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最近トロントでおいしい寿司割烹を食する機会に恵まれた。日本食のトップシェフの味付けや調理法は広く芸術的だと知られているが、盛り付けもまたアートだ。 NYで寿司職人の見習いをしていた頃「料理は立たせろ」と、毎日親方に怒鳴られていたのを思いだす。ディッシュは立体的に盛り付けられたレリーフ作品なのだ。 ここでアーティストが作品制作するとき考慮する美術要素と美術方法論に簡単に触れておこう。美術要素とは、料理にたとえると食材(ネタ)であり、色彩、線、形(2D)、体(3D)、空間、質感などである。それに対し、美術方法論とは調理法(レシピ)であり、平衡、躍動、リズム、強調、ハーモニー、プロポーション、調和、統一感などである。アートとは、ネタをどのようなレシピで調理するかなのだ。
それぞれのディッシュが美術作品であると考えると、器の形状、色彩、質感、は額選びそのもの。一般的に中性色(白、黒、灰色、茶色)は、どんな色にも相性がよく、目立ち過ぎないため額に適している。器選びでも無難な色であると言えるだろう。 器を選んだら、重要な盛り付けである。どんなに素晴らしい料理も盛り付けを誤ると美味しそうに見えない。 視覚的に美しい割烹では器の大きさに対し料理の量が少なめである。器の質感が背景(Back Ground)であり、その上に盛られた肴は焦点(Focal Point)である。洋の東西を問わず、名画の多くには鑑賞者の視線がスムーズに絵に入るためのエントランスと呼ばれる入り口がある。ディッシュに関しても、入り口にはわさびやがりなどの飾り物が出迎えていて、料理は器のやや後方に位置していることが殆どだ。視線はエントランスを通り料理をくまなく見て回り、気に入ったものから次々に食していくのである。また、焦点にずっと視線が止まってしまう絵には躍動やリズムがない。料理の盛り付けにおいても、視線がぐるぐると駆け巡るような構図が望ましい。
シソの葉や笹などは名脇役だ。全体的に色が統一されていて、のっぺりしており、刺身ネタの下に敷かれているのは単なる偶然ではない。こうやって考えてみると、日本食シェフの描く絵にすばらしいものが多いのは、当然のことであると言える。
写真提供:Sushi Kaji Restaurant - 860 The Queensway, Etobicoke, Ontario M8Y1K8 TEL:416-252-2166 http://www.sushikaji.com/
だいすけ先生 武谷大介(たけや・だいすけ)。美術家。高校卒業と同時に17歳で渡米。ニューヨーク・アカデミー・オブ・アート大学院修士課程修了。一時帰国後、カナダに渡る。現在トロント市を拠点に制作・発表。また、ラ・シタデール・インターナショナル・アカデミー美術講師として「アートの苦手な子をなくそう!」をスローガンに、子ども達を指導している。その他、JAVAアドバイザー、フリーアートライターとしても活躍中。 著書に「こどもの絵―eyes of a child (一茎書房)」がある。 www.daisuketakeya.com
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