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トロントの各界で活躍する著名人にインタビュー

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佐藤 アヤ子
Ayako Sato
明治学院大学教養教育センター教授/
日本カナダ文学会副会長
『人種のモザイク』が持つ葛藤と力強さを日本へ伝える

ナイアガラの滝、スキー、メープルシロップ…『カナダ』と聞いて何を連想するだろうか? カナダには、ここに来たことのある人だけが分る、この国ならではの魅力がある。この魅力をまだ、カナダを知らない日本の人たちに伝えることは出来ないだろうか…。今回は、そんな考えを持って文学、演劇、映画などを通してカナダを日本に紹介し続けている佐藤アヤ子先生がトロントを訪れていると聞き、早速お話を伺った。

佐藤先生がカナダに初めて降り立ったのは91年だという。
「91年から93年までバンクーバーにいました。専門はもともとアメリカ文学だったんですが、ある先生から、今、カナダ文学がいいから、ブリティッシュ・コロンビア大学に来て勉強しませんか? って言われたのがきっかけです。もちろん日本カナダ文学会や日本カナダ学会はありましたけれども、あの頃まだ日本では、それほどカナダは知られていなかったんですね。今でもあまり知られてはいませんが(笑)。でも、これから面白い国ですよ、っていわれたんです」
60年代のアメリカ文学を研究していたという佐藤先生、具体的にはカナダ文学のどこに魅力を感じたのだろう。
「アメリカ文学は90年代になると、それほど面白いと感じる作品がなかったんですね。だから新鮮味があってね。 カナダ文学の中でも、まず最初に関心があったのは、日系文学と先住民文学。そこでジョイ・コガワさんを知ったり、先住民の友達も出来て輪が広がっていって、いろんなことを教えてもらいました。先住民の生活とか、儀式とかね。日系の文学も、ジョイ・コガワさんの『Obasan』などを読んで、カナダで日系人がどんな体験をしたのかを初めて知ったんです。その時、自分に課せられた何かを感じました。日本の人たちに、こういうことがあったんだっていうことを知らせて、カナダ文学を知ってもらおうと思ったんですよ。大学でも誰も教えていませんでしたし、帰った時、私のゼミナールはすごく人気がありました。80人の応募がありましたからね」
大学のゼミは、通常、20人以内の少人数で行われることが多いはず。80人の中から佐藤ゼミに入ることを許可された学生たちは、何を学ぶのだろう。
「日系人のこと、ジョイ・コガワさんの作品、先住民の民話、先住民の書いた小説などが題材になりますね。あと、マーガレット・アトウッドさんね」
カナダを代表する作家、マーガレット・アトウッド氏。もちろん避けて通れない題材だろう。
「アトウッドさんの本は非常に難しいですよね。本人も言ってますけど。今回はいくつか聞きたいことがあったので、彼女のお宅へ伺っていろいろ聞かせていただきました。あれだけの力量のある作家はなかなかいませんよ。彼女の英語は、詩みたいなところがありますから難しいんですけどね。彼女は”職人小説家“だと思います。ネタ切れがない。1作1作、全部ちがいますよね。そのわりに量産。書くことが苦痛じゃないんですよ。作家さんの中には書くことが苦痛な人もいらっしゃいますが、あの人は、水が沸くように言葉が出てくる。枯渇しないんですよ。うらやましいな…(笑)」
佐藤先生はアトウッド氏の作品をはじめ、翻訳も多く手がけている。そもそも翻訳を始めた理由は何だろう。
「人に知ってもらうためには、翻訳しかないと思ったんですよ。学生だったら英語でも読みますけどね。それに、参考書を翻訳する先生はたくさんいらっしゃいますが、それは読む人が限られている。カナダっていうものを知ってもらうためには、大衆向きのものをやらないと、と思ったんです。お芝居にも非常に関心があるので、いくつか訳しましたが、新聞社の人などに舞台を紹介して欲しいって言っても、翻訳ものがないとだめだからです」
では、教鞭を取ろうと思ったきっかけは? やはり、何かを多くの人に伝えるためだったのだろうか。
「私、お勤めするのが嫌だったんですよ(笑)。まず、朝が起きられなかったから、会社勤めはやだなと思って、それから逃れるためには、学校しかないな…と。大学の授業は、朝早いのはほとんど取らなかった。大体いつも、遅刻。遅れてクラスに入るのは悪いので、そのまま図書館に行っていました」
フランクな佐藤先生。ゼミはきっと、厳しいだけでなく、楽しく学習できる環境だろう。
「今、カナダ学を教えてますが、今年は映画にフォーカスします。多分、売れないだろうなって思いますが(笑)、カナダは非常にいい映画を作りますよ。秋にはカナダ映画のシンポジウムをしたいと思っています。それに、今年4年目を迎えるカナダ現代演劇祭。こうして少しずつ、知れ渡って行くんですよ。これで、アトウッドさんがノーベル賞を獲ってくれたら…。毎年ショートリストに載ってるので、そろそろもらってもいいんじゃないかな。そうするとカナダはもっと注目されるでしょうね。日本はアメリカ一辺倒のところがあるんですけど、もう少し他にも目を向けて欲しいなって思いますね。
ゼミでカナダ映画を見せると、学生はみんな(感動して)泣くんですよ。『カナダ映画おもしろいでしょ?』って聞くと、すごくいいって言いますね。(映画監督の)エゴヤンとかね。難しいですけどね。
イギリスやアメリカよりも、周辺国の方が面白い。文学っていうのは、何も葛藤のないところからは生まれないですよ。そういう意味では、カナダは常に新しい人が入ってきているし、文学、映画ともに、すごく良くなるんじゃないかなと思います」。

〈インタビュー/西尾 裕美〉
さとう あやこ
明治学院大学教授。日本カナダ文学会副会長。91〜93年ブリティッシュ・コロンビア大学客員研究員。著書に『J.D.サリンジャー文学の研究』(繁尾久・佐藤アヤ子共編、東京白河書院、1983)。訳書に『またの名をグレイス 上・下』(マーガレット・アトウッド著、佐藤アヤ子訳、岩波書店、2008)、『孤児のミューズたち』(ミシェル・マルク・ブシャール著、リンダ・ガボリオ・佐藤アヤ子訳、彩流社、2004)『寝盗る女 上・下』(マーガレット・アトウッド著、佐藤アヤ子・中島裕美共訳、彩流社、2001)などがある。

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