったら撮るし。直感でね、全て判断するんですよ。

可児 直感の人だと思います(笑)。さっき『あなたの名前が良いね』って言われた時に、その言い方が、直感で生きてる人の言い方だなと思いました。

杉野 うん、(選んだ理由に)名前の部分も結構あったかもしれない。僕も名前で得をしている。こういうクリエイティブな仕事っていうのは、人と違ってナンボの世界だから。もし可児さんが自分でその名前を付けていたら、それこそ天才だなと思うよね(笑)。

本当にいいな、と思うのは7年前に撮った自分の作品だったりするんです(杉野)

杉野 僕はね、ファッションとして全然見ていないですから。作品としてあなたの洋服を見ていますから。

可児 すごく嬉しいです。

杉野 広告写真の世界ってのは、いかに上手く嘘をつくかの勝負なんです。デジタルで色んな加工を施していくと、実際よりもよっぽど良く見えるんですよ。逆に、自分の作品を撮るときは、一切そういうことをやらない。お客さんは居ないですから、そこには。だから元の素材を撮るときは出来るだけシンプルにやろうと思うんですよ。

可児 クリエイティブっていうと、自分の思ってることをドンドン構築して積み上げてと考える人が多いと思うんですけど、先ほど、Tin Type(湿板)の写真を見せてもらった時にも感じたのですが、現像液の流れとか、偶発的な部分が凄く生かされてて、それがシンさんという人の根底にあるんだな、と思いました。

杉野 広告の世界は、あくまでも向こうさん(クライアント)の世界で、僕の主張じゃないわけ。でもね、あんまり数は撮らないですよ。パシャっと撮って、それで文句は言わせない。もう読んでるからね。何を向こうは望んでるかを。

可児 文句を言わせないところが凄い(笑) 。すごく頭のいい方だと思います。なかなかこのバランス感覚を持ってる人はいないと思いますよ。

杉野 と言うのはね、僕は広告写真を仕事としか見ていないから。

可児 どこに商業性とクリエイティブの境目を置くかという部分で、自分をコントロールするのが一番難しいと思うんですよ。シンさんは、頭のどこを使うか、そして何が『自由』かを本能的に分かっている気がします。

杉野 あなたにも出来ますよ。

可児 出来ないですよ。それはまだ…。

―ではシンさんにとって『自由』とは何ですか?

杉野 作品でしょう。作品しかないじゃん!? 商業写真なんて2年もしたら陳腐で見れないですよ。残らない。本当にいいな、と思うのは7年前に撮った自分の作品だったりするんです。だから今回の撮影、可児さんの洋服をファッションや仕事として見ていないって言ったでしょう? 作品として見てるって言ったのは、そこなんです。

今回杉野氏によって撮影された作品は、今後何らかの形でCOCOONより発表される模様。海を越えて出逢った2つの才能が今後どのように広がっていくのか、注目していきたい。
杉野信也
Shin Sugino
デジタル・フォトグラフィーの分野で世界的に活躍中の写真家。1965年カナダ移住。York大学写真科講師、写真雑誌編集長、劇場用スチル等で活躍後、83年にSugino Studio設立。以後、特に商業写真においてはカナダ国内トップ。Telusのカメレオン、United Wayバナーなど街を歩けば、氏の作品に当たる。

可児ひろ海
Hiromi Kani
Cocoon(=繭玉)の名の通り、中から何が出てくるのか分からないという予感を感じさせる注目のブランド。可愛さやクールさといった女性の多面性を引き出すデザインは国内外で高い評価を受けている。2002年デヴュー、次回春夏コレクションで7回目を迎える。代官山にCOCOON直営店、国内20店舗の取り扱いで展開中。

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