bits lounge
トロントの各界で活躍する著名人にインタビュー

ホームへ > インタビュートップへ > カティ・レカイ
BACK NEXT
カティ・レカイ
Kati Rekai
児童文学作家
子供達に自分の生まれた土地についてもっと知って欲しい。そして世界中の国々へ思いを馳せて欲しい。そんな願いから多くの文学作品を書き続ける作家、カティ・レカイ氏にお話を伺った。

ハンガリーのブダペストで生まれたレカイ氏。彼女が、夫と2人の娘の家族4人でカナダに移民したのは57年のことだった。
「カナダだけが私達のことを受け入れてくれたの。私の夫はハンガリーで外科医をしていたけれど、戦争によって国の政治体制が変わってしまったからハンガリーを出たのよ」

45年、第2次世界大戦下でソ連(当時)がハンガリーに侵攻、占領した。そして大戦の終結と共に人民共和国への体制変革を余儀なくされたのだった。共産党への入党を拒否したレカイ氏とその家族は生まれ育った土地を後にする。そして初めて訪れた新しい国、カナダ。降り立った街トロントのマルチリンガル文化は彼女にとって目新しく、その自由溢れる雰囲気が気に入ったという。

「しばらくして、ここトロントに暮らす子供達が『自分の街』について全く知らないことに気づいたの。とても残念なことだと思ったわ。それに、この街には世界中から人が集まってきているのに伝統的な文化や風習はその家族の中だけで守られていて、家の外で触れられることは少なかった。子供達は、自分の友達がどこから来て、どのような文化や風習を持っているのか、自分とどこが違うのかを学ぶことで相手を尊重することを覚えていくのに…。世界の広さや多くの文化を教えたくても、そんな児童文学が当時はなかったの」

業を煮やした彼女は自ら筆を執る。

「子供達は犬や猫など動物が好きだから、動物を主人公にしようって決めたの。彼らはあちらこちらへ冒険の旅に出る。様々な物を見て、体験して、読者の子供達と一緒に成長するの。一冊書き終えたときに、この物語をある女の子にあげたのよ。彼女は、それはもう気に入ってね。お父さんに見せたって言ったわ。数奇なことに彼女の父親はある出版社の社長だったの」

こうしてレカイ氏の執筆した『冒険旅行物語』は世に出ることとなる。主人公は3匹の犬と、1匹の猫。生まれた国も、生活様式や考え方も全く違う4匹。彼らは冒険を通して、お互いを思いやり、理解しあうことでより深い友情を育んでいく。そして彼らの冒険はトロントを飛び出し、オタワ、モントリオール、そして世界へと広がる。カナダのモザイク文化をそのまま反映したカナダの子供たちのための本だ。

「キャラクター達の目を通して、子供達が自分達を取り巻く世界について学んでいくのを見るのはとても幸せなこと」
本を手に取った子供達からの喜びの声を聞くたびレカイ氏はこう思ったという。

初版が出版されたすぐ後、その反響の大きさから出版社は多言語(フランス、ポーランド、ルーマニア、ハンガリー、中国語、点字)に翻訳することを決定。また、物語は人形劇としても取り上げられ、4匹の小さな冒険家たちは瞬く間に世界中の人気者になった。
「よく、何を勉強したら文学作品が書けるのかって聞かれるけど、物を書くために何かを特別に勉強することはないと思うの。もちろん、何について書くかによって下調べが必要だったりして知識が要求されるものもあるけれど、私はハンガリーで普通の高校を卒業しただけよ。書きたいものがあるのなら、それをどうやって書くかなんて誰かに教えてもらう必要はない。本を書くのに必要なことは全て、頭の中と『ここ』に入ってるのよ」

そう言って胸を指差すレカイ氏は、現在、カナダ人作家を支援するブック・フェスティバルのため多忙な日々を送っている。
「これらのフェスティバルでは、カナダの素晴らしい作家達を世界に紹介しているのよ。数年前には日本にも行ったわね。最近の子供達はテレビやゲーム、コンピュータなどは頻繁に使うけど、なかなか本は手に取らない。子供達だけではないわ。現代の人は活字を読むことが少なくなっているわね。だから、もっと多くの人に本の良さを伝えたい。それに、カナダのマルチカルチャーから発生した文学は、世界の他のどこの国とも一味異なった素晴らしい作品が多いのよ」

世界中を冒険しつづける4匹と一緒に、まだ見ぬ世界を思い描いてページをめくる。カナダが私達にくれる、モザイク文化という贈り物に、子供の頃に戻ったかのようなワクワクした気持ちを覚える。レカイ氏はその優しい笑顔と共に、忘れかけていた大切な物を思い出させてくれた。

インタビュー/西尾 裕美
カティ・レカイ
Kati Rekai

ハンガリー、ブダペスト生まれ。48年に生まれ故郷を離れ、パリへ。その2年後、友人の紹介で家族と共にカナダへ移民。外科医だった夫が57年、中央病院を設立。これがカナダで初めて、多言語(30カ国語)による患者サポートを提供した総合病院となる。そこで世界各地からカナダへ移民した患者らにふれ、紀行文学を志す。現在は、エスニックジャーナリスト・ライタークラブの副会長を勤める傍ら、ハンガリー語雑誌『Kanadai Magyarsag』のコラムニストなど、多忙な日々を過ごす。93年、児童文学作品を通してカナダに多大な貢献をしたとして、オーダー・オフ・カナダを授与される。著者に『The Adventures of Mickey, Taggy, Puppo and Cica and how they discover...』シリーズ。トロント市在住。大学に通う5人の孫を持つ。
 
Information
『The Adventures of Mickey, Taggy,
Puppo and Cica and how they discover..』シリーズ
陽気な4匹ミッキー、タギー、プーポ、シーカが冒険の旅にでる。シリーズはトロント、オタワ、モントリオールなどのカナダ国内各地域と、ウィーン、イタリア、フランスなどの外国編に分かれる。
●購入はサイト
http://www.fictionwise.comを参照。

Information
『本が読みたい』虫にとり付かれたら、あらゆるジャンルの本が手に入るエキスポに出掛けよう
■BookExpo Canada
● 日時:6月24日(金)〜27日(土)
● Metro Toronto Convention Centre(255 Front St. W.、222 Bremner Blvd.)
● tel.1-888-322-7333、416-491-7565
● サイト:http://reedexpo.ca
カナダ最大級のブックフェスティバル。350以上のブースが出展する。ブレックファースト、ランチ・セッションとして1日に2回行なわれる触れ合いの時間には、実際に作家達と会話をすることが出来る。サイン会も行なわれる。(イベントの開催日時が近づいたら弊誌イベントカレンダーに掲載します)

E-mail: webinfo@bitslounge.com | Copyright (C) Bits Box. All Rights Reserved.