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トロントの各界で活躍する著名人にインタビュー

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宮田 まゆみ
Mayumi Miyata
笙奏者
日本の宮廷音楽として今日まで大切に受け継がれてきた雅楽。そこで使用される楽器「笙」を世界的に広めた宮田まゆみ氏に、その雅なる世界についてお話を伺った。

宇宙の不思議のように神秘的でかつ、儚い夢のように幻想的な笙(しょう)の音色が会場に響き渡る。その華奢な外見からは想像もつかない、1本芯の通った力強ささえも感じさせる音色だ。
純粋に美しい響きだけでなく、独特の空間を作り出すその音色にのめり込むように聞き入る観衆。そして演奏が終った瞬間、会場は割れんばかりの拍手に包まれた。

紀元前1400〜1122年頃の古代中国にまでその歴史を遡る楽器、笙。奈良時代に日本へ伝えられたこの楽器は、17本の竹を円く束ねたような形が、鳳凰が翼をたたんで休んでいる姿に似ていることから「鳳笙」とも呼ばれ、その音は『天から差し込む光』を表していると考えられているという。

「雅楽で演奏される曲は作られてから千年以上経っています。でも、(曲中の笙の音色は)何か未来から響いてくるような感じがするんです」
そう語る宮田まゆみ氏は、笙を国際的に広めた第一人者。雅楽の合奏の中でしかその存在を知られていなかった笙は、同氏の卓越した技術と表現方法に出会い、初めてスポットライトを当てられることとなる。

「笙の独奏曲というのは、たった6曲しか残されていないんです。合奏曲は何百もありますが、独奏曲は凄く少ないんですよ」
宮田氏が笙に惚れ込んだのは大学生の頃。当時、音楽大学でピアノを専攻していた彼女は、ヨーロッパの一定の時代に作られた音楽を中心に学ぶ授業に疑問を抱いた。

「大学では18〜20世紀の西洋の音楽が中心でした。何故この時代の音楽だけをやらなければいけないのだろうか? もっと自分の内側から来る音楽を探したいと思ったんです」
しかし、どうしたら自分の求めているものに出会えるのか。自分の中に湧き上がったその疑問の答えを見つけるために、彼女は様々なジャンルの音楽を聞いたという。

「どうして音楽が人にとって必要か、音楽が何故美しいのか、ということを勉強する分野があったんです。音楽美学というのですが、それを少しずつ勉強していくうちに、聞いたことのあった雅楽が、ある時浮き上がってきたんです。その瞬間、これが自分の欲しかった音楽だという気がしました」

雅楽とは平安時代に完成された神聖なる宮廷音楽。一言で言えば平安時代のオーケストラで、管楽器、弦楽器、打楽器で構成されており、管楽器では笙のほか、篳篥(ひちりき)、龍笛(りゅうてき)、高麗笛(こまぶえ)、神楽笛(かぐらぶえ)などが演奏される。

「数ある管楽器の中でも、笙がやりたかった。笙の一番大きな魅力は和音が出ること。お琴だったら弦を何本か(1度に)弾くことで和音が出るけど、管楽器で和音が出るのは笙だけなんです」
そして、通っていた音楽大学の先生の紹介により笙の練習を始めた宮田氏に、やがて転機が訪れる。

「国立劇場で、雅楽の古典作品と委嘱した新しい作品を演奏する企画があったんです。その一環として、現代音楽の作曲家が集まるイベントに参加しました。現代音楽は五線譜で書かれていますよね。でも、古典音楽の演奏家は五線譜を読める人があまりいないんです。私はピアノをやっていたので五線譜も読めるでしょ、と駆り出されて…そのうちに国立劇場からリサイタルをしないかと言われたんです。だから、弾みですね」

本人曰く『弾み』で、古典と現代音楽を融合し、これまであまり知られていなかった音楽の分野である雅楽を世界中に紹介し続けている宮田氏。彼女の芸術性の高い音楽は次第に人々の注目を集めるようになり、98年の第18回冬季オリンピック長野大会での君が代演奏で世界中の知るところとなった。

「周りは競技する若い人ばかりで、熱気が立ち込めていたので、寒いとは思いませんでした。緊張したのは真ん中まで転ばないで歩くことぐらい(笑)。雪がありましたからね」
何故か、冬のカナダに縁があるという宮田氏。
「私、カナダにはいつも冬に来るんですよね。雪が好きなので楽しみなんですが、移動が多い時はきついですね。笙は暖めないと音が出ないんですよ。だから、楽器の状態を見ながらの移動、リハーサルになりますしね」

ちょっとした言葉やウォーマーを見つめる表情から、「笙」への彼女の愛情が伝わってくる。そんな愛情に包まれて、日本が誇る雅楽器の多彩な可能性がどこまで高まっていくのか、彼女の益々の活躍に注目したい。

インタビュー/西尾 裕美
宮田 まゆみ
Mayumi Miyata

国立音楽大学ピアノ科卒業後、雅楽を学ぶ。83年より笙のリサイタルを行って注目を集め、芸術選奨文部大臣新人賞など、様々な賞を受賞。また04年には、東洋の伝統楽器である「笙」を比類のないアジアの音楽性豊かな楽器として際立たせ、独奏楽器として世界の音楽シーンへ登場させた功績に対し、第11回日本文化藝術振興賞・日本伝統文化振興賞を受賞。海外でもニューヨーク、パリ、アムステルダムなど世界各地でリサイタルを行い、絶賛されている。特に近年では、大野和士指揮ベルギー王立歌劇場管弦楽団、シャルル・デュトワ指揮NHK交響楽団定期演奏会、ヨーロッパ・ツアー、アンドレ・プレヴィン指揮ニューヨーク・フィルハーモニック、アヴィニョン・フェスティヴァル等に招かれるなど、世界中の注目を浴びている。
 
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