カナダで生まれたカナダの国技、『アイスホッケー』。日本では、野球やサッカー人気の陰に隠れてあまり馴染みのないスポーツだと思う人も多いかもしれないが、カナダに来てその人気に驚いたことだろう。アイスホッケーは北米、北・東欧などを中心に非常に人気のあるウインタースポーツで、男子は現在、チェコ、スウェーデンのヨーロッパ勢が優勢、女子はアメリカ、カナダが世界一のレベルを誇っている。そのアイスホッケーを追いかけて、滋賀県からチェコへ移住した桐渕一家。その長女の絵理さんが今シーズン、カナダにホッケー留学をしていると聞き、アイスホッケーの試合を一緒に観戦しながらお話を伺った。
チェコでは、クラブチームでゴーリー(ゴールキーパー)として活躍している絵理さん。
「家族でチェコに住んでて、兄弟は自分と兄と妹の3人。みんなアイスホッケーをしてます。11歳ぐらいからもう7年住んでます。日本語ですか? 忘れちゃいます(笑)。家では日本語を使ってるから話すのは忘れないけど、書くのが…。書くことがあっても、メールとかで済ませちゃうから。コンピュータがあったら、『書く』必要がないですよね」
すっかりチェコに馴染んだ感がある絵理さん、チェコでプレーしたいと思った理由はもちろん、アイスホッケーが強い国だから。
「長野オリンピック(1998年冬)のアイスホッケーのファイナルでチェコが優勝したのを見て、チェコに行きたいなって…。アイスホッケーをやるんだったら、世界一の国でやりたいと思いました。チェコは男子はトップレベル、女子は日本と同じぐらい。女子はカナダ、アメリカが強い。それから、フィンランド、スウェーデン…」
そう、絵理さんの今回のカナダ留学の理由は、女子のトップレベルを誇る北米でプレーしたいという本人の希望からだ。その力の入れ方に、小さな頃からホッケーに慣れ親しんできたのかと聞いた。
「いえ、もともとはスキーです。お父さんがスキーをやっていたので私もずっとスキーを習っていて、週末とかは学校を休んで山に行ってたこともあります。スキーヤーになりたかったから、(当時は)オーストリアとかに留学したいと思ってました。
スキーのオフトレでインラインスケートをやっていて、地元でチームを作ったりしてました。そのチームメイトにアイスホッケーをやってる人がいたんです。アイススケートとインラインスケートって似てるし、たまに氷の上に乗ったりしてたことはあります。でも、本格的にホッケーをやりたいと思ったのは長野オリンピックの後です」
スキーからアイスホッケーへの転向。スキーヤーだったお父さんはなんと言ったのだろうか。
「スキーとホッケーは一緒にできへんから、どっちをやるか、選ばなきゃいけない。自分は、やっぱりホッケーがやりたいって言ったんです。
お父さんはスキーやらせたかったから、スキー辞めて、ホッケーやるんやったらちゃんとやりなさいって、世界一の国でやりなさいって。お父さん、自分がスポーツマンやから、気持ちを分かってくれる」
そして、同じくチェコでホッケーがやりたいと希望していたお兄さんの悠人さん、お母さんとともにチェコへ。
「最初は自分と兄と母の3人でチェコに一年ぐらい住んでました。父は仕事を急に辞められないから日本に残ってました。その後、家族離れて暮らすのはきついってことで、お父さんが仕事を辞めてチェコに来た。妹はまだ小っちゃかったから、2人(絵理さんとお兄さんの悠人さん)がホッケーやってるから、うちもやろかなって感じでホッケー始めて、2人も向こうに行ったし、うちもいこかなっ感じだったかな。
お母さんはスポーツ全くやらないんです。いっつも、『なんで、自分の子がこんなにスポーツやるのか、ようわからんわ』って言ってる(笑)」
この日はカナダ国内で行われる今シーズン最後の試合。この後、アメリカへの遠征を終えたら絵理さんはチェコに戻ることになる。
「来シーズンも出来ればカナダに来たい、来る予定。将来はアメリカの大学のホッケーチームに入ってプレーしたいから。カナダの(女子ホッケーの)レベルは全然、上。今いるチームはカナダ人に、アメリカ人やヨーロッパからの留学生も混じってます」
家族や友達から離れて、一人で全く知らない土地、カナダへ。来年も来たいという絵理さんだが、くじけてしまうことはないですか?
「ホッケーはやってても楽しいし、見てても楽しい。辞めようと思ったことはありません。それに、諦めちゃったら、誰も信用してくれなくなる。一生懸命応援したのに、なんや〜ってことになる。
チェコって、チェコ語を使ってて、(日本語はもちろん)英語もあんまり使ってないんです。両親は単語数は多く知ってると思うけど、私達兄弟と比べると、チェコ語はそんなに話せません。そんな中で、お父さんもお母さんも私のことを一生懸命応援してくれてる。感謝してます。だから、諦めないです」
試合会場で会った絵理さんの第一印象は『小柄な女の子』。ヨーロッパや北米の選手は、絵理さんよりもひと回りもふた回りも体格が良い。その選手らと同じリンクの上に立ち、どうやって渡り合っているのかと思いながら話に耳を傾けていたが、アイスホッケーについて語る熱い口調とリンクを見つめる真っ直ぐな視線に、その答えを見た気がした。
〈インタビュー/西尾 裕美〉
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