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トロントの各界で活躍する著名人にインタビュー

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Katsura Koharudanji
三代目 桂 小春團治
落語家
落語の楽しみは
想像すること
扇子と手ぬぐいを駆使し、
等身大の日本を伝える伝統話芸

日曜夕方、お馴染みの長寿番組といえば「笑点」。この番組で落語というものを知ったという人は多いだろう。しかし、私を含め、寄席を訪れて実際に落語を鑑賞したことのある人は意外と少ないのではないだろうか。今回は、06年、『ニューズウィーク』誌で特集された「世界が尊敬する日本人100人」の中の一人として選出された落語家・三代目桂小春團治師匠が、カナダ公演の一環としてトロントを訪れると聞き、初めての『生』落語を体験しようとジャパン・ファウンデーションに向かった。

会場に入ると、正面奥に座布団が一枚。字幕の説明を見つめながら待つことしばし、出囃子に合わせて桂小春團治師匠が登場した。開口一番、
「カナダにくるっていうことで、カナダ人の友人にカナダの人と仲良くなるにはどうしたらいいか、聞いてきました。アイスホッケーの試合結果もチェックしてきましたし、アメリカ人の悪口も考えてきました」
会場を埋め尽くした観客からどっと笑いが起こる。もちろん、すべての観客が日本語を解するわけではないので、英語字幕を見ながら鑑賞する人もいる。
「今回はトロント公演なので英語の字幕ですね。でも、明後日のオタワは英語とフランス語の2カ国語字幕。モントリオールも2カ国語表記です」

小春團治師匠の手元には10カ国語の字幕があり、公演場所によって使い分けているそうだ。続けて師匠は語る。
「(日本語を解さない方の場合は)字幕を読んでる最中に『表情』を見過ごしてしまうこともありますが、ほとんど日本人と同じところで笑ってくれてますよ。
落語は『話芸』って言われます。確かに語りの芸ですが、正確に言えば、イメージ芸。頭の中にイメージを作って楽しむものです。落語は一人だけの芸なんですけど、今回は裏方を5人引き連れてきました。というのは、上方落語(※)っていうのは江戸落語と違いまして、話の中に三味線などが入っているから。三味線や太鼓が物語の中に入ってくることで、話し手が喋らなくても聞いてる方は、どういう状況なのかをイメージできる。上方落語っていうのは海外公演に向いているんですよ。高座(寄席の舞台)から見てると『今、外国のお客さんの頭の中にもイメージがひろがっているな』っていうのがわかります。
(落語は)仕事なんで、日本での寄席と海外での寄席、どちらが好きかって言われても困るけど、刺激としては海外が大きいですよ。山があったり谷があったりしますが、同じネタやっても違いますし、緊張感がありますね。いつまでたっても『ここの国のお客さんはどうやろ?』っていうのがありますし、自分に対する活性剤になってますね。いっつも、いっつも、同じことをやってたんでは刺激がないから」

そう話す小春團治師匠は、現在、新しい落語の形を提唱している。ホールや寄席で行うのではなく、
寺院で行う落語だ。「30カ所ぐらいやってます。もともと落語はお寺で生まれましたから違和感はありません。お坊さんの説教の中から生まれたのが落語ですから、里帰りしてやってるようなもんですね。
お寺っていうのは葬式とか、法事とか、どっちかって言うと、悲しみごとばっかりを担っているような場所ですよね。しかも観光社寺は別として、普通の町にあるような、地元にあるようなお寺っていうもんは、檀家さんでない人はなかなか入っていけない雰囲気があります。
かつてのお寺っていうのは、そこから村が形成されていった感がありますね。田舎に行くと、道をまっすぐに進むと勝手に山門くぐってお寺に行き着くようなところもあります。それに寺子屋などがあって、お寺は教育の場であったわけですし、いうたらコミュニティの中心となっていたんです。かつてはいいことでもお寺に集まっていたのに今は、悲しみごとばかりになった。だから、喜びごとを与えられるようなお寺。人が集えるような、昔のようにコミュニティの中心であったお寺に戻そうと、若いお坊さんたちの協力でネットワークが広がっていきまして、お寺で落語を始めました。ただ単に落語をやるわけじゃなくて、『真宗落語』といいまして、笑いながら(浄土)真宗に触れると言うか、真宗の教えが一つ入っている落語を毎回一席やってます」

小春團治師匠は、落語家として初となる落語のNPO法人「国際落語振興会」も設立している。
「海外公演の場合は、資金をどう調達するかっていうことが毎回、問題になりますので、それを助けたり、落語が何かの役立つんじゃないかと…。
海外公演なんかも仕事ですけど、外国の方が『ああ、日本人はこんなことで笑うんや』とか、『こんなエッチなことも言うんや』とか、『日本人も冗談言うんや』(笑)とか思ってくれればいい。(落語に触れることで)日本に対するイメージが変わったという方もおられるので。『日本人も、こんなアホなことを言うんですよ』『こんなユーモアのセンスも持っているんですよ』っていう、等身大の日本人を分かってもらえるのに役立つ。それに、地域のコミュニケーション作り。最近ではなくなってしまった、老若男女が集まる機会作りもできる。仕事がプラスアルファで社会貢献につながるということがわかってきまして、NPO法人を作りました。仕事をしながら、そういう機会をどんどん増やしていこうと思ってます」。

※上方落語…大阪、京都を中心に、関西圏で行われている落語。現在、上方落語協会(会長:桂三枝)には、小春團治師匠をはじめ、191名の落語家が協会員として登録されている。上方落語に対して、東京を中心に行われている落語を江戸落語という。

 



〈インタビュー/西尾 裕美〉

かつら こはるだんじ
大阪市出身。1977年、三代目桂春団治に入門。97年、文化庁芸術祭新人賞受賞。99年、三代目桂小春團治を襲名。2000年から活動の場を海外にも広げ、現在までに、英・仏・独・露・ブルガリア・韓国など10数カ国で公演。06年には文化庁文化交流使に任命される。

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