しかし、その落語とミュージカルをあわせた『ミュージカル落語』とは何だろうか。その新しい形式の落語を披露するただ一人の落語家、三遊亭亜郎氏。浴衣を粋に着こなす氏は、何と劇団四季でミュージカル俳優をしていたという。 「劇団四季で役者をやってたんですが、30歳を過ぎた辺りから、『これでいいのかな』と思い始めた。舞台はあるし生活もできるけど、歌ったり踊ったりすることばかりで話すことがない。このまま40歳になったらどうなるのかな、もっと話したい…と思った時に落語と出会ったんです。つまり、落語にはまってしまった。落語は話がうまい人ほど人物描写がうまい。それにリアリティがある。僕は、舞台では3枚目的な役が多かったんです。だから、笑いと話芸ということで落語がぴったりとはまった。34歳での転身でした」 劇団四季では、大人気の舞台『レ・ミゼラブル』でのテナルディエ役として活躍していた亜郎氏。誰もやっていなかった『ミュージカル落語』はどの様に生まれたのだろうか。 「落語家になりまして、この世界でもなんでもそうなんですけど、同じ人は2人もいらないんですよ…。だから、僕にしか出来ないものは何になるかというと、落語とミュージカルをあわせたミュージカル落語。それを作りたいなってずっと思ってたからね。 昔、林家三平っていう人が、ミュージカル落語と題してやっていたんですが、それはただ、音楽をつけてやっていただけ。でも、僕がやろうとしてるのは本当にミュージカルと落語を合わせたもの。ちゃんとミュージカルをやっていた者にしか出来ないことなんです。話す力も必要だけど、歌唱力も必要」 ミュージカル落語とは、基本的には落語スタイルで話が進められる。高座(舞台)には通常の落語と同じく、中央に1枚の座布団が据えられ、そこで芸を披露するが、その隣にはピアニストやチェリスト、アコーディオン奏者が同座する。 「色々と試行錯誤をしたんですけど、新しいミュージカル落語を作るためには音楽も作らなきゃいけない。そんな中で、グレッグ(アコーディオン奏者)に出会った。彼は横浜にいて、お客として落語を聞きに来ていた。僕はその時、枕(まくら:落語の導入)で出てたんですが、その公演を主催してる人が焼き鳥やさんで、この人(グレッグ氏)がそこのお客さんだったという縁なんです。03年5月のことだね。そこから話をするようになって、トロントでもミュージカルを作っていたというし、落語も好きだし、アレンジ力もあるからと、一緒に作りはじめたんです」
そして、完成した一番初めのミュージカル落語。落語界に新しい風を吹き込むことになるこの試みは、04年10月に銀座の博品館で行われた公演で成功を収める。 「新作の巨匠と呼ばれるうちの師匠(三遊亭円丈)でも、最初は『ミュージカル落語なんてだめだよ』と言ってましたよ。それが、一回見て、これは結構いけるかもしれないなって言ってくれたんです。 落語もそうなんですが、やっちゃいけないことはもちろんあります。でも、それを取っ払ってやらないと、伸びない。発想っていうのは、出来ないんじゃないかって思っちゃいけないですよ。出来ないって思わないこと、あれもできるこれも出来るって思うことが大切。もちろん、ベースがしっかりとしたものじゃないとだめですが…。僕は、いつか宙を飛んだり、フル・オーケストラを従えてやりたいですね」
現在は、グレッグ氏が制作し、カナダ国内で15ヶ月のロングランを記録したミュージカル『Clouds』を基にして新しいネタを作っているという。 「新作が完成すれば、大ネタとしては3作目です。1ネタ作るのは本当に大変で、彼(グレッグ氏)にアコーディオンを弾いてもらって、『そうじゃなくて、もっとロック的に…』なんて指示を出しながら作ってます」 と語る亜郎氏。トロントでの次の公演が待ち遠しい限りだ。
亜郎のミュージカル落語 「これが新大衆芸能だあ!」 日 時:10月21日(金)19時〜 場 所:横浜にぎわい座 芸能ホール (神奈川、桜木町駅下車) 入場料:指定席 前売3,000円 当日3,500円 *学生、シニア1,000円引 連絡先:03-5545-6818(staff DOMOS) yharapapa@mac.com サイト:www.nigiwaiza.city.yokohama.jp