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トロントの各界で活躍する著名人にインタビュー

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Keiji Haino
灰野 敬二
ミュージシャン

ご褒美は音楽の秘密
僕がどれだけ音楽が好きかお話しします
―灰野敬二は彼の情熱を語り始めた。


音楽界のカリスマ、灰野敬二。一般的にノイズロックと形容される彼の音楽は、日本国内外で熱狂的に支持され、30年以上に渡るそのキャリアにおいて100枚以上のCDをリリースしている。C3R, Sister Ray両レコードレーベルによって可能となった初のトロントライブで彼が紡ぎ出した音楽は、世界中の全ての音楽が重なり、たった一つの音となったかのように響いた。そして、その響きは偶然に出会ったような顔をしながら必然的にまた重なり合い、何層ものレイヤーを暗闇に生み出した。ドレイクホテルの『アンダーグラウンド』を満員に埋め尽くす聴衆は驚愕し、魂を抜かれたようにその音楽に、聴き入ったのだった。
このライブの前日、灰野氏は弊誌のインタビューに答え、音楽への愛に満ちた彼の世界へと案内してくれた。

―その一瞬のために費やすもの
「例えば、HMVなり、タワー(レコード)なりに行くと、まず、ロックのところ(セクション)に2時間かかります。それから民族音楽に2時間。クラッシックに2時間。ということは、僕はCD屋さんに行くと6時間必要。そこで、経済的なことは別としても、抱えきれないほどのCDを買って帰ります。ツアーなどで外に出ると、それが一日目。次の日もう一日空いてたら、またCD屋さん。ツアーのオーガナイザー達は、僕の主食はCDだと思ってる。そのくらい音楽が好き。人が誰でも平等に持っている宝物っていうのは『時間』で、1回使ったら戻ってこないものでしょ? それを使っても、全く惜しくないと思うのが音楽。それくらい音楽のことしか考えてない。
でも、自分の買ってきたCDは、聴く前から多分こうだろうなって分かってる。じゃあ、何で敢えて聴くの? っていったら、60分の中で一瞬でも『おや?』って思える瞬間がもらえればいいと思ってるから。その瞬間のために20ドルを払うことに対して何とも思わない。もちろん家があって、屋根がなけりゃ困る。最低限食べられなきゃ困る。猫が1匹いるんで、彼女に食べさせてあげられなきゃ困る。それは頭にあるけど、後は音楽のことを考えたい。音楽っていうのは、聴くっていう訓練を永遠にしなきゃいけないし、聴き入っていれば体が自然と前に出る訳でしょ?聴くってことは、凄くポジティブな姿勢になれること。だから、沢山聴く」

―音楽の秘密というご褒美
「僕はよく、『音楽の秘密を知った人間』だと、(自分のことを)いうのね。僕は人より多くの時間を音楽に費やしてる。言ってしまえば、時間を『犠牲』にしたからこそ、音楽の秘密というご褒美をもらっているんだ。
昔はライブで、『何でこんな演奏になっちゃうの?』って感じる時が、一杯あったよ。『こんな音楽なんかやらない方がいい!』っていう瞬間が…。でも、そんな感情を味わったからこそ、今は少しずつだけど、本当にこの1、2年は、自分が思ってるように演奏できるようになってきた。まだ、完璧じゃないけれど。でも、100%出来るようになったら辞めると思うよ」

―即興とヒーリング音楽
「即興、即興って言うけど、即興音楽が出来る人はホントに少なくて、みんな即興と思われているジャンルの音楽をやっているだけ。みんな、即興って言葉に酔ってる。
人って、どういう風に生きてきても習慣性ができるじゃない? 朝早く起きて仕事に行く人をサラリーマンと批判的にアウトサイダーが言うのならば、そいつは朝6時に寝て昼の2時に起きたり、そういう習慣性があるじゃない?習慣性は身に付けるんじゃなくて、付いちゃうんだよ。その中で良くない事に気付けば、自分でどうにかしたいっていう気持ちが起きる。そしたら次にいけるわけだけど、酔ってしまうと、習慣性の中で浸って『気付かない』から次のものが出てこない。
ヒーリングもそう。ヒーリングって、やってる側の『癒したい』と思う意識は、聴く側を見下げてるわけ。そうじゃなくて、患者さん(聴く側)が『治したい』ってならないといけない。それに気付かないといけないのに、聴いている方は凄く受動的で、痛みを忘れようとしてる。それって卑怯なんだよ。だって、人間として血・肉がある限り、痛みが伴うわけでしょ? それを認識して受け入れるんじゃなく、誰かに治して下さい! って言うことだから、そこから良くなることはないんだ。だから、ヒーリングって音楽は大嫌い」

―呪いが行き着くところ
「痛みを受け入れると、気持ち悪い言葉になるけど、祈りになってくるんだよ。祈りには、ものすごいスピードが必要。でもみんな、『こんなはずじゃない』って思いが加速しないから弱いんだよ。『どうしてこうなの?』って呪うぐらいのパワーがなきゃダメ。自分自身に対して、こんなはずじゃないってね。呪い続けてるうちに、祈りが溢れてくる。そしてそれは、ある瞬間に、一瞬だけ祈りになるんだよ。僕の音楽はそういうものだと思ってる。
ただ、聴く側にこうして聴いて欲しいってことは、こちらが言うべきことじゃない。人の捉え方なんていうのは色々あるから、ライブで僕の音楽を聞いて、どう感じてくれても構わない、嫌いでもいい。笑ってくれてればいい。つまらなそうにしてる人を見ると悲しいから。僕は英語がつたないけど『Are you enjoying?』って聞いて『Yes』って言ってくれればうれしいね」。






〈インタビュー/西尾 裕美〉
80種以上もの楽器を操り、その個性的な音楽スタイルでリスナーを魅了するミュージシャン。
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