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今年は冬に入ったのが遅かった。示し合わせた様に、この4月も穏やかな陽が差すまで随分と時間がかかったのだが、やっと温まった空気が春の訪れを告げた。新しい季節はしばしば何か感傷的なものを運んでこないか。その時期に起きた過去の出来事をふと思い出させたりはしないか。僕が日本を発ったのは今から13年も前のこと。その時も春の風は爽快であった。当時自分が何を考えていたのかよく覚えていない。トロントまでチケットを買ってはみたものの、何をしようというのだろう。出発前、大して準備もしなかったように思う。実際1年位しか滞在しないつもりだったし。その頃ギターの相棒とアルバムを録音しテープに起こしていたので、その完成を優先させた。今思うとお粗末な作品で決して人に聴かせられるようなものではなく、できたにも関わらず「庭に埋めよう」と言い合っていた。夜はほぼ毎晩飲みに出かけた。しばらく友人たちとも会わないだろうから。旅立ちを実感すると漠然とではあったが希望に溢れていた。ランブリン・オン・マイ・マインド。同時に寂しく、悲しい気持ちも僕を襲った。最後の夜は親しくしていた女友達と外出した。「頑張ってね」と激励してくれた。深夜帰宅した後、大して気のきいた言葉を返さなかった僕は後悔し、彼女宛てに手紙をしたためながら夜を明かした。翌日、お袋と朝食。口数は少なく別れがつらそうだった。ついに僕は家を出て空港までの電車に乗る。窓の外の景色は涙で滲んでいた。
ケン 吉岡 ケン吉岡(トロント在住ミュージシャン、ブルース・ハープ・プレイヤー) ブルース Live:Gate 403にて(403 Roncesvalles, Dundas West駅)毎週日曜日5pm
ken0122yoshioka@yahoo.co.jp www.myspace.com/kenyoshioka
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