|
ルビン(ルビー)の壷は、知っていますか? 人と人が見つめあっていて、その間の空間が同時につぼの形をしている視覚的トリックのある絵。こういった作品は、総称してオプ・アートと呼ばれています。また、このつぼの部分の様に、対象のまわりを取り巻く空間の事をネガティブスペースと言いますが、別にネガティブでもなんでもないのです。日本語だと背景です。
作品を取り巻く環境がネガティブと呼ばれるようになった原因は分からんが、作品を見せる環境自体は、かなり吟味される様になったかも。例えば、絵画を壁に飾るにしても、トイレの壁に無造作に掛けるのと、壁の色、照明、額を吟味して美術館の壁に飾るのでは全く見え方が違ってくる。見せる環境を考える>環境をアート作品として見せるという逆転的発想がインスタレーションアートだ。そう、インスタレーションアートとは、環境を総体として観客に呈示する芸術の事である。ちょっと難しく感じられるが、コンピュータにソフトをインストールするみたいに、もともと設置するという意味の言葉から来ている。
有名どころだとイギリスのレイチェル・ホワイトレッドは、建物全体やバスタブなどを型取りして、ネガティブスペースをそのまま作品として発表している。
安藤忠雄の設計による瀬戸内海の直島にある地中美術館は、美術館そのものがインスタレーションアート的で、ランドスケープに美術館が文字通り地中に埋められている格好。所蔵作品中でもジェームズ・タレルの空の作品は、発想からしてすごくて、ネガティブスペースが、ネガティブじゃないみたいな。見ないと感じられないから、一度体験旅行の価値、ありありのインスタレーション!
マルセル・デュシャンが小便器を噴水として発表したあの衝撃からもう90年もの時が流れている。インスタレーションアートは世界中で開花しているが、環境問題が政治経済の中でも重要課題として取り上げられている昨今、アーティストがイニシアティブを取るべき時が来たのかもしれない。環境そのものがアートなら、それだけはネガティブにはならないで欲しい。地球のみなさん、前向きにやって行こう!?
武谷大介(たけや・だいすけ)。
美術家。
著書に「こどもの絵―eyes of a child (一莖書房)」がある。
www.daisuketakeya.com
オタワの日本大使館にて7月13日(日)まで個展開催中!
|