クイーン・ストリートとユニバーシティ・アベニューの角に、その優美な姿を見せる『Four
Seasons Centre for the Performing Arts』。今回は、この北米屈指のオペラ・ハウスを拠点とし、いよいよ熱いシーズンを迎えようとするカナダ国立バレエ団
(The National Ballet of Canada)のファースト・ソリスト、平野啓一さんにお話を伺った。
―お母さまがバレエスクールをやってらっしゃいますね。
「そうですね。バレエを始めたのはやっぱり血じゃないですか? 弟(平野亮一さん)もバレエをやっていて、今、イギリスのロイヤルバレエ団でがんばっています。彼はずっとバレエを続けていましたが、僕は何回かやめたんです。タイツとかが嫌で(笑)。でも中学一年の時に弟の舞台を見て、『あ、かっこいい…』と思ってまた始めました。だから、弟がいなかったら(バレエを)やってなかった(笑)」
―カナダ国立バレエ団に入団したきっかけは?
「スイスのローザンヌ国際コンクールに出場した時、審査委員長が(ナショナル・バレエの)スクールの校長先生で、彼女がトロントに誘ってくれたんです。99年からだから(今年で)8年目? あっという間でした」
―来月3日から「眠れる森の美女」で06/07シーズンが始まりますね。
「今年は衣装がリニューアルしますよ。ステージのセットも変わるんじゃないかな。新しい(オペラ・ハウスの)舞台では、こけら落としで踊らせてもらったんですけど、いいですよ。すごいですよ。歴史とかはないけど、やっぱり新鮮ですね。シーズンが楽しみです」
―平野さんは、ブルーバード(青い鳥)の役で出演されますね。
「ブルーバードはソリスト級の役で、ジャンプ力が必要な役。鳥の役ですからね、体力的にはきついんですよ(笑)。ここ(ナショナル・バレエ)では、明るく、よく踊るキャラクターに入れられるんですが、もうちょっとステップが少なくても、その少ない中に意味がある役にも挑戦してみたいですね。演技が必要になるような、ドラマティックなのもやってみたいです」
―舞台から客席って見えるものなのですか?
「ライトの関係があるけど、まあ、見えますね。奥の方は見えないですけど。あのね、舞台で、お客さんを感じる時があるんですよ。お客さんのオーラっていうか、そういうものを感じて、それを糧にして踊れる時があるんです。毎回ではないですけど、時々、そんな風に一体化することがあるんですよ。そういう時は、大概、満足のいく舞台になりますね」
―今まで舞台で失敗はありますか?
「ようけありますよ(笑)。手をついたり、みんなが動いてない時に、間違えて動いてしまったり、振りを忘れたり。僕、コンタクトをつけてるんですが、一度、踊ってる最中にコンタクトが両方ずれてしまった。そういう時に限ってみんなの間をくぐり抜けて…っていうシーンだったりするんですよ。バレエは生ものやから、アクシデントはつきものですよね」
―王子役などはやはり、人気があるのですか?
「役についてはどうかなぁ。男に関して言えば、自分がプリンス役に向かないのに、やっても仕方が無いですからね。でも、舞台に立ってる以上は、自分が一番輝いていたいっていうのはありますから、そういう意味での競争心はあります。一生懸命、毎日練習してますからね。まあ、言ってみれば自分との戦いですね」
―ダンサーと聞くと、食事制限などが大変そうですが、実際はどうなんですか?
「食事には気をつけますよ。今日はカロリーいくつ取ったか…って感じです。細かく計算はしないですけど、油分を取ったからバランスよくサラダを取るとか、サプリメントをサイドで取ったりします。シーズンが始まると、食事を楽しむって言うよりも、まるで、えさ状態。僕は基本的に好き嫌いは少ないんで、とりあえず食いまくる(笑)感じですが…」
―筋力トレーニングなども毎日決まって行うのでしょうか?
「しますね。まあ、これは趣味ですが…(笑)。体の線などに影響するので(カンパニーからは)あんまり筋トレをしないようにって言われることもありますが、時々、裸になる舞台とかあるじゃないですか。それでしょぼしょぼやったら男らしくない。まあ、筋トレは一応したほうがいいんですよ。力があるほうが、無いよりいい。舞台では女の人を上げるやないですか。その時に楽やし、長丁場になった時には、スタミナがあるといいですから」
―バレエを劇場に見に行くというのは、ちょっと敷居が高いなというイメージがありますが…。
「もちろんフォーマルな席もあるけれど、カジュアルな席もあるんですよ。お洒落したい人はお洒落して来てくれればいいし、デートで来る人もいるし…。
バレエって、毎回おんなじショーが出来るわけじゃないですからダンサーの感性が変わってくると、ショーも変わってくる。見ている方の価値観も変わってくると思いますよ。『生』の醍醐味を是非、楽しんでください」。
〈インタビュー/西尾 裕美〉
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