第九十六回

再びトロントの市営住宅に入居申請をするため、早速懐かしいシェルターへ相談に出向いた。頼りになるワーカー達を前に、私の現状と今後予想される展開、そして私の望むことを告げる。ワーカー達は話を理解し、私の意図に賛成してくれた上で即座に行動を始めた。

まずは念の為、トロント市営住宅メインオフィスへ「移民権がなくても申請できるか否か」の確認電話を入れる。基本的に「移民権を持つ者もしくは移民申請中の者」「毎月一定の収入がある者」そして「月収入の30%以上を家賃として支出している者」が申請できる条件であり、私の場合はその条件全てに当てはまる事になる。ただし私のような移民申請中でキャッシュジョブという状況の場合、移民弁護士及び家庭法弁護士からの背景にドメスティック・バイオレンス(DV)があることと状況説明の手紙を添えた方が良いというアドバイスを貰った。

申込書と共に市内の市営住宅分布地図と各々の住所や部屋数などの詳細が記載されたリスト一覧を渡され、その中から最低でも10か所以上の物件を選んで入居希望欄に記入する。選んだ物件の数が多ければ多いほど「切実に住居を必要としている」と見なされ申請受理がされやすいという。シェルターのワーカーからは「最低でも30箇所の物件を選びなさい」とアドバイスを貰った。ところがこれがなかなか厄介な作業なのである。

というのも「物件を選ぶ段階」では建物の中まで見学する事はできない。唯一ユニット内を見学できるのは実際に空室が出て自分の入居可能の番が回ってきた時のみで、その見学のチャンスも最多で3回までしかない。そしてその3回までの見学オファーで入居するか否かを決めなくてはならないのだが、もし3回目の物件も気に入らずに断った場合、「切実に住宅が必要な状況ではない」と見なされ申請自体を破棄される。

なので仮に適当に30か所の物件を選んで、その3度の見学全てに満足のいく物件が無かった場合、泣くなく最後の物件に入居するというパターンが結構あるのである。そんな事態を避けるには実際に物件のある住所へ足を運び、その周辺の環境や建物の管理状態、出入りする入居者たちの様子などから推定して選んでいくしかないのだ。

私は仕事終わりや週末子供と共に散歩がてら、地図と住宅リストを片手に気になる物件の全てを実際に足で歩いて確認し、30か所の物件を選び出した。

 

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