第42回ブルーリボン賞新人賞、第37回ゴールデンアロー賞映画新人賞、第23回日本アカデミー賞新人賞、第9回映画批評家大賞新人賞、第74回キネマ旬報ベストテン新人男優賞、第55回毎日映画コンクール・スポニチグランプリ新人賞、第22回ヨコハマ映画祭最優秀新人賞。当時は若干16歳、高校に入学したばかりの新人俳優がこれだけの賞を総なめにした。その俳優が松田龍平さんだ。98年、大島渚監督『御法度』での、彼の鮮烈なスクリーンデビューはまだ記憶に新しい。そして、デビュー以来、毎年何本もの作品に出演し、多忙を極める彼の最新出演作が『46億年の恋(英タイトル/Big
Bang Love, Juvenile A)』だ。
今回、トロント国際映画祭で上映されているこの作品を手掛けた三池崇史監督(『妖怪大戦争』『交渉人』『着信アリ』など)は、世界各国から大作、話題作が集まる映画祭の中でも、毎年映画ファンがその作品の登場を待ち焦がれるカリスマ監督。そして、原作は「あしたのジョー」、「タイガーマスク」、「巨人の星」で名高い梶原一騎氏と、その弟である真樹日佐夫の共著(正木亜都名義)。そこに、松田さんをはじめとする日本映画界を代表する若手俳優陣、そして脇を石橋凌氏、石橋蓮司氏らの
ベテラン俳優陣が固めるとなれば、否が応でも期待が募るというものだ。
トロント映画祭では残念ながら監督・出演俳優陣の渡加は叶わなかったが、日本でのロードショー初日にあたる8月26日、シネマート六本木での舞台挨拶を控えた松田龍平さんが、弊紙の電話インタビューに答えてくれた。
作品の舞台設定は刑務所の雑居房。殺人を犯して投獄された少年たちの、哀しくも美しい愛の物語だ。そんなあらすじを聞いただけで、三池映画の独特の世界観がスクリーン一杯に広がり、私達を包み込む様子が想像できる。
「(監獄の場面は)ほとんど同じ場所で、地下で撮影していました」
そう松田さんが語るように、撮影にはパチンコ屋の地下にある広い空間が使用された。まさに映画の設定と同じく閉ざされた環境の中で、非常に屈折したキャラクター『有吉
淳』を演じた松田さん。映画に華を添える女優の出演は幽霊役の1人のみという異色の作品であり、その分、男優陣の色気が際立っている。
「すごく空気が悪い現場だったので(笑)、それだけは大変でしたね。(女優陣の出演に関しては)女優の方々がいるのといないのとでは、まあ、現場の雰囲気が違うものだなと思いましたが…」
そう松田さんは語るだけだが、いつもの現場とは違う雰囲気に、インスピレーションを受けたようだった。
今作もそうだが、彼の出演作といえば、カンヌ映画祭コンペ部門に出品されたデビュー作『御法度』や、豊田利晃監督の『青い春』(02)など、シリアスな作品が比較的多いという印象を受ける。それら作品中の彼のクールなイメージは、電話口から聞こえてくる低く落ち着きがあるが、良く響く声とぴったり一致する。
しかし、松尾スズキ氏が手掛けた初監督作品『恋の門』(04)では、ラブ・コメディにも挑戦し、役者としての幅は広い。
「シリアスな役が多いだけで、それが特に好きだということではないんです。たまたま、やりたいと思ったものがそうなった(シリアスなものだった)だけですね。
台本を読んでいいなと思ったものに出演してますから」
公開待機作が目白押しの彼、そう聞くと、次回作、次々回作が気になってくるが、まずは『46億年の恋』を見なければ始まらない。トロント国際映画祭で2回にわたって上映されるこの作品は、日本映画計7本の中でも特に注目の一本だ。映画祭では、前売り券が売り切れとなった人気作品上映時には、当日券を取るために大勢の人が劇場前に列を作る。取材当日の段階で『46億年の恋』の前売り券は売り切れ。上映時には多くの映画ファンが当日券を求めるだろう。そう伝えると松田さんは
「あぁ、そうなんですか」
と一言。しかし、出演作が多くの観客に受け入れられる喜びと海外での反応の大きさへの驚きなど、その一言に込められたいくつもの感情が伝わってきた。劇場に足を運ぶ、多くの人の期待に答えなければいけない役者という仕事。その仕事を選んだ理由について彼は、しばらく考えた上でこう語った。
「色々経験したり、感じたり、想像したりすることが仕事になる。それは凄いことだと思います。今回の映画でも、勉強させてもらいました」
インタビューの最後に、『これからもよい作品にたくさん出演して、楽しませてください』と、月並みだが、そんな言葉を掛けた。
「それはもちろんです!」
凛とした返事をくれた松田さん。決して饒舌ではないが、その言葉は素直で、演じることへのポジティブさがストレートに伝わってくる。衝撃的なデビューから既に8年目。ベテランの域に入る年数を重ねているにもかかわらず毎回新鮮な演技を見せてくれるのは、そんな、演じることに対しての彼の素直な情熱の現れだろう。これから公開作品が目白押しの彼。今度はどんな面を見せてくれるのか楽しみだ。
〈インタビュー/西尾 裕美〉
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