カナダのビザ&移民事情

Vol.37
カナダとアメリカ間国境で今起こっていること

(2017年4月7日記事)

 

今月はカナダとアメリカ間の“Safe Third Country Agreement"を取り上げます


今年になってから連日のようにマニトバ州やケベック州のカナダ・アメリカ国境を徒歩で越えて、カナダへ不法入国を試みる人たちの話が報じられている。極寒の雪道を何時間も歩き続け凍傷で指を失いかけたガーナ国籍のゲイ男性の話や、カナダ連邦警察(RCMP)オフィサーに抱きかかえられ保護される子どもたちの写真、また、その人達を助けずにはいられないという住民たちの声。こうした報道に対して、彼らはどうして正規ルートでカナダに入国し難民申請しないのだろうという疑問を持つ人も多いだろう。今回はこの問題と深く関わりのあるカナダとアメリカ間の“Safe Third Country Agreement"について取り上げたい。

2004年に締結されたこの協定の目的の一つは、カナダ、アメリカ双方で難民申請者の数を抑えることにあった。この協定によりカナダ、アメリカ両国は、最初に上陸した“安全な国”を経由して入国を試みる外国人の難民申請を拒否することができる。つまりカナダは、アメリカから車または鉄道で難民申請を目的にカナダに入国しようとした者を受け入れることなく、アメリカに送り返すことができる。また、アメリカで難民申請を却下され、国外退去命令を受けて本国に返される途中、カナダの空港で難民申請をしようとしても受け付けない。しかしこの協定には法の抜け穴とも言える様々な例外規定がある。

さて、現在この協定の見直しが議論され始めている。現状アメリカに不法滞在する外国人でも正規の入国地を避ければカナダで難民申請が可能なため、リスクを冒して徒歩で国境を越える人が後を絶たない。また、予測不可能な政策を打ち出すトランプ政権の下では、今後の締め付けを恐れる不法滞在者だけでなく、合法的なステータスを持っていてもアメリカがもはや“安全な国”ではなくなったと感じる人が増えているという背景もある。

これに対してカナダ政府は今のところ、国として具体的な対応をとるほどの数ではないとのスタンスを崩していない。しかしながら、この先気候が良くなり国境を徒歩で越える人の数が激増してからの対応で果たして間に合うのだろうか。昨年欧州各国で起こったシリア、イラク、アフリカ諸国からの人々の大移動は、一旦始まってからではその動きをせき止めるのが困難なことを証明している。政府にはもっと先を見越した対応を期待したいものだ。

 


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