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其の十七「Qちゃん、ゴメンナサイ! 目指せ北京!」

photo2004年3月、アテネ五輪を前にした女子マラソン日本代表に高橋尚子の名前は無く、世論は、なぜ外すのかという否定派と落選して当然という肯定派に分かれた。俺は肯定派。今でもあの決定は間違っていなかったと思っている。
高橋落選の否定派からは、今までも実績と名声だけで多くの選手が代表入りしたではないかという意見もあった。過去にも代表選考の際には、陸上に限らず様々な競技において曖昧な基準や不透明なやり取りによって急成長の選手が涙を飲むというケースが多々あり、その度に問題となった。スポーツ界は旧態依然の体質を改善する必要があった。そのキッカケがなぜ高橋なんだと思う人も居るかもしれないが、俺は高橋だからこそ良かったと思う。理由は二つ。
一つは組織の体質。改革には世論の関心や後押しが必要だ。知名度の低い選手では沢山の人の関心を集める事は難しい。そして人々が知らないうちに閉鎖的な協会が強引に物事を決定してしまう。そういった体質は、スーパーヒロインを代表入りさせるか否かという問題により、スポーツにあまり興味の無い人にまで知られるキッカケとなった。それ以降、どのスポーツも代表選手の選考には慎重である。
次に選手達への平等なチャンス。高橋は既にシドニーで金メダルを獲得した。確かに連覇という可能性もあったが、競技者全てに公平なチャンスを与える事も重要。実際にアテネ五輪に選ばれた選手は直前に結果を残した。ならば相応の待遇が無ければ努力した選手は報われない。もし直前の結果ではなく過去の名声だけで選ばれるということがまかり通るならば、サッカーや野球のオールスターゲームもただのロートル集団のレベルの低いものになってしまう。
また、この決定は高橋自身への大きな転機になったと思う。俺には高橋がシドニーで勝ってから天狗になっていたような印象がある。まるでタレントのようなコメントが増え、ストイックな面は全く伝わって来なかった。アテネ五輪の前年の選考レースでは日本人トップでゴールしたものの、内容もタイムも女王らしからぬもの。それでも実績があるから代表に選出されると過信した高橋陣営は、あと一つ残された選考レースを回避した。完全に慢心である。俺はもし高橋があのまま代表に選ばれていたとしてもアテネで勝てたとは思えない。高橋からは、シドニーの頃のようなアスリートとしての雰囲気が感じられなかったからだ。
俺は高橋はもう終わったと思っていた。しかし、その事を高橋に謝りたい。先日行われた東京国際マラソンで高橋は、素晴らしい内容のレースを披露して見事復活。35キロ過ぎに見せた他を引き離すスパートに俺は鳥肌が立ったほどだ。
アテネ五輪で代表から外れた事は高橋にとって良かったと思う。きっとあの挫折により高橋は沢山の事を考えてひと皮むけたはずだ。北京五輪は年齢的に厳しいかもしれないが心から期待している。
高橋尚子、北京で会おう!

【メイルマン】
90年、北米以外で初めてとなるNBA公式戦ユタ・ジャズ対フェニックス・サンズの日本開催を偶然観戦。そこでスピードとパワー、ファッション性に圧倒されて海外スポーツの虜となる。

最終更新日 : [12/29]
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