カナダのビザ&移民事情

Vol.21
新政権下で移民政策は どう変わる!?

(2015年12月4日記事)

 

今月は自由党政権の掲げる移民政策について取り上げます。


カナダ連邦政府の移民・難民・市民権大臣にジョン・マッカラム氏が就任した。マッカラム氏は政治家になる前は複数の大学で経済学の教授を務め、ロイヤルバンク・オブ・カナダのチーフエコノミストであった。住民の約60%を中国系が占めるマーカム・ユニオンビル選挙区の議員となってからは、同性婚の法制化に貢献。防衛省大臣として過去に負傷した軍人への補償を拡大するなど、人道主義的な政策に力を入れてきた。経済重視一辺倒だった前政権に対する反動とマッカラム氏の個人的信念が合致し、今後は難民問題やファミリークラスにフォーカスが向けられると予想される。

マッカラム大臣の最優先事項は、選挙公約に掲げた年内25,000人のシリア難民受け入れ実現である。しかしパリの同時多発テロ事件における実行犯が難民に紛れて欧州入りした疑いが浮上していることから、セキュリティの重要性が再認識されている。25,000人の安全性チェックをたった2か月で行なうのは現実的に不可能だろう。前保守党政権は、シリア国内でマイノリティであるキリスト教徒を優先的に受け入れる政策を取っていたとされ、当時国会で非難されたが、ある意味では理にかなっていたのかもしれない。

家族重視も自由党の掲げる政策の柱となっている。ファミリークラスのプロセスタイム短縮、親・祖父母の受入れ数を年間5,000から10,000ケースに倍増、Express Entry(EE)においてカナダに兄弟姉妹を持つ申請者のポイントを追加加算、同伴できる子どもの年齢を19歳未満から22歳未満に再度引き上げ、配偶者・パートナーの永住権取得後2年間の同居要件撤廃などが優先実施事項として挙げられている。しかしながら、プロセスタイムの削減以外の政策は、国益を考えた場合に今ひとつ首を傾げざるをえない。マーカム選挙区出身の大臣というのが頭をよぎることも否めないが、移民政策が再び政治の道具として使われることがないように注視すべきだろう。

新政権は経済移民クラスについては多くを語らない。不透明と批判されるEEシステム、オフィサーの裁量権濫用が野放しとなっているLabor Market Impact Assessment、留学生の移民への道が容易でない現状などにも、もう少し目を向けて欲しい。また前保守政権が作り出した移民申請資格を満たすための数々の障壁について、その正当性が改めて評価されることを期待したい。

 


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