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トロントの各界で活躍する著名人にインタビュー

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Hiromi Uehara
上原ひろみ
ピアニスト
元気の出るピアノその音の秘密

真夏のトロント。気温は35度。そんな、うだるような暑さの中、市庁舎前広場の特設会場で音楽好きのトロントニアンをさらに熱くさせるライブが行なわれた。10日間に渡って街をジャズ一色に染めるトロント・ジャズフェスティバルの5日目、メインステージに現れたのは『Hiromi's Sonicbloom』。この4ピースバンドを率いるのは、”元気の出るピアノ“の愛称を持ち、日本が世界に誇る若手ジャズ・ピアニストの上原ひろみだ。ステージ上に彼女が現れた瞬間、「ひろみ! 頑張れ!」と日本語で声援が飛んだ。トロントで聞く日本語にちょっと驚いたように目を見開いた彼女は、声援に頷きながらピアノの前に座り、車のアクセルを踏み込むように、勢いよく演奏を始めた。
上原ひろみのルーツはジャズ。しかし、今年からギタリストを新たに加えた『Hiromi's Sonicbloom』は、時にロックコンサート会場のような、熱気を帯びた躍動感溢れる音で会場の聴衆をあおる。静と動を巧みに組み合わせ、会話をしているかのような変拍子を織り混ぜた彼らのサウンドに、時間はあっという間だった。バンド名と同じく音の花が咲き乱れるような、一つのものにとらわれない新しい音をいつも模索している上原ひろみ。今回は、そんな彼女に『元気の出るピアノ』の基を伺った。

上原ひろみの”ピアノヒストリー“は6歳の時に遡る。
「母親に連れられてピアノ教室に通いだしたのがピアノを始めたきっかけです。当時通っていたヤマハ音楽教室は海外活動も盛んに行っていて、それに参加するうちに中学生くらいの時には、いつか海外で演奏したいな…という夢というか、イメージを持っていました。言葉が通じなくても音楽で気持ちを通わせることが出来るということにすごく感動したんです」
ジャズ好きのピアノの先生の影響を受け、小学生の頃からジャズを聴き、アメリカのジャズ奏者の演奏にのめり込んだ彼女だったが、フルタイムで音楽を学ぶのは20歳になってからだ。ヤマハ音楽支援制度で留学奨学支援を得、日本の大学を中退して渡米。バークリー音楽大学の作編曲科へ入学した。
「バークリーは有名な音楽大学なので、世界各地から学生が集まっていました。学生の40パーセントは海外からの留学生。だから、私は留学生だから…という寂しさは全くありませんでした。他の音大には行ったことが無いから、バークリーだったから特別に学ぶことが出来たことがあったかどうかは判らないですけど、そこでたくさんの上手く楽器を弾ける人や才能のある人に出会って、個性の大切さを学びましたね。
3人編成だった頃のバンドメンバー(ベースのトニー・グレイとドラムスのマーティン・バリホラ)はあっち(バークリー)で会ったんですよ。今は、彼らにギターのディビッド・フュージンスキーを加えての4人編成です」
バークリーを首席で卒業後は、世界各国をバンドと共に回る傍ら、矢野顕子やドリームズ・カム・トゥルー、そしてタップダンサーの熊谷和徳とのコラボレーションなどでの新境地開拓にも積極的だ。
「他のアーティストの方や異分野の方々とコラボレーションをさせていただくと視野が広がりますね。タップダンスの熊谷さんともコラボさせていただいたんですが、放出している場所や方法が違うだけで、同じ志を持っていたので、異分野という印象はありませんでした。その場に来てくださった方を楽しませたい、心が同じ方向を向いている瞬間を共有したい、その上で、自分も楽しみたいという思いは同じですから。例えば、ダンスしか見たことのない人に、音楽の素晴らしさを伝え、文化紹介をしていくんです。アーティストベースではつながりがあるので、そういうコラボを行なって広めていくのは、アーティストとしての責任だと思います。
(他の分野の方とのコラボと言えば)今、映画の音楽も担当させてもらっていて、そちらでもかなり勉強させてもらっていますよ」
映画の音楽とは、今年の秋に公開予定の『オリヲン座からの招待状』(浅田次郎原作・宮沢りえ主演)のメインテーマだ。
「映画の台本を読んだ時に、すぐに音がイメージできました。もともと私の音楽は、自分が見たものや体験したことをイメージ化して、曲に繋げていくことが多いからかもしれませんね。映画公開後の11月からは日本ツアーも始まりますし、今からどんな出会いがあるのか楽しみです」
ライブでの出会いは一期一会。その時の状況をに合わせて、最大限にピアノの魅力を引き出してあげることがピアニストとしての務めだと言う上原は、音楽の魅力はそんな、一期一会のドキドキ感だと語る。
「会場や楽器の状況によって、その時、その場でしか出ない音になるのはある意味、インプロビゼーション(即興演奏)に通じるところがあるかもしれませんね。昨日と同じ演奏は今日できない、そして今日の演奏は明日できない…インプロビゼーションは刹那的で、はかないものだと思います。だから好きですね。今日、この日にしかできない最高の演奏をしたいといつも思っています。
そしてリスク・テイキングをどんどんしていきたいですね。ドキドキするから…。挑戦するっていう音楽においてのハードルって、いつもドキドキさせてくれます。新しいハードルを飛び越えた時は最高の達成感ですね! 私のドキドキを(聞き手の) 皆さんも感じてくれたら、そこから相乗効果で最高のライブが生まれると思うんです」。



〈インタビュー/西尾 裕美〉

うえはら ひろみ
1979年静岡県浜松市生まれ。ニューヨーク在住。6歳よりピアノを始める。99年にバークリー音楽院(米・ボストン)に入学、在学中にジャズの名門テラーク・レーベルと契約する。03年に同音楽院を首席で卒業。発表した全てのアルバムが、日本を含め、世界各国のアワードで賞を受賞している。今年3月に「第57回芸術選奨文部大臣賞・大衆芸能部門新人賞」を受賞。年内には、自身5度目となる日本ツアーも予定されている。www.hiromiuehara.com

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