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今年1月、ダンフォースとブロードビュー近くに、エジプト料理店「Prince of Egypt」がオープンした。シェフ兼オーナーのタハさんはエジプト出身で、首都カイロのインターコンチネンタルホテルにてシェフを務めた経験がある。35年前に料理人になると決意して以来、アテネやローマなどヨーロッパ諸国を含め、世界8カ国で修行を積んできた彼。そんな一流シェフであるタハさんが、自信を持って作り上げる一品が、「骨付きラムの煮込み」である。
香辛料に引き立てたれたラム肉の甘み
90%の国民がイスラム教を信仰するエジプトでは、豚肉がご法度とされる一方、砂漠地帯でも放牧可能な羊の肉が、食文化と密着した大衆的な食材となっている。このエジプト人には馴染みある羊料理を、タハさんが長年の経験の末に辿り着いた独自のレシピを元に、5種類のスパイスと3種類のハーブを使って調理する。「一つ一つの香辛料が、それぞれの香りで肉の旨みを引き立てるんだ」と言うからには、このレシピは極秘に違いない。そう思ったのも束の間、「ショウズクとね、シナモン、ベイリーフと…」あれれっ!? 調理法をあっさり公開! まだどこかに秘密が隠されているのだろうか?
それとも多国籍の料理を極めてきた彼の自信の表れか? ともかく、タハさんがこれらの香辛料やハーブと共に煮込んだラム肉は、独特の臭みが抑えられ、代わりに旨みが強調されている。そして驚きはまだここから。ラム肉のこの柔らかさ! ジュワーっと広がるその肉汁は、むしろ甘いのだ。ここまで旨みを引き立てられたのは、様々な香辛料の組み合わせと量の加減という試行錯誤の結果であろう。実は、長年その臭みから、敬遠しがちだった羊肉の本物の美味しさを初めて教えてくれたのが、この店のこの一品なのだ。
まだまだある、エジプトの味
ここでは、他にもエジプトの味に挑戦する事ができる。中でも前菜として人気なのが丸い薄焼きピタパン。これを、お好みのソースやトッピングと共に食べながら主食を待つお客さんが多いそうだ。ヨーグルトソースや、ベジタリアンディッシュなど数多くあり、注文の際に好みを伝えれば、丁寧に教えてくれる。もう一つお薦めなのが、タハさん曰く「エジプト人が朝昼夜、食前食後構わず飲む」という、香り豊かなミントティーだ。食後に飲めば口内がさっぱりするだけでなく、体内に蓄積された不要物質の排出を促してくれるという。まさに一石二鳥!
「このレストランが、私の料理人としての最終地点である」と語るように、タハさんはトロントで流浪の料理人人生を終えるつもりだ。その分、最後に構えたこの店の料理には、これまで学んできた技術、そして全ての気持ちが込められている。ゆえに食した者は心惹かれていくのだろう。一度足を運んでみればあなたにも、タハさんのその気持ちが伝わるはずだ。
〈文・写真/TAKE〉
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