キャシーの日々ハッテン day.121(2016年6月17日記事)

カラフルな言葉が創るしなやかな世界

ヘテロフレキシブルという言葉を最近知った。直訳すると融通の利く異性愛という意味となる。基本的にはストレートだが、同性との恋愛や性行為にも少しだけオープンだという人を指す表現らしい。バイセクシュアルと間違えられるかもしれないけど、表面的にはあくまでストレートである。酔った勢いで同性とキスをする感じと近いのかもしれない。

「言葉は世界を創る」という考え方がある。私たちは言葉を通して、自分自身のことから世界の隅々まで認識し、理解する。新しい言葉が生まれると、それがスポットライトとなって今まで暗くて見えなかったものが照らされる。中学生の頃にゲイという言葉を知って、初めて自分が感じていたものを説明できるようになった。トロントで出会う若者はより多様な言葉で自分たちのセクシュアリティやジェンダーを説明している。ジェンダークィア(性自認が男女の枠組みに当てはまらない人)とか、デミセクシュアル(性別ではなく親密さで性的欲求を感じる人)とか、昔はあまり聞かなかった言葉がどんどん使われるようになっている。そうやって自分たちのための世界を創っているのだろう。一方で、それを非難する人もいる。「昔はゲイとレズビアンだけだったのに、今はアイデンティティが増えすぎて面倒くさい」なんて声もたまに聞こえる。せっかく自分自身を説明できる言葉を見つけたのに、周りから「面倒くさい」なんて言われたら傷付くということを想像できない人もいるのだろう。言葉が増えることで世界はもっとカラフルになる。日本語は自然や季節を表現する言葉が数え切れないほどあるから美しい。「面倒くさい」という理由でそれを無くしたら、俳句がどれだけ単調になるか想像しただけでおぞましい。

だからこそ、このヘテロフレキシブルという言葉は侮れない。普段は男性が好きだけど、中性的な女性もたまにイケる人。女性しか性的対象に考えられないけど、凄くフェミニンな男性ならもしかしたらという人。ストレートというアイデンティティを捨て去ることなく、同性に対する感情を受け入れられる人が増えるのかもしれない。そんな人が増えていけば、ゲイとストレートの間にある境界線は曖昧になって、社会はもっとしなやかになるだろう。




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