bits lounge
トロントの各界で活躍する著名人にインタビュー

ホームへ > インタビュートップへ > 熊沢 慎也
BACK NEXT
Shinya Kumazawa
Shinya Kumazawa
熊沢 慎也
アーティスト
自らの中に眠る世界を風景画に託して表現する画家、熊沢慎也。2年ぶりとなる個展を間近に控える氏に、今年の『クマザワ・アート』について伺った。

セザンヌ、モネなどに代表される印象派。美術館で彼らの絵画の美しさにほれぼれした経験は誰もが持つだろう。今回は、その印象派の影響を多分に受け、ハイパークを中心にトロントの美しい自然と街並みを描きつづける日本人画家、熊沢氏のアトリエ兼自宅にお邪魔した。


熊沢氏宅に一歩足を踏み入れると、そこにはクマザワ・ワールドが広がる。中でも一際目を引くのが畳一枚ほどもある大きな作品だ。これまで数々のアートショーで見てきた彼の作品とは一線を画すタッチだとすぐに気づく。
「前のスタイルは、色を絵の具から出したそのままに使って絵を浮き上がらせる方式。オレンジとか強烈な色を使ってる。でも、今回は色のトーンを落として、古い壁みたいな、ペンキが剥がれ落ちた風情を作り出してみたんだ」

確かに、風景画と聞いて想像する、写真のようにそこにある空間を切り取った絵画というより、全体に優しくフィルターが掛けられた、懐かしさを感じさせる作品だ。
「今回はあまり色を多く使わずードライっていうんだけどー絵の具と油を混ぜる時に油を普通よりも少なめに、または殆ど使わずに絵の上に乗せていく方法をとったんだ。そうすると、下に既に描かれた絵の具のでこぼこにしか新しい色が乗ってこない。反対に、油を多く入れて水がたれるように垂らしてみたり…ああでもない、こうでもないって挑戦中です」

描かれているのは確実にトロントの風景であるのに、どことなく日本を感じさせるのは、所々に入っている漢字混じりの日本語のせいだろうか。
「漢字を描いてみたのも色々な試みのうちの一つ。常に新しいことを探してるから、毎年絵は変わっていますよ。でも、描き方、色、タッチといういろいろな試行錯誤の中で自分に合うものを探すのが大切。違ったものを描きたくて描いてみても、ある程度、自分にしっくり来ないとモノにならない。気に入らないと自分の絵にならないから、書き直すこともありますね。そういう場合は、油絵の場合だと絵の上からまったく違う絵を再び描きます。あの緑の絵(表紙参照)の下にも、実は全然違う絵が隠れてる(笑)」


絵について語り始めると自然に顔がほころぶ熊沢氏。アーティストという職業は彼の天職であるのだろう。しかし、プロとして絵画に取り組み始めたのはカナダに移住してからだという。

「父親が美大を卒業していたし、父も母も趣味で絵を描いていた。そんな環境で育ったから、絵を書くことは昔から好きだった。高校も美術部だったしけど、美術のほうへ進もうとは思わなかった。天文学もやりたくて、絵と天文学を天秤にかけたら、絵は趣味でも描けるけど、天文学を勉強するのは趣味ではなかなか出来ないと思ったからね。でも、日本では天文学の勉強が出来る場所が限られていた。だから、NASAのあるアメリカに行っちゃえ(笑)ということで、高校卒業後、アリゾナへ渡ったんだ」

しかし、アリゾナ大学で天文学を学ぶうち、心境の変化を経験する。
「大学で一年ぐらい天文学をやってたんだけど、哲学的な面に興味が湧いて専攻を哲学に移したんだ。その時、マイナー(第二)専攻としてアートを取った」

大学卒業後、すぐに日本へ戻った熊沢氏。ところが、両親のいる実家・長野では新しい家業が待っていた。
「アメリカの大学に行ってる間に、おじいちゃんのやっていたりんご畑が結婚式場に変わってたんだ! だから、家業を手伝ったよ。ケータリングから進行、DJも全部やってた」

そんな中、カナダから英語教師として日本へ来ていた現在の奥様、ステイシーさんと知り合う。
「家業を手伝っていたら趣味の絵も描けなくなっちゃうから2人で日本脱出(笑)。インドに行ったり、タイに行ったりして環境を変えてみたけど、結局は彼女の母国であるカナダに落ち着いたんだ。こっちに来て、まあ、生活しなきゃいけないから何か仕事が必要ということになって、貯金もほとんど旅行に費やしたから…。どうせやるんだった絵を描こうって思ったんだ」

それからプロの画家としてのテクニックを独学、今の地位を築き上げた。 常に探し続け、描き続ける。風景が描かれているだけと受け取られがちな風景画を、自分だけの風景を映した「クマザワ・アート」に変えていこうとする飽くなき挑戦はこれからも続く。熊沢氏は、風景画という概念の枠を超えようとする探求者なのだ。


インタビュー/西尾 裕美

Shinya Kumazawa
熊沢 慎也
Shinya Kumazawa
1970年生。長野県出身。アリゾナ大学を卒業後、家業の結婚式場へ勤務。2000年来加。以来、画家としてハイパークなどをモチーフに制作活動を開始する。現在、ハイパーク近郊在住。1児の父。
サイト:http://skartist.com
Information

■熊沢慎也 個展
Familiar Landscapes
〜An exploration into Wabi-Sabi〜

日 時:9月7日(水)〜18(日)
水〜日のみ、13時〜18時

オープニング・レセプション
8日(木)19時〜22時
場 所:Gallery 1313
1313 Queen St. W.
連絡先:416-536-6778
サイト:http://www.g1313.org

 

E-mail: webinfo@bitslounge.com | Copyright (C) Bits Box. All Rights Reserved.