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大学を卒業した後、長年の夢であったカナダへのワーキングホリデーの為に私は1年間ひたすらお金を稼いだ。 その夢叶い、何もかもが順調に進み始めた3ヶ月、私は思わぬ事態に直面した。
1ヶ月の語学学校を終え、私はタイレストランで週5回、ランチタイムの仕事を始めた。 それだけでは物足りなさを感じた1ヵ月後、カナディアン経営のフレンチ・イタリアンレストランで週5日、ディナータイムの仕事も始めていた。毎日タイレストランを終え、一息つく間もなく、小走りでイタリアンレストランに駆け込む日々が続いた。タイレストランは現金で給料をもらっていたが、カナディアンのほうは銀行振り込みだった。
そろそろ給料が振り込まれているだろうという日、まあ、5、600ドル位あればいいなあと思いながら必要なお金を引き出した。その時事態は起こった。レシートの残高を見たとき、「えっ?」と思わず目を疑った。全く予想外の金額が表示されていたのだ。 その額は何と、$19850.00!!! 「そんなはずは・・・」と、そんな事はありえないという常識的な考えから、「多分機械の調子が悪くて前の人のレシートが出てきたのかな?まあ次引き出した時には普通の金額に戻っているだろう」位の感覚で、特に気にもとめず2〜3日過ごしていた。
そして数日後、友人と会う前に必要なお金を引き出しにATMに立ち寄った。少しドキドキしながらレシートが出てくるのを待った。すると残高は$19750.00。「えっ、前とあまり変わってない。どうしよう」事の成り行きを把握出来ず、まだ海外生活初心者だった私はこの事態を誰にも相談せず、心の中に納めておく根性がなかった。そしてその日会った友人に相談してみることにした。するとその友人も「不思議だねえ〜」と言いつつ、「でも蘭の口座に入ってるんだから別に気にせず使っていいんじゃない?」と言った。私はわずかな不安を抱えながらも、その友人の言葉は正直言って私が一番期待していた言葉であった。そして私とその友人のその夜のプランは自動的に『ヒロ寿司でお腹いっぱい食べ尽くす』ことに決定された。なぜなら数日前に、そこはトロントで一番高級なお寿司屋で、先週マライヤキャリーが食べに来たとあるカナダ人が言っていたのを2人共聞いていたからだ。
そして2人はそこで一番高いお寿司のセットを一人前ずつと、刺身に興味深い一品料理、日本酒、ビール、ワイン、デザートと食べきれないほど注文し、リッチな人が振舞うような仕草でディナーを楽しんだ。2人で約200ドル位は使っただろう。チップもお店の人がビックリするほど残した。はっきり言っていい気分だった。お金が沢山あると、こういう気分で毎日過ごせるんだ・・・。と慣れない感覚を実感しながら・・・。けれども、その夜は友人と2人で作り上げた特別なムードが気分を高揚させ、不安という言葉をすっかり忘れる事が出来ていたが、一人になるとやっぱり心のどこかに『不安』という二文字がつっかえていた。そして小心者の私は、ヒロ寿司のような派手な生活はしばらく慎んで、その大金には手をつけないようにしようと決心した。日本で1年間貯めたお金も別の口座に充分あったし、仕事も2つ持っていたので、特に問題もなく普通の生活は出来ていたのだから。だからと言って自ら銀行に申し出るようなバカ正直なことはしなかったのだけれども。 つづく
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