友達との集合写真、自分だけが目をつむっている。そんな経験ありませんか? 今年で4回目を迎えたトロント・ショートフィルム・フェスティバルで上映された『またたく魔』(英題:In
the Blink of a Lie)は、写真に目をつむって写ってしまうという誰にもよくある日常を切り取り、笑いというエッジを効かせた作品だ。占い師に今年のラッキーアイテムはお見合い写真だと言われ、見合いの予定もないのに早速、写真館へ出かける冴えない男性。そこで出会ったのは可憐だが頑固な一面を持つアルバイトの女性カメラマン―。今回は、会場を笑いの渦に巻き込み、観客賞を受賞した『またたく魔』監督、田平衛史さんにお話を伺った。
―今回の作品『またたく魔』について教えてください。
「写真を撮る時に『まばたき』をしてしまうので、お見合い写真がうまく撮れないというストーリーです。でも、最初のアイディアは写真からでなく、お見合いから膨らませたものです。
そもそもこの映画は、小澤君(主演の小澤喬=たかし)の代表作を作ろうとして始めたものなんです。僕は筧昌也監督の『美女缶』にスタッフとして関わっていたんですが、彼とはその時に知り合って、僕の最初の映画で車輌(映画制作のためのスタッフの一人)をやってもらったんです。そして次の映画ではエキストラ。3度目で主役を勝ちとった。彼はバイ・プレイヤーとしての出演が多い俳優さんですが、彼を主役にしたらどうなるかな…というところがありました。はじめは彼がお見合いをしているプロットだったのですが話が膨らまなかった。ではお見合い写真を撮っている場面だったらどうか…、そして写真を撮るとまばたきをしてしまうという流れになり、それが最終的に物語のキーになりました。
実は、僕の中では『またたく魔』は異質なもので、こんなもの作って、僕、いいのかな? と思いました。これまでの作品は日本ではあまり評価されてなかったので、今回の作品はコンテストとかを考えないで遊んで作ったんですが、それが皮肉なことに日本で高い評価をいただけて…」
―この作品は日本国内で開催された数々の短編映画祭でも上映されましたが、各会場には出かけられましたか?
「札幌と仙台、長野の映画祭には行きました。その中で札幌(札幌国際短編映画祭)は印象的でしたね。会場で見た海外の作品は、日本の短編の監督とは気合が違うと感じました。日本のショートフォルムはCMやダイジェストみたいだったりして、面白いものを見たことがなかったんです。(反面、海外の作品は)役者がめちゃくちゃ上手い。それに演出がいい。力強さと野心的な印象を受けました」
―映画を撮り始めたきっかけは?
「大学一年生の時に初めてミニシアター系の映画を見たことです。岩井俊二監督の『ピクニック』でした。邦画の概念がくずれました。
僕は出身が島根の田舎で、映画館が町に一つとか…という状態だったこともあって、大学のために福岡に出てくるまでは映画を見る機会があまりなかったんです。だから、自然と漫画の方に入っていった。僕は漫画が好きで、高校生の時は漫画家を目指していました。
『ピクニック』を見るまでは、寅さんとかが僕の中の邦画のイメージだったんです。その映画に衝撃を受けたと同時に、『俺も何か撮らないとまずい』と思ったんです。撮りたいと思った。(『ピクニック』が)僕の作風に結びついてないやんって言われてたら、それこれとこれとは違うんです…ってことなんですが(笑)」
―これからの目標は何ですか?
「将来的には長編映画です。長編はまだ撮ったことがないのでやってみたい。長編はリスクが高いんですね。撮影に時間もかかるし。短編(映画)なら、自費で作っても僕がちょっと借金をすればいい程度ですが、長編は回収を目的にしないと作れない。でも短編映画は公開できる機会が少ないんです。だから、長編を撮って劇場公開ができるようにしたいと思っています」
―監督にとって映画とは、また、映画を撮り続ける理由は何ですか?
「映像作品は僕にとってのライフワークですね。自己表現の一つですが…何で撮ってるんですかね? 僕から映画をとったら何も残らない。だから、すがってるのかもしれません。
でも、やっぱり映画作りが『好きだから』なんだと思います。僕はまだ映画自体に興味を持って日が浅いんです。大学にいた頃は映像製作技術そのものに興味があって、技術的なことばかり追っかけてました。撮影とか脚本とかは、できれば他の人にやって欲しかったんです。編集が好きで、大学を卒業してCMの編集の会社に入ったんですが、1年半で辞めました。人の編集が嫌になったから。結局自分の作品の編集(の方)が楽しかった。
ここ1〜2年は技術的なことから興味が薄れて来てます。脚本、企画作り、演出という面が楽しくなっているんですよ。僕は現在進行形で映画をどんどん好きになってるのかもしれないんです。ハマってしまってるんです。
僕がやろうとしてる『視覚的表現』は実は漫画がベストなんじゃないかと思う時もあります。全部自分でコントロールできるし。ただ、映画には『瞬間と集団の奇跡』というのがあると思うんです。僕だけの力じゃなく、いろんなスタッフとその瞬間を紡いでいく。自分で思い描いている想定外のことがいい意味でも悪い意味でも必ず起こる。そこも面白かったりします、映画」。
(写真)田平監督の作品『またたく魔』より
〈インタビュー/西尾 裕美〉
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