|
料理は技術的なものである反面、作り手の個性や性格が大きく反映される。様々なシェフ達の取材を通して、相性の良さそうなレストランは外観からでも何となく分かるようになった。「Pony
Bistro」もそんな店の一つ。窓を通して見える真っ白なテーブルクロスにセットされたカトラリー、シンプルな内装…シェフのこだわりと自信を十分に感じさせてくれる店だ。
手間と時間を惜しまない、プロの技
オーナーシェフのマークのお勧めは「ダックコンフィ」。コンフィって何?という私に、料理事典を開いてその定義や歴史を答えてくれる几帳面さ。コンフィとは、簡単に言うと仏料理の「肉の脂漬け」。ギトギトしたイメージだが、肉の保存を目的とした伝統的調理方法だ。ダックは私の大好物。ここは、彼との相性の良さを感じた自分の直感を信じてみることにした。
厨房の大きなバットには、黄金色の透き通った液体、そしてその中には沢山のダックが並んでいる。液体は100%ダックの脂だ。まずはダックに塩、砂糖、独自の香辛料で下味をつけ、一晩寝かせるところから始まる。翌日、低温のオーブンに入れること3時間。肉からじわじわと脂が染み出し、次第にダックを覆う程の量になる。自らの脂でじっくりと調理されたダックは、加熱後も同様の状態を保ってオーダー直前まで寝かされる。この待機時間で肉の熟成度は更に高まり、旨味が凝縮されていく。オーダーが入ると、マークはダックをフライパンに移す。「肉のジューシーさと柔らかさを失わない程度に、でもスキンがパリッとする位にローストするのが大事なんだ」
リッチだけど重くならない、最高のバランスの一皿
ダックと同時に準備されるのがデミグラスソース。ローストした子牛の骨と野菜、トマトペースト、赤ワイン、バルサミコ酢、ハーブ等を一晩以上掛けて煮詰めた後、玉葱、ニンニク、ポートワイン等を加えて更に煮る。香り高く、コクと旨味がたっぷりのソースをダックに掛けて完成。骨にそってナイフを入れると、表面の皮が「パリッ」と音を立て、柔らかい肉が滑らかに骨から離れた。まずはソースをつけずにひと口。皮のクリスピーな食感と肉のジューシーな味わいが素晴らしい! 続いてソースと一緒にひと口。サラっとしているがリッチな味わい。手間暇かけられたものだから、ゆっくり味わいたい、と思いつつ手は止まらず…。ダックと同時にその美味しさにノックアウトされたのは、付け合わせのポテトグラタン。4種のチーズ・ソースが絶品。他にもイチジクやフレンチビーンも盛られ、味、食感共に大満足。
一見物静かで完璧主義の職人タイプのマークだが、話してみるとウィットに飛んでいてユニーク。その技術への信頼に加え、独創性を生かしたコース料理は食通の間で話題になっている。プロの料理が食べたい時に、特別な人との食事に、期待に応えてくれるお勧めのレストランだ。
〈文・写真/大村 絵理〉
|