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トロントの各界で活躍する著名人にインタビュー

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ジーン・ディノヴィ
Gene DiNovi
ジーン・ディノヴィ
ジャズ・ピアニスト/作曲家
枯れることのない 『音楽』を追いかけて
澄んだ音色で語りかける“ジャズ・ピアノの詩人”

日加修好80周年記念イベントのひとつとして日系文化会館で行われる「The Japanese Suite…in Jazz」コンサート。演奏はジーン・ディノヴィ(ピアノ)、ジェームス・キャンベル(クラリネット)、デーヴ・ヤング(ベース)。「ドラムはないのですね」と、音楽にあまり明るくない私が言うと「今はピアノ・ドラム・ベースという編成が多いけど、ジャズトリオの編成はそれだけじゃないよ。そういう意味でも、今回のコンサートは聞きがいのあるものになるんじゃないかな」と教えてくれたトロントのジャズ通・某氏に紹介され、今回はジャズ・ピアニストのジーン・ディノヴィさんにお会いすることが出来た。

トロント市内にあるジーンさんの自宅兼スタジオには、写真やポスターなどが所狭しと貼られている。それらの写真には、どこかで見たことがある顔がジーンさんと一緒に写っている。
「君の年齢だと知らないかな? デューク・エリントンとか、ベニー・カーターとか…」
たとえ年代が異なっても、その名前に聞き覚えのある著名人ばかり。ジーンさんのスタジオは、ジャズの歴史を静かに語りかける資料館のようだ。
「こんな素晴らしい才能に囲まれて、僕は仕事をして来た。幸せなことだよ」
そう語るジーンさん自身もピアニストとしてだけでなく、作曲家、編曲家、タレントとしても活躍し、カナダ、日本を含め、世界中にコアなファンを多く持つ。そのキャリアの出発点は、ジーンさんが12歳の頃にさかのぼる。
「僕の兄さんは、アーティストとして家のデコレーションしていたんだ。そのクライアントの中に代金が払えなくなってしまったというピアノ教師がいて、兄さんは、仕事の代金と引き換えに僕にピアノのレッスンを受けさせてくれた。僕はその時12歳、ピアニストとしては遅いスタートだった。その彼から教わるのは、少しして辞めてしまったけどね」
レッスンを辞めたというジーンさん、しかし、ピアノから離れたわけではない。本場のジャズ・クラブで演奏するようになったのだ。プロとしてのデビューは15歳だったという。
「一緒に演奏した年上のミュージシャン達から、沢山のことを学んだよ。君はニューヨークに行ったことはある?あの街の52番街はジャズ・クラブが立ち並ぶ所なんだけど、そこの、ある有名クラブで演奏してたんだ。その頃は今までで一番太っていたかもね。なんせそこはステーキハウスでもあってね、演奏中にすごく良い匂いがしてくるんだよ。だから、1セット目が終わるとステーキを食べて…(笑)。通りには多分、6軒とか7軒のジャズ・クラブがあってね、あちこちから演奏が聞こえてくる。通りを歩くだけで、世界的に有名なミュージシャンの演奏を聴くことが出来るところさ。そうして、僕はピアニストとして歩き始めたんだ」
ベニー・グッドマンら、20世紀を代表するミュージシャン達と共演したジーンさん、バンドの一員としてだけでなく伴奏者としても才能を発揮していく。
「仕事の安定性も考えて、歌手の伴奏をする仕事もしたよ。ペギー・リー、リナ・ホーンなど、素晴らしい歌手達と一緒にね。
それから僕はロサンゼルスに移ってジャズからは少し離れ、映画やテレビ音楽に関わっていたけれど、71年にトロントで公演する機会があって、この地を初めて訪れた。そしてすぐに好きになった。40年代のニューヨークみたいだ、と思ってね。それで翌年にトロントに戻ってきて、それからずっとこの街に住んでいるんだよ」
ジーンさんのミュージシャンとしてのキャリアは、90年にまた一転する。同年、大阪で『国際花と緑の博覧会』が行われ、カナダ館で演奏を披露したジーンさんに、ジャズ専門レーベル、マシュマロレコードの上不三雄(じょうふみつお)氏がコンタクトしたのだ。
「マシュマロレコードがある横浜に寄らないか? と言われたので、大阪から横浜まで行くことを決めた。これが結果的に、少し離れていたジャズの世界に引き戻されたきっかけとなった。50年代から60年代にかけてロック音楽が現れた時、ジャズはアンダーグラウンドになったというイメージがあったけど、日本ではそうでなかった。そういう意味では、日本のジャズファンの皆さんにはお世話になってるね。日本にも沢山友達が出来たし、カナダでも、それをきっかけとして交友の幅が広がった。まさにジャズが架け橋となってくれてね」
現在80歳のジーンさん。若々しいその姿からはまだまだ現役、そして、ますます円熟という印象を受けるが、若い世代のミュージシャンについて思うことを伺ってみた。
「若いミュージシャンが出てくるのは素晴らしいこと。彼らが演奏できる場所がもっとあればいいと思うよ。トロントにも幾つかジャズ・クラブはあるけど、僕が若い頃はもっとたくさん演奏する場所があった。ジャズは昔、ポップ音楽だったけど、今はクラシック音楽になってしまったと思うよ。 
でも、クラシックとの違いは、クラシックの音楽家の多くは、楽しむことをまだ知らないこと。僕がジャズに夢中になる理由は楽しめること、音を奏でた時に楽器と僕との間に起こる”何か“があるから…。不思議な力だよ。例えばピアノを弾く時は座ってるけど、心は音楽に合わせて躍っている。ジャズを聞くと体が動く。人を心地よくさせる力を持っているんだ。美しいものに触れると気持ち良くなるし、心も体も若返る。音楽にはそんな作用があるね。
それに、偉大なミュージシャンは常に素晴らしいメロディを探して発表してきたけど、他の美しい曲が、どんどんと沸いて出てくる。エンドレスでね。メロディ、そして音楽は決して枯れることがないんだ」

〈インタビュー/西尾 裕美〉

ジーン・ディノヴィ
1928年ブルックリン生まれ。15歳でジャズ・ピアニストとしてプロデビュー。数々の楽団での演奏、コンボの結成をする。53年からは歌手の伴奏に専念。作曲と編曲を学ぶ。63年、ロサンゼルスを中心に映画、テレビ、スタジオ・レコーディングなど幅広いジャンルでピアノ部門を担当。70年にトロントへ移住、ジャズの世界で再び活躍を始める。90年には大阪『国際花と緑の博覧会(花博)』のカナダ・パビリオンで演奏、日本にもファンを増やす。
Gene DiNovi 26th solo CD
『Brand New Morning』

5月23日(金)日系文化会館にて行われる『The Japanese Suite…in Jazz』コンサート兼CDリリースパーティにて購入可

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