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昨年の夏、Augusta Avenueにオープンしたギリシア/レバノン料理の店Sana's Kitchen。最近の経済不況による市内飲食業界の低迷にもかかわらず大成功している理由は、ベジタリアンも大満足のメニュー、クオリティが高いのにお手ごろな価格、素早いサービスなどであろう。すなわち、この界隈に集まる人々の生活スタイル(ボヘミアン、オルタナティブ・スタイル)に符号しているからに違いない。市内で何軒ものレストランやカフェを切り盛りするベテラン経営者ミザールが、計算し尽くして出した店なのである。
メニューはサラダ、サイド、プラター(数種の取り合わせ料理)などから成り、同系列レストランよりは数ドル増しの値段だが、クオリティに照らせばそれも十分納得がいく。舌の肥えた客が繰り返し来店する、そんな店と見た。
ベジタリアンに好評のヘルシー・メニュー
ミザールが「これは、近所の病院スタッフのお気に入りランチメニュー」と言いながら出してくれたのは、串焼きチキン・スブラキがどーんと2本載ったグリークサラダ。香ばしくて尚かつジューシーなチキンは、わずかに塩味が効き、焦げ目までおいしい。グリークサラダも、パリパリ野菜とまろやかなフェタチーズ、そしてごく上質のオリーブオイルドレッシングと、とにかく非の打ちどころのないサラダである。
珍しいズッキーニ・ファラフェルも人気アイテムのひとつ。ファラフェルといえばひよこ豆がお決まりだが、ズッキーニを使うものは北部ギリシアの田舎に特有だとか。すりおろしたズッキーニにガーリックやスパイスを加え、ねっとりとしたコクのある食感に仕上がっている。ガーリックの味が濃厚なので、ガーリック・ラバーにはぜひお試しいただきたい一品。サイドメニューのケべーは、バルガー(ひき割り小麦)で牛ミンチを包んだレバノン料理のおなじみメニュー。コロッケみたいでどこかほっこりする味が気に入った。数種類の野菜を使い、複雑な味を醸し出す地中海料理の特徴が随所に見られるメニューはヘルシー。ベジタリアンにも好評を博していると聞く。
細部にまでゆきわたる洗練された上級テイスト
そして、私を「むむむ」とうならせたのが、フィロ・ペイストリを何層にも重ねたスパナコピタ(ほうれん草のパイ)。こんなにサクサクでしかもコシのあるフィロがあっただろうか! ミザールによると、今時のフィロはほとんど機械で作られるが、これは全て手作業で作られた特注品だとか。紙のように薄いフィロの新鮮な香ばしさ、何層にも響きあうバターの風味が実に味わい深い、極上のアペタイザーといえよう。スパナコピタについてくるツァジキ(ヨーグルトベースにきゅうりやスパイスなどを加えたディップ)も、バルカン地方の濃厚ヨーグルトの特徴がしっかりと活きていて、ディップといえども残ったらスプーンですくってきれいに食べたいほどだ。
一見、他のミドルイースタン・レストランと変わりないかに見えるメニューだが、ピタの厚さやドレッシングの調合など、全てが細部に至るまで計算されている。ケンジントンへ来た際にはぜひお試しあれ。
〈文・写真/篠原 ちえみ〉
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