カナダのビザ&移民事情

Vol. 2大臣の権限強化がもたらした弊害

(2014年5月2日記事)

 

今回は頻繁に移民法のルールが変更されることの問題点について取り上げます。

2008年2月の移民法改正(移民法87条第3項)によって大臣に大幅な権限が与えられたため、近年これまでにない頻度で移民法に関するルールの改訂や手続きの変更が行なわれている。つまり、それ以前は移民法に関する大半の事項は所定の手続きを経て国会の承認が必要とされていた。

しかし現在では、例えば、移民カテゴリーごとの申請書受付数や申請資格要件は、大臣の命令によって一定の範囲において自由に変更できるようになっている。このことは審査期間の短縮に大きく貢献し、変化する状況に柔軟かつ迅速に対応できるようになったとして高く評価されている。しかしながら、これがもたらした負の側面も見逃すことはできない。
昨年の連邦スキルワーカーの未審査ファイルの返却決定は、それまで申請から何年も待たせたあげくの突然の発表に世界中から非難され、カナダ移民プログラムに対する不信感を生みだすことになった。“方針が変わりました。一旦申請料をお返しするので、まだ興味のある人は現在の基準で改めて申請してください” という姿勢に対しては、弁護士が集団訴訟を起こし、政府は予想以上の対応を強いられている。このコストを結局はカナダの納税者が負担することになる。しかし、それ以上に困ったことが現場レベルで起きている。

このところオフィサーの“予期せぬ” 対応に困惑させられることが多くなった。昨年11月に“ Cook” という職種がカナダ経験クラス(CEC)の申請可能職種から除外された。このCookとして働くスキルワーカーの配偶者が、今年2 月にトロント空港で自分のオープンワークパーミットを申請しようとしたところ、オフィサーから“Cook はもう資格がなくなったので配偶者の就労許可証は出せない” と言われて発行されなかったという。CECから除外されても、スキルワーカーの配偶者は就労許可証を受け取れる。
しかしこのオフィサーはCECのルール変更を職種のNOC(カナダの職種分類)のレベル変更と間違って解釈。下位レベルとなったCookでは、配偶者の就労許可証が出ないと間違った判断を下したのは明白だ。コールセンターのエージェントまで含めると、こうした例は枚挙に暇がない。

大臣に権限を与えたことで柔軟なルール変更が可能となり、その結果、審査期間が大幅に短縮され、必要な人材を“Just in Time" で受け入れる体制が整いつつあることは大きな前進と言えよう。しかしながら、こうした変更を正確に伝え、短期間のうちに組織の末端まで浸透させる難しさを政府側はもっと認識し、“変化に対応する” 経験の乏しいカナダの公務員に対するトレーニングを強化することに、今まで以上に真剣に取り組むべきではないか。

 


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