カナダのビザ&移民事情

Vol.36
カナダ移民政策に差別はないのか

(2017年3月3日記事)

 

今月は成功例とされることが多いカナダ移民政策の知られていない一面を取り上げます。


イスラム教徒の入国やシリア難民受け入れを制限しようとする米国新政権の姿勢とは対照的に、カナダの移民・難民の受け入れに寛大な国としてのイメージはますます強くなっている。しかしながら、カナダは露骨には出さないものの移民・難民を出身国や宗教によって巧みに操作・選別する一面も持っている。昨今カナダの移民政策を称賛する声が多い中、あえて今回は差別的側面にスポットを当ててみたい。

カナダの強みは多様性にあり、ある一つのグループが極端に大きくなる前にそれを抑制しようとする力が働く。2000年代は中国からの移民が全盛期で、移民プログラムの各カテゴリーで移民者数トップの地位を独占した。そのため、連邦政府はスキルドワーカー移民の語学力のバーを高くし、中国人が大半を占める連邦投資移民プログラムを廃止した。その結果、現在では中国からの移民者数はインド、フィリピンよりも少ない。

前ハーパー政権時代はシリア難民の受け入れが少なすぎるとしてカナダは国際連合からも非難されていたが、当時はシリアの少数派であるキリスト教徒だけを選別して受け入れていた。現政権になってからもセキュリティーリスクが低いと考えられる女性、子ども、ファミリー、LGBTを優先し、独身男性は後回しにされている。

昨年行なわれた某スキルドワーカーのオンライン申請は、受付開始と同時に申請者が殺到し即日クローズとなったが、政府サイトへアクセスすらできなかった者が多数にのぼった。政府はアクセス可能なIPアドレスをコントロールし、フランス語圏からのアクセスを容易にしていたという噂がまことしやかに流れた。それを逆手にとってIPアドレスを操作するアプリケーションを使ってフランス語圏からアクセスしているように見せかけるやり方で無事申請できたという噂も耳にした。

日本は現在国内にビザオフィスがなく、地理的にも遠いフィリピンなどと同じグループにされてビザ申請手続きやプロセスタイムの点で不利な立場に置かれていると感じることもあったが、 結局カナダには“来てほしい”人を選別する権利があるという事実を受け入れざるをえない。称賛されるカナダ移民政策であるが、選別と差別が背中合わせの関係にある事実を認識し、政府にはこれを世界に誇大広告することがないよう願いたい。

 


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