和太鼓のような航(Kou)のドラムが鳴り響く。Kadotaのサックスがしなやかに、そして艶やかに語りかける。キーボードの上でヒイズミの指が軽やかに踊る。そんなヒイズミとは対照的に、足元から湧き上がるような太く、温かささえ感じられる音を奏でるNireは、ウッドベースをいとおしそうに抱きしめる。そして、中央で仁王立ちするかのようにトランペットを構えるOhyamaは、時に華やかに、そして時に繊細に観衆をいざなう。5人の個性が融合したこの音色、それが会場に集まったファンの情熱と一体になる熱いPE'Zの音色だ。 PE'Zは2000年、リーダーOhyamaを中心に結成された。しかし、すぐに一旦活動を休止。当時を振り返りOhyamaはこう語る。 「(バンドを)組んで、一応練習を始めたんですが、3回ぐらい練習したところで、このバンドは辞めようかと…。でも、しばらく考えてやっぱり『続けたい』とメンバーに電話で伝えました」 その電話を受けたメンバー達には、肩透かしを食らったような休止、そして再開に困惑はなかったのだろうか?そんな質問にKadotaはにっこりしながら、長い指でOKサインを作って見せた。そして、航は言った。 「解散っていうより、一旦休止させてくれっていう内容だったんで、またちょっと練り直すのかなって思ってたんです。だから、『待ってました』という感じでした」 真剣に話すメンバーを前に、Ohyamaのいたずら心が動き出す。 「いやぁ、やってみたらサックスフォンは他の奴の方がいいかなと思ったんです」 隣で聞いていたKadotaが大きな目をもっと大きく、丸く見開く。他のメンバーから笑いが漏れる。 「でも、色々考えた結果、まあKadotaかな…ということで」 からかわれたKadotaは苦笑い。Ohyamaのこの冗談で、メンバー間にある兄弟のような信頼感が溢れ、こちらに伝わる。ところが、結成当時の話を聞くうち、PE'Zが友人関係から始まったバンドではないことを知る。5人は、Ohyamaの通っていた音楽大学を中心に集まってきた。 「俺が行ってた大学の下の学年にヒイズミとKadotaがいたんです。学生達でセッションとか、一回だけ一緒にやってみたりと色々してたんですけど、その時は俺は別のバンドをやってて、ヒイズミは違うバンドにいた。そこに航さんがドラムとして入ってきて…。一回目の練習の時に、初めて顔を合わせたメンバーもいます。まあ、一番遠いところにいたはずの5人が集まってきたんです」 Ohyamaの言葉に航はうなずく。 「初対面だったのに音を合わせた時『パッ』と合ったんだよね。そこがPE'Zの凄いとこだろうね」 初めて顔を合わせた時はまた、初めて音を合わせた時。しかし、ミュージシャン達は音で会話し、演奏でその人柄を知るのだろう。Ohyamaは、バンドをやるならこのメンバーしか考えられないと思った理由を詳しくは語らない。それは、言葉にできない感覚、もしくは、運命が引き寄せた5人だったからなのかもしれない。 「もともとバンドをやるならメンバーは5人と考えていたんです。俺の中では、5人というのが子どもの頃から憧れのバンドのスタイルだった。俺が一番かっこいいと思う編成なんです。PE'Zはこのメンバーあってのバンド。この中で一番古い付き合いのヒイズミがピアニスト。一緒にやろうってなった時に、編成を一つ一つ吟味した結果集まった、最高のメンバーなんです」 その最高のメンバーで奏でるPE'Zの音楽は既存のジャンルやカテゴリーには括れない。ボーカルはいない。バンド編成はジャズだ。しかし、その音はジャズを含めた様々なジャンルの音をエッセンスとして加えながら、PE'Z流に味付けされ、もの凄い迫力で聞く者の感性に訴える。体を動かせ…、リズムを感じろ…と。 インタビューの最後に、OhyamaにPE'Zとしての夢や目標を聞いた。 「デビュー後、インタビューを受けるようになって夢や目標を聞かれることは多いですが、言葉だけなら何でも言えるんですよね。何かで一位とか、グラミー賞を獲りたいとか…」 Ohyamaはちょっとまじめな顔に戻り、呟くようにこう言った。 「最近では本当の目標は心の充実かなと思います。完全に心が充実するところまでバンドが行くといいと思います。今も充実してないわけじゃないですが、もっと良くなるんじゃないかとか、もっといい音楽が出来るんじゃないかとか思うと、まだ足りないんですね。あと50年ぐらいかけて充実したらいいかな、と思います」 ワインのように、そして日本酒のように熟成させる絆と音。インタビュー中にずっと感じていた彼らの兄弟のような絆は、『同志』としての絆だったのだ。そう、自らをサムライと称する彼らは同じ目標に向かって突っ走る同志なのだ。 〈インタビュー/西尾 裕美〉