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愛を知る人達の国という意味で『愛知』と名付けられたのかどうか分からぬように、道や土地等の名前にどれ程の意味が込められているのか知らないが、”JACK“だけが無いトランプでブラックジャックに興じようものなら一番良い役を全く目指す事が出来ないもどかしさが常に横たわるのと同じで、単なる順番に並ぶ道の名前であっても歯抜けになると何となく不完全燃焼な感じがしてならない。
安直な決断で”KING“駅で地下鉄を降りた私に与えられたものは、”此処はそれなりに都会だ“という僅かな安心感と、完全なる日没によりすっかり街自体が眠ってしまっていることから生じる不安感だけだった。空港でカナダ時間に合わせて間もない私の腕時計は容赦無く22時半を示しており、これが日本時間であってくれという願いは当然の如く届かず、辺りは普通に暗く、街灯が淋しく頭を垂れるように路を照らしているだけで、ビジネス街は完全に、死んだ状態で霊園並みの静けさに沈んでいた。
当初の目的通りダウンタウンらしき所には何とか来れたものの、其処は夜更けという理由で”KING“という名前からは到底掛け離れた、王子という見方が多いが本来は『召使い』の意味である”JACK“も拠り付かないデッドタウンであった。夜の街の死に具合いを目の当たりにした私は、「来る街の選択を誤った」という反省経由の「来る国の選択を誤った」という後悔が胃の底から突き上げて喉元まで押し寄せてくるのを「たったこんなことで弱音を吐いてたまるか!」と必死で抑え唾と一緒に飲み込み、”一年間ここで暮らしてみせまっせ“的な前向きな想いを詰めた30キロを軽く越える旅行バッグを鞄の端に取り付けられた調子良く回転するキャスターを頼りに引き摺りながら、東西南北全く分からず、取り敢えず遠くに見える煌々と輝くネオンの光目指して歩き出した。
誰がどう見ても旅行客と見受けられる私は、ホームレスにとっては恰好の餌食。小銭の入った紙コップを手にブツブツ言いながら寄って来る。見た目からして草臥れた感じの老人が言い寄ってくるのなら「仕方ない」と諦められるが、年端も行かない少年や私と同年齢ぐらいの青年、極め付けには小汚いスーツを着た中年となってくると、言ってる言葉は分からないにしても欲しがってる物は歴然としているだけに、「一体この街はどうなってるんだ!」発、「この国大丈夫か?」経由の「えらい所に来てしまった」着の感情を抱かずに居れず、気付けば先程唾と一緒に飲み込んだはずの後悔が口の中いっぱいに広がり、ふと道路名を示す標識を見ると”QUEEN“とあり、揚々と”KING“を目指した自分自身が感情と平行に滑り落ちていっているようで居た堪れなくなったが、この際”JACK“まで落ちてみようと歩みを進め、徐々に近付く明るいネオンに「あそこまで行けば何かある!」と期待感を昂ぶらせ、延々と声を掛け続けるホームレスにこの際意味などどうでも良いと「No thank you!」の一言を浴びせ振り切り、何とか次の交差点に到着。満溢の達成感を胸に標識を見ると『DUNDAS』。
え…どういう意味?
つづいちゃう。
nob morley
吉本新喜劇で活躍中のお笑い芸人。今年も大阪と東京を行ったり来たりで忙しそう。ところで、最近ミクシィなるものを本格的に始めたらしい。
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