カナダのビザ&移民事情

Vol. 3 激震の続く飲食業界の外国人雇用

(2014年6月6日記事)

 

今回は一時停止措置がとられたLMO と、

それによって起こる問題について説明します。

4月24日、飲食業界においてワークパーミット取得に必要なLMO(Labor Market Opinion) 利用のモラトリアム(一時停止措置)が発表された。BC 州のマクドナルドの1店舗がカナダ人従業員のシフトを減らし、大量の外国人を雇用していたことがメディアに大きく取り上げられ、更に他の飲食 店からもカナダ人に対する逆差別が横行しているという声が多数寄せられたことから、今回の異例の措置がとられることになった。
これに賛同する声は圧倒的に多いが、飲食業界の雇用主と外国人従業員の間では、先の見えない不安と焦りが広がっている。

メディアはまるで飲食業界全体が外国人雇用の中毒になったように報じているが、それはカナダ西部の州でカウンターアテンダント、サーバーなどといった、ロースキルワーカーを大量に雇用していた飲食店であって、少なくともロースキルワーカーのLMO 取得が困難なオンタリオ州には当てはま らないだろう。
日本食レストランの雇用主に代わって、シェフやクックのようなスキルワーカーのポジションの募集広告を出してみてわかるのは、応募してくるのはフィリピンや中東に在住する“ 寿司シェフ” か、サーバーとしてレストランを転々とするカナダ人、そして全く飲食店勤務経験のない人たちばかりだ。カナダ在住の日本人シェフに至っては、応募者は皆無に近い状態となっている。

こうした状況の中で、比較的経験は少ないが、やる気のあるワーキングホリデービザ保有者を、トレーニングして使いたいと雇用主が考えるのは自然な流れである。ワーキングホリデーの後LMO を利用して数年のワークパーミットを取得させ、一人前のシェフを育てるという伝統は、人材不足に苦 しむエスニック飲食業界の持続と成長を支える原動力になってきたと言える。
こうした流れを断ち切る政策は、飲食業界の発展、カナダ人雇用促進を妨げるだけでなく、カナダの誇る多様な食文化の伝播と深耕を阻害することになるだろう。いずれにしても、LMO 申請不可、ワークパーミットを更新できない状況が長く続くと、人材確保が困難となるばかりでなく、外国人就労者にとっても目標にしてきた永住権の申請要件を満たせなくなる。このコラムが出る頃にはモラトリアムが解除されて、外国人雇用に対する更に厳しいルールが発表されているだろうが、今後政府に対しては、人気とりのための一網打尽の政策ではなく、長期的視点に立ち、業界の内部事情を理解した上で地域ごと、職種ごとの精緻な分析を元にしたきめ細かい政策を期待したいものだ。

 


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