Melt Yourself Downインタビューその1

「祀りを始めようではないか」まずは先入観なく下のリンク「Fix My Life」を聴いていただきたい!どこの国の音楽か、情報なしに当てることは難しいのではないでしょうか。ワールドミュージック、トライバルミュージック感満載。アフリカ音楽に近いことは、そのリズム感から掴めるかもしれません。アフリカ音楽のリズムを猥雑に響かせながら余白を楽しむかのようなリズム隊。訛った言葉で乱暴に語りかけるかのようなサックス。猥雑なようでいて洗練されたこの音は、実は“様々な音がメルトダウンする”イギリスはロンドンで生まれた音楽なのです。Melt Yourself Downの中心人物にして、ほぼ全ての作曲も手掛けているピート・ウェアハム(サックス)さんが自分たちの音楽性を“Nubian inspired party punk music”(ヌビア人・ヌビア地方にインスパイアされたパーティ・パンク・ミュージック)と表現しているように、アフリカでもエジプト南部のヌビアと呼ばれる地方の音楽から特にリズムのヒントを得ています。ジャンル分けが非常に困難で、ジャズ~(ポスト)パンク~(ポスト)ハードコア~ノーウェーブなど、人によって解釈が異なります。今やジャンル分けなど意味のないことは皆さまも周知の通り。ロンドンからアフリカ音楽の深淵にダイヴしたMelt Yourself Downの音楽は、アフリカ音楽を通して「祝祭・祀り」という音楽の原点に立ち返っているのです。 MYDといえば、iphone7「Race」(日本のCM)にてセカンドアルバムの「Bharat Mata」が使われて話題になっています。今回もインタビュアー(ピートさん)に苦笑されつつも、面白い話を少し聞き出せたか(?)いや引き出そうと努力しましたので、笑、ぜひ最後までお付き合いくださいませ。


【即興性があるようでいて緻密で、クールなのに熱気むんむん。心をつかまれるかたも多いのでは?ジャズがパンクに近づいて、もっと先に行ってしまって音楽の原点(祀り)に立ち返ってしまったかのようなカッコよさ!(ファーストアルバム「Fix My Life」)】


―最初に、バンドがどのように結成されたか教えてください。

バンドは僕ピートが2012年に結成。アリ・ハッサン・クバーン(※1)の「Habibi」みたいな音楽を作りたいと思って。


【英語で「My friend」「My Baby」といった意味のアラビア語。この曲はアリ・ハッサン・クバーンが91年にリリースしたセカンドアルバム「Walk Like a Nubian」に収録されています。】

※1アリ・ハッサン・クバーン エジプトはNubia地方の音楽、ヌビアン(Nubian)ミュージックの父と呼ばれています。

―前バンド、Acoustic Ladylandと今回のMelt Yourself Downとではいくつか違いが見受けられます。特にギターを使用していませんね。この楽器編成の違いに、どういった理由があったのでしょうか。

長年キーボードとギターで曲を書いてきたけど、そこから脱却したかった。パーカッションとベースにもっとスペースを残すような音楽を作りたくなったんだ。


―バンドネームは日本でリリースされたJames Chanceのアルバム名から取られています。ジェームス・チャンスさんへのレスペクトを感じるとともに、個人的には、バンド名が世界の「今」へのメッセージを表しているようにも感じました。リスナーに向けてメッセージを発信する意図はあったのでしょうか。

Melt Yourself Downは多様性を表しているよ。世界中からの音楽的影響の混合、ある都市を1つのメルティング・ポットのなかにギュッと濃縮したような音楽。国のアイデンティティは崩壊していて、皆のパーソナリティやエゴまでもメルトダウンして、音楽が人々を飲み込んでいくような。


―曲はメンバーが書いたり持ち寄って作られているのでしょうか。または音楽セッションから生まれているのでしょうか。

どちらもあるよ。ファーストアルバムのほとんどは僕が書いて、クシュ(voのクシャル)がそれに付け加えて、更にリハーサルでバンドが発展させていって。クシュはセカンドのLast Evenings On Earthの数曲で最初から関わっているし、他の数曲はジャムやバスキングから作られたものもある。テキサス州オースティンでのSXSWやオランダのInto The Great Wide Openフェスティバルの様子を見るとわかるよ。



【バスキング=大道芸という名の、オーディエンスと作るジャムの様子。ファーストアルバムの「Kingdom of Kush」がこんな風に作られたとは驚きです!】


―歪んだベースがドラムスとサックスとともにサウンドを進めていっています。ベースはMYDの音楽にとってとても大事なのだと思います。ベースの役割について、ご意見を伺えますか?

ベースは常になくてはならないもので、MYDにとってはそれ以上のものですらある。音楽のハーモニックな要素とリズミックな要素をつなぐものだからね。


―ヴォーカルについて、「言葉」はあなたの音楽でどのくらい重要ですか?個人的にはリスナーと音のイメージでコミュニケイトしているように思いました。これについてどう思われますか?

ファーストアルバムでは、クシュがクレオール語と自分で発明した言語で歌う自然発生的なヴォーカルを楽しんだよ。セカンドではこの方法もとりつつ、曲の中に「語り」も入れたいと思った。


―(テナーサックスについて)サックスはフロントでパンク~ダブステップ~ポストパンクのように鳴っているように聴こえました。加えて、特にセカンドではとてもキャッチ―。サックスのほうが、言葉を語っているかのように感じられたのです。これをどう思われますか?

サックスは音節を構成する性質があるからね。僕はグライムやヒップホップから多大な影響を受けているし。それと、僕はサックスが必ずしもフロントである必要はないとか、メロディックな楽器である必要はないという考え方も好きだね。


【Skepta「Shutdown」2016年のマーキュリープライズを受賞したアルバム「Konnichiwa」収録。サックスだけでなく、他の楽器の使い方も画期的。グライムの頂点にして最先端を知っているピートさんの音楽的な幅の広さ、耳の早さにも驚き。サックスが音節を構成すると聞いて「耳から鱗」。】


―ファーストに比べて、セカンドは様々なリズムパターンを使って、よりキャッチ―になりました。リズムパターンを加えたのは、意図的なものでしたか?

どちらのアルバムもヌビア地方のリズムを出発点にしているよ。そこから全てのトラックが作り上げられている。リズムは僕らにとって非常に大事なものだけど、今作っている曲は、より広い目線を出発点にしている。





アルバム紹介


『Melt Yourself Down』
($32.67 amazon.ca価格)

ジェイムス・チャンスやポップ・グループがお好きなかた(No WaveやPostpunk周辺)は、買って損はありません。そして買ったら踊るのが正解!ヴォーカルのクシャルの言語は、彼にしか分からない独自言語も混ざってスクリーム?シャウト?バンドのリズムとグルーヴにしっくり合っています。アングラ感もありますが最先端。祀り、パーティを始めようではないか。


次回はリズムの再定義についてのご意見や、影響を受けた音楽、ご自身の音楽における祀り(pray, feast)の性質についてお伺いします。お楽しみに!

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