キャシーの日々ハッテン 最終回(2017年3月17日記事)

「自分には関係ない」の向こうに

周りを見れば悲しいニュースばかりだ。就任たった1週間でトランプ大統領はイスラム教徒のアメリカ入国禁止を命令した。その数日後、カナダのケベック州でモスクが銃撃に遭って6人が死亡した。容疑者はトランプ支持者で、難民批判をしていたとメディアは報じている。そんなニュースを携帯のディスプレイで読みながら、自分はいつものように通勤している。お気に入りの音楽をかけて、ディスプレイを閉じれば、そんな絶望的な世界をシャットアウトできる。またいつも通りの毎日に戻ってこれる。

社会にある問題は自分には関係ないと思っていた。他人を差別せず、法律を守って、たまにチャリティー団体に寄付すればそれでいい。残酷なニュースに心を痛めても、それに直接影響されないならすぐに忘れられる。善良な社会の一員でいればそれで十分だと思っていた。心地のいい場所から離れたくない。複雑な問題に直面したくない。誰かが全てを解決してくれるのを待っている。きっと、そうやって生きているのは自分だけではない。だから、社会はなかなか変わらない。小学校でいじめれられている同級生を見て、自分には関係ないから何もしなかった。その子が泣いていても聞こえないフリをした。身近にいる友達がうつ病にずっと悩んでいたのに、自分には関係ないから何もしなかった。その子が自殺するまで何も知らないフリをしていた。

社会に生きていれば自分に関係ないという言い訳は通用しないのに、浅はかな自分はずっとそれに気付けなかった。何も行動を取らないのは社会に存在する暴力を後押しするのと同じだ。他人を直接差別しなくても、傷付けなかったとしても、私たちは弱者を苦しめる社会の歯車を動かす一員である。

トランプの大統領就任から一夜明けて、反差別を訴えるウィメンズ・マーチが世界中を騒がせた。女性たちが率いるこのマーチには、女性以外の賛同者たちも加わって、アメリカで過去最大規模のデモ運動となった。社会に流されることなく、必死に抵抗する人たちの姿にとても感動した。こうして声を上げる人たちのおかげで社会は変わってきた。通勤電車に揺られながらディスプレイ越しに社会問題を眺める自分には何ができるのだろう。



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