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人類に入浴の習慣がいつ頃から定着したのかは知らないが、紀元前4世紀頃のギリシアの都市には公衆浴場が存在していたらしく、ローマ帝国時代には、各植民都市に共同浴場が作られた。入浴様式は、蒸し風呂の他に、広い浴槽に身体を漬ける形式もあったようで217年に造られたローマのカラカラ大浴場は二千人以上が同時に入浴できたといわれている。
日本人の私からすれば、西洋に公衆浴場が存在していたことが少し驚きであった以上に、古代ローマの入浴が官営病院を持たなかったローマ人の感染予防施設でもあったというのに、何故現在、西洋には公衆浴場というものが殆ど存在しないのか全く理解出来ず、摩訶不思議である。
オーストラリアを旅行中に何故か野外ロックライブを経験した60過ぎの我が父の帰国しての第一声は「アイツ等シャワーばっかりで風呂に入らんから、ゴッツ臭い!」であった。それを聞いて、オーストラリアでは牛や豚や鶏に加え、カンガルーやワニ、そしてエミュー等の肉も食するという単なる食文化の違いが体臭に影響し、群衆が一斉に発汗するような場所で余計に嗅覚を刺激したのではないかと、普段食べないメキシコ料理をたらふく食った翌日に、自分の産み落とす汚産物の通常時とは比較にならない、数十倍の濃度の悪臭で異次元へワープしそうになる経験を幾度となくしている私は思ったが、父の言う理屈通り、人間の体臭を入浴により、どれ程軽減出来るのかは定かで無いにしろ、シャワーによる洗浄だけに頼るよりも、湯に浸かるという行為を加えた方が幾らか臭いが抑えられるような気は確かにする。
民族ごとのワキガ体質の比率は、色々な説があるにせよ、一般的には、中国人3〜5%、日本人10〜15%、欧米人70〜90%、黒人に至ってはほぼ100%といわれているらしい。発展途上国は兎も角としても、先進国中心の欧米諸国で、悪体臭を放つ可能性のある人種の人口比率が高いにも関わらず、我が親父理論を適用し、公衆浴場を設ける等して民衆の入浴を促し、何とか未然に防げた筈の自然な悪臭を全くもって防ごうとしないのには釈然としないどころか、それでいて毅然とした態度で唖然とする程愛国心を掲げている人間を見たとき、素直に愕然とし、呆然としながらも極自然に目の前の御膳を怒りに任せて「こんなもん、平然と自宅で鈴虫の代わりにヘクサムシという俗称を持つカメムシを”風流でっしゃろ“とか言いながら飼っているようなもんや!」と叫びながらひっくり返したくなる。
カナダに限らず、海外での生活が長くなればなる程、”玄関で靴を脱ぐ“等といった日本では当然の習慣の重要度は確実に低くなっていく。然し、私は水垢や石鹸カスなどで腐乱したように見えるシェアバスルームに入る度、『湯船』というものに対して望郷に似た想いを常に抱いていた。ある日、「このままでは日本に帰った時に自分がカメムシのような存在になってしまう」と我慢の限界に達し、洗剤等を購入し、丸一日がかりで浴槽をピッカピカにし、久し振りの湯船を楽しむことにした。翌日、その効果は覿面で、友人に会うと「何かお前の頭、亀みたいな臭いしてるやん!」と言われた。
nob morley
吉本興業所属のお笑い芸人。先日は、2時間以上ある大イベントに出演(ちなみに出番時間は2分)。今年も海には行ってません。
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