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Goro
Koyama
小山 吾郎
フォーリーアーティスト |
| 本物より本物らしい音を求めて… |
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ハリウッドスター達が集結したトロント国際映画祭。その熱が冷めやらぬうちに、鑑賞した映画のワンシーンを思い出して欲しい。俳優が動く時の衣擦れの音、カップを机に置く音など、思い返せば日常生活で聞くよりも良く耳に響いたのではないだろうか。実は、それは俳優が演技時に実際に出している音ではない。それらの音を出し、きれいに録音し直すのがフォーリーアーティストという職業だ。今回は、トロント映画祭でも上映されたデイビッド・クローネンバーグ監督の『Eastern
Promises』など、数多くの作品に参加しているフォーリーアーティスト、小山吾郎さんにお話を伺った。
「映画の音と言っても色々あって、まず台詞があり、音楽、動物の声やエンジン音、銃声などの特殊効果音、町の雑踏や海の音、風の音などのアンビエンスがあって、そしてフォーリーがあります。足音や物をつかむ音、ドアやイスなどの家具、食べる音、衣擦れの音など、俳優さんの動きのほとんどがフォーリーです。これはどの映画でもそうです。『Eastern
Promises』を例に挙げれば、慌ただしいレストランのキッチンの音、革ジャンがきしむ音から乱闘シーンまで、挙げれば限りがありません。また、最近手がけた『The
Kingdom』(ピーター・バーグ監督、ジェイミー・フォックス主演)では、ビルが爆弾で吹き飛ばされる音やハイウェイで何台もの車がひっくり返り大爆発する音もかなり作りました。SF映画やアニメもやります。フォーリーはいたるところに潜んでいますが、それを気づかれない様にさらりと聞かせるのが腕の見せどころです」
では、どうしてわざわざ音を後から録音し直すのだろう。
「もちろんより良い音作りが目的。撮影現場でしっかり録音される音は台詞だけで、その他の音は8割方、後付けなんです。ハリウッド映画においては台詞もほとんど後から入れ直します。音でアクションをよりかっこ良く見せたり、実在しない音を生み出したり、ハリボテのセットや小道具の音を本物の音と差し替えたりするのもフォーリーの大切な役割です」
ドアの閉まる音などは簡単そうだが、実在しない音を生み出すのは大変だろうと言うと、小山さんは笑う。
「と、思うでしょう? それが全く反対。ドアや足音の方がはるかに難しい。というのは、実際にある音は本物よりもいい音でなくてはいけないから。コーヒーをかき混ぜるだけのシンプルに思える音も、時にはそれだけでシーンの全てを語らなければいけない。ホラー映画ではいつもドアが『キィ〜』って鳴りますけど、完璧な『キィ〜』は簡単には生まれないですから」
実在しない音や、誰も聞いたことのない音はアイデア次第だという。
「ある監督に『この映画のエイリアンの履物は地球には存在しない素材で出来ている』と言われた時はさすがに考えましたが、色々トライした挙げ句、ビーチサンダルで喜んで頂きました。また、”本物より本物らしい音“の例としては、タコが海底を這う音を想像してみて下さい。これは誰も生で聞いた事がない音ですが、ドキュメンタリーでタコが海底を這う音を聞いた事がありますよね。でもその映像を撮影した時、海底ではダイバーの呼吸音しか聞こえていない。実は、多くの人が今までずっと、フォーリーアーティストにまんまと騙されて来たわけです(笑)。
こう考えると、フォーリーがどれだけ大切で効果的かがお分かり頂けると思います。観客が期待するもの、監督のイメージ、僕らのイメージ、それから映画のスタイルやシーンの意味に沿った理想の音を、現実と演出のバランスをうまく操って、生み出す事。それがフォーリーの一番難しい所であり、また、醍醐味でもあります」
小山さんは現在トロント郊外に在住。渡加してから15年が経つが、彼がこの天職に出会ったのは、カナダに来て比較的早い段階だったという。
「高校を卒業してからカナダに来て2年間、映画製作を勉強しました。(映画製作を学んだ学校を)卒業後トロントへ来て、人を介して、現在も二人三脚でやっているアンディ・マルカム氏とフォーリーに出会いました。作業を見た瞬間に『これだ!』って思いましたね」
仕事を通じて一番嬉しかったのは、12年前、初めて自分の名前をクレジットタイトルに見た瞬間だという。
「お金はすぐもらえますけど、クレジットに出してもらうのは大変。実際、あそこに名前が出てない人の方が多いですから。僕の場合テレビ映画でしたけど、クレジットだけ巻き戻して何度も見ましたよ。それと去年のトロント国際映画祭を皮切りに始まった『Brand
Upon The Brain!』(白黒サイレント映画、オーケストラとライブ・フォーリーのコラボ。ガイ・マディン監督)の世界ツアーは大変でしたが、とにかくユニークで楽しかったです」
最後に、この仕事の一番のやりがいはどこに感じてるのかと伺った。
「手作りな所ですね。映画界もすっかりコンピュータに侵略されましたけど、僕らは今でも毎日、この足で歩き、この手でキャベツを叩いたりして(シーンに合う音を作り出し)録音してる。昔ながらで好きですね。いい大人が難しい顔を付き合わせて『キャベツを裏返してみたら?』とか『もう少しタコっぽくならない?』と言ってる場面がスタジオには毎日あって、笑う事も…。一生懸命だから仲間と口論になる事もありますけど、僕らが楽しんでなかったら、お客さんに楽しんでもらえるワケがないですもんね。あとすごく裏方なところが好きです。映画界の忍者ですよね、まさに。音はすれども姿は見えず…。古き良き舞台裏の職人気質が残ってる感じがして、誇りを感じます」。
〈インタビュー/西尾 裕美〉
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こやま ごろう
トロントを拠点に活躍するフォーリーアーティスト。ハリウッド作品をはじめ、数多くの映画の裏方として活躍中。ジニー・アワード最優秀音響部門受賞3回(1997、2003、2004年)、ジェミナイ・アワード最優秀音響部門受賞(2001)、ゴールデンリ−ル・アワード最優秀フォーリーアーティスト受賞(2006)。www.geocities.com/gorokoyama/index.html |
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