Laibach

bits音楽ライターによるインタビュー第二弾は、今月15日号でもピックアップのスロヴェニアのアヴァンギャルド音楽バンド・Laibach(ライバッハ)。1980年に結成され、スロヴェニアの激動の時代をリードしサヴァイヴした、歴史あるバンドです。低く這うように歌うヴォーカルと行進曲風のアレンジで、各方面から誤解されることも多かったこのバンド。過去のことから最新作での影響まで、かつては取材を受け付けないことでも有名だったライバッハが、重い口を開いてくれました。使用機材にまで言及しています。お見逃しなく!ライバッハより、Ivan Novak(lights and projection)さんがインタビューに答えてくださいました。

まずはライバッハの代表曲とも言える、この曲をどうぞ。


「Leben Height Leben(Life is Life)」(『Opus Dei』より)

【1987年のアルバム『Opus Dei』のオープニング・ナンバー。ライバッハらしさが随所に現れる。行進曲風のアレンジが心地よく聞こえ、病み付きになる一曲】


―ライバッハというと、行進曲風のドラミングに地を這うような低音ヴォーカル、ドイツ語の歌詞が思い浮かびます。(現在は作風が違っていますが)これは、このアプローチで表現したいことがあったから、こういった作風になったのでしょうか。メッセージが先なのでしょうか、それとも音楽的表現方法が先だったのでしょうか?

「原則としてはメッセージでも、音楽的表現方法でも先に出てきたものから作っているよ。けれどアルバムを作る際には僕らはいつも本能や直観に従うようにしているよ。曲のコンテント(中身)が見つかればすぐに、形やサウンドも見つかるものなんだ。製作の実際とLaibachのソングライティングのモデルは、完全に組み立てられたものだ。主題とテーマは組み立てるプロセスに影響を及ぼす。作曲の過程で魔力を抑圧することが、「表現」として翻訳される。そこでサウンドの政治化が達成される」


―ドイツ語を理解するに及ばないのですが、バンドのこれまでのメッセージ、現在の世界へのメッセージを教えられる範囲で教えてください。

「僕らのメッセージはシンプルなんだけど、それでも少ない言葉で表すには複雑すぎるから簡単には教えられないよ。メッセージを探すのに、ちょっと努力しないといけないかもね。僕らのオーディエンスは自分たちの持ってるツールや解読器(デコーダ)を使ってメッセージを解釈しないといけない。権威あるガバメントの機関が、暗号化された遠距離通信を解読するようにね。僕らが示せるのは大きな全体像と文脈だけさ。例えば、最新作『Spectre』ではここ数年起こった出来事に影響されてるよ。経済の崩壊やヨーロッパとアメリカ、そして全世界のの社会的・政治的不安。そして、一般的になっている、音楽業界とポップカルチャーの悲惨な状況についてもね」


―バンドがこれまで影響を受けてきたバンド/アーティスト、最近よく聴くアーティストを教えてください。

「僕らはここ30年の間いつも、自分たちが知り得る全てのことから影響を受けてきた。そして色んなことにインスパイアされてきた。特に映画は大きな影響だったよ。多種多様なジャンルの映画から影響を受けた。そのリストを作るのは難しいのだけど、いくつか選んで挙げるとしたら、J. B. Tito, Jacques Tati, Nikola Tesla, Marcel Duchamp, Magritte, Yukio Mishima, Orson Welles, Hitchcock, Fellini, Kubrick, J.S. Bach, Wagner, Scriabin, Schoenberg, Stockhausen, Serge Gainsbourg, Leonard Cohen, The Beatles, Pink Floyd, Sweet, Kraftwerk…このリストは永遠に続いていくよ」


―カヴァー曲について聞かせてください。クイーンの「One Vision」、ビートルズのアルバム「Let It Be」などをカヴァーされています。曲が全く別のものになっていますね。カヴァーの際に意識されている信念のようなものはありますか?

「確かに信念は持ってるよ。カヴァーソングを作る際には、原曲に惑わされないようにしてる。僕らはポップミュージックはリサイクリングの文化だと思ってて、まさにそれをやっている訳だよね。僕らのカヴァーや解釈の方法について、過去に色んなことが言われてきた。解釈ってのはかなり変わってくることも多いし、それこそ僕らがやっていることで。違いを作るってこと。僕らがカヴァー曲を選ぶ基準はとてもフレキシブルで、主に曲の方から僕らを見つけてくれるものに興味を持つんだ。僕らが曲を探そうとするのではなしにね。カヴァーするのに良い曲は、もともと分裂気味(schizophrenic)(Dr. Jekyll と Mr. Hydeみたいな)の性質を持っている。だから僕らは隠された中身を引きずりだすんだ」


「Geburt Einer Nation(One Vision)」(『Opus Dei』より)
【Queenの「One Vision」を見事にカヴァー。一つの神、一つの世界という歌詞の分裂性(裏の意味)を暴き出す】


―同じくカヴァー曲について、『Let It Be』の中で表題曲のカヴァーが収録されていないのは、特別な意味があるのでしょうか。

「実は僕らは以前のアルバム『Opus Dei』(1987、mute records)でLet It Beをカヴァーしているんだ。タイトルは「Fiat」となっていて、ラテン語で「Let It Be」の意味だけどね」


―バンドの音楽は、“前衛音楽”(Avant-garde)と一般的に言われていますが、これについてどう思われますか?

「昔は“好戦的なクラシカルミュージック”とか、あとはパンクとかメタル、ゴシック、エレクトロニック、EBM、アンビエント、インディー、インダストリアル、ポップ・インダストリアル、ロック、ワグネリアン(Wagnerian)とか、色々言われたものさ。でも僕らが実際にやってる音楽を最も正確に定義するとすれば、「レトロ・アバンギャルド」になると思う。この言葉はLaibachが1983年に発明した言葉で、現代では美術や哲学にも、国際的にその形式が造られていると認められている言葉さ」


―ライバッハの音楽はまるでアイロン(鉄)のようでありながら、そこに美しさも内包しています。オーケストラ風の叙情性といったものも、当初からのアイデアですか?

「自然の弁証法によれば、真の美は真の醜さの隣にのみ宿るもの。時として、その中にすら。音楽もこの法の例外ではないよ」


―アルバム『Kapitol』以降、何かを賛美するかのような曲も増えました。これはスロヴェニアの政治的状況も関係しているのでしょうか。

「僕らがKapitolを製作していた1991年ごろ、ユーゴスラビアは解体し、ソビエト連邦も解体し、ベルリンの壁はなくなって、チェコスロバキアも解体…そして元ユーゴスラビアでは戦争が始まった。とても混乱したカオティックな時代で、Laibachはその中にあった。だから曲もスタイルも、それに従って変わっていったんだ。でもこのアルバムでサウンドが変わった一番大きな理由は、僕らがTrackmanという新しいコンピューター音楽ソフトを初めて使ったという事実にあるよ。あとはAkai S 1000 とS 1100というサンプラーを使ったこともある。こういった新しい機器を組み合わせたことと、僕たちを取り巻いていた歴史的イベントが、Kapitolを大きく定義づけた」


―ニューアルバムについて伺います。ヘヴィーなエレクトロミュージックやテクノからの影響を感じますが、実際はどうなのでしょうか。

「僕らは80年代に既に沢山エレクトロニックな音楽をやってたし、90年代の後半にも…『KAPITAL』と『NATO』は完全にエレクトロニックな音楽だし、2003年の『WAT』も、2006年の『VOLK』も2008年の『LAIBACHKUNSTDERFUGE』も。エレクトロニック・ミュージックはLaibachにとって新しいものではないんだ。『SPECTRE』はもう2年前に作られて、直接的な影響は誰からも受けていないんだけど、少しの間、ベネズエラのプロデューサー・Arcaと彼のチームの作る、ファンタスティックな映像とサウンドに心を動かされた時期があったな」


「The Whistleblowers」(『Spectre』より)

【口笛で始まり、相変わらずのヘヴィーなヴォーカルがこれに絡む。どこかファニーな部分は、同アルバムの他の曲でも楽しめる】


―ニューアルバムでは、英語の歌詞とドイツ語の歌詞が入り乱れているようですが、言語の違いによって伝えたいことが異なっていたのでしょうか。

「ニューアルバムには、ドイツ語の歌詞はないんだ。少なくとも僕らが自覚している範囲内ではね。全ての曲が英語。セルジュ・ゲンズブールの「Love on the Beat」のカヴァー以外はね。あの曲はフランス語だよ」


―来日の予定はありますでしょうか。日本にどのようなイメージを持っていらっしゃいますか?

「日本には行きたいと思ってる。最初の日本ツアーは1989年に予定されていたんだけど、残念なことにHirohito(陛下)が亡くなってね。ちょうどその時にツアーを予定していたんだ。国を挙げて3か月喪に服するってことで、ツアーはキャンセルになったよ。92年にもツアーが予定されていたんだけど、僕らの日本のレコード会社がなくなってしまって、またキャンセルになったんだ。その後は日本で敢えてLaibachを呼ぼうというエージェントを見つけることができなってしまって。それでもLaibachがいつか、ついに日本入りして、その素晴らしいアートとカルチャーに敬意を表することができたらなと思ってる」


―トロントの日本人ファンと、日本にいる日本人ファンに一言お願いします!

「どうにかLaibachを日本に呼び寄せられるよう、一生懸命訴えかけて欲しいな。『虎穴に入らずんば虎子を得ず』というからね」。


アルバムピックアップ


『Opus Dei』

1987年のアルバム。ライバッハの世界観が完成されたアルバムと言ってもよい。全体を統一する軍隊の風味が、皮肉に聞こえてくるのは私だけだろうか。ライバッハがこの時期に伝えたかったメッセージを解釈するのも良いし、中毒性のあるこの音楽にどっぷり浸かるのも悪くない。30年近く前のアルバムなのに、色あせない良さがある。


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