最近お洒落な店が増えだしたクイーン・ストリート・ウエスト、パークデールの一角に、新しくチベット料理店が出来たのは5ヶ月程前。この地域に多く住むチベット人やネパール人の為に故郷の味を、というのがこの店のコンセプト。店内は美しい彼らの故郷の写真が飾られ、内装の色調は素朴。オーナー2人が店先に立ち、感じの良い接客をしているせいか、お店は温かい雰囲気に包まれていて居心地がいい。毎日のように通い、食卓を囲みながら交流出来る、そんな感じの店だ。
飲茶アンサンブルの正体
接客をしてくれていたソッナムさんに「チベットらしい料理はどれですか?」と英語で聞くと、「ん?、(メニューを指差しながら)これとこれ、ですかね。あ、これは日本の焼いた餃子と同じですね、はい」と流暢な日本語で返って来た。えぇっ、こんなところで日本語!と驚きを隠せず、どこで日本語を…というお決まりの質問から会話が弾む。彼と話しているうちにスッカリ気分はリラックス。こうして、初めてのお客さんの緊張の皮は、簡単にペロンと剥がされるのだ。そんな彼がお勧めしてくれたはチベットの焼き餃子、Shae
Mo Tak-wa。この料理、まず見た目が可愛らしい上に仕上がりの色合いがイイ。黄金色の茶巾絞り風で日本の焼き餃子とは形が違うが、なんとも美味しそうなその姿につい手が伸びてしまう。もちろん味も食感も言う事なく二重丸。表面は揚げ餃子のようにパリッ、サクッ感満点で、内側の皮はモチモチ+フカフカした薄手の肉まん風、そして中身は牛肉とタマネギがたっぷり入った餃子や肉まんの餡、という感じ。飲茶アンサンブルのようなこの一品、おかずとして頼む人が多いそうだが、昼食やおやつ感覚ならこの一皿とお茶で十分満腹になるくらいのボリュームがある。
素朴という美しさ
さて、この餃子を注文するとクリアースープなるものがついて来る。読んで字の如く、入っているのは薬味のネギだけで、敢えて味付けはされていない。強い味の無いものを好む人達がいるからというのが基本的な理由だが、自分で好みの濃さに調節できるというのもその理由のひとつ。お好みでどうぞ、という訳だ。とにかく、シンプル極まりないこの透明スープなのだが、その風味とコクには驚かされた。昔ながらの方法でダシを取る。そんな手間がかかっているスープだけに、少し口に含めば直球ストレートでその嘘のない味が広がる。時間と手間をかけた料理にしか出せない奥のある味。その味は、まるでチベットの天上にどこまでも続く蒼々と澄んだ大空のように、見上げればいつもそこにある『素朴さ』と『不変の美しさ』を連想させる。
チベットのバター入り塩味チャイ、Bhod-Jhaで木枯らしにさらされた身体を温めて、のんびりと素朴な料理の数々をぜひ楽しんでほしい。
文・写真/岸 黄葉 |
 |
 |
Phingsha($6.99) + Ting Mo($2.99)
甘くないチベット風蒸しパン、Ting Moを手でちぎって、キクラゲと春雨のたっぷり入った牛肉の炒め物、Phingshaの汁に付けながら食べるのがあちら流。見かけによらず、味付けはアッサリしている。
|
 |
Tsey Tofu($6.99)
豆腐と野菜の炒め物はベジタリアンにうれしい一皿。こちらは蒸しパンよりご飯と相性が合う。Specialtiesの料理の多くにはご飯がついて来るのもうれしいところ。
|
 |
| 色調やパティオのタルチョ(法典が書かれた五色の旗)がチベットの雰囲気を醸し出す。 |
|