Melt Yourself Downインタビューその2

前回に続き、Melt Yourself Downの中心人物にしてテナー(&バリトン)サックス奏者でもあるPete Warehamさんのメールインタビューをお届けします。

ピートさんは音楽学校を卒業しており、卒業後もイギリスのNational Youth Jazz Orchestraでテナー&バリトンサックス奏者として活躍しながら音楽の勉強を続けてきました。確固とした音楽の理論や実践のベースがあったといえます。2001年にはAcoustic Ladylandを結成し、バンドとして活躍します。2005年にAcoustic Ladylandは、BBC Jazz AwardでBest Bandに選ばれる快挙も成し遂げました。 2012年に「地球上のあらゆる音楽をリサーチ」(インタビューより抜粋)し、エジプトのヌビア地方の音楽に強く惹かれ、Melt Yourself Downを結成。メンバーはAcoustic Ladyland時代からの盟友以外にも、他のバンド出身者を加えた6名編成。ライヴではエレクトロニクスが加わり7名編成になるようです。

今回のインタビューでは、最近聴いている音楽から、ジャズにおけるリズムの再定義の話までお伺いすることができました。引き続きお楽しみくださいませ!


【セカンドアルバムから「Jump the Fire」。叫ぶヴォーカルを推し進めるかのように重いベースが貫きます。サックスの出番は少ないものの、効果的に使われています。ありそうでなかったエクスペリメンタルかつダンサブルな曲】


―ロンドンの音楽シーンで注目しているバンドやストリームがあったら教えてください。ロンドンといえば、様々な音楽が混ざり合う(メルトダウンする)場所ですね?

笑。ここでは色々な異質なものが「メルトダウン」しているよ、常に沢山の音楽がこちらにやってくる。新しい音楽を知る上で、最も情報が多くて信頼できるソースは、人からの口伝えの情報。それから、雑誌やブログを読んで、世界中からのプレイリストや音楽トラックを探すよ。


―最近、特にジャズの分野で音楽リズムやグルーヴの再定義が行われています。こういったムーヴメントをどう思われますか?

僕の意見としては音楽やリズムとグルーヴの再定義というのは、ジャズが最初に興った時からのジャズの大きな使命のようなもので。そして作曲家やミュージシャンは何千年とはいかないまでも何百年も、こういった要素を再定義しようと骨折ってきた。再定義は全ての音楽(家)の心にある。だから僕は本当にこれが現代だけにおこったことだとは思っていないよ。


―これまで影響を受けたアーティストやバンド、最近よく聴いているアーティストを教えてください。

ここに全てのリストを挙げるスペースはないけど、時に好きではない音楽すら聴いて、聴いたもの全てから影響を受けていると言えば充分かな。今聴いているのはーSilver Apples, The Internet, Here We Go Magic, Metronomy, Skepta, James Brown, Odetta, Frank Ocean, Mura Masa, Chance The Rapper, Sleaford Mods, Alsarah & The Nubatonesなど。


Silver Apples: 「Oscillations」

【1968年リリース、シルバー・アップルといえば「サイケデリック・エレクトリックの元祖」と言われることも多いが、この曲を聴いても分かるように、様々なジャンルの要素を含み、時代を超えた斬新さがある。彼らの影響を受けているアーティストも数多くあることだろう。今この曲がヒットチャートに載っていてもおかしくないほど】


Alsarah &The Nubatones:「Ya Watan」

【Alsarah(アルサラー)率いる Alsarah & The Nubatones(ザ・ヌバトーンズ)。自らを「東アフリカのレトロポップ」と表現しているように、アフリカ音楽のリズムを現代風にアレンジしている。NYを拠点に活動しているグループの今後も楽しみ】


―何か特定の音楽ジャンルを目指していますか?一般的にはPost punkとかjazzなどと言われていますが。個人的にはNo WaveやHardcore(Post Hardcore)のようにも聴こえます。こういったジャンルはお聴きになりますか?

それらの全てのジャンルを聴くけど、それをジャンルと捉えたことはないよ。それらは音楽であり、それぞれが上手いジャズミュージシャン(言葉の矛盾かな?)だと思う。僕は全てを吸収するよ。


―あなたがたは自らの音楽を「ヌビアにインスパイアされたパーティパンクミュージック」と説明されていました。なぜアフリカ、さらにはヌビア地方の音楽を選ばれたのでしょう。

2012年のこと。地球上のあらゆる音楽をリサーチしたよ、馴染みのない文化からのサウンドを体得しようと思ってね。Omar Souleyman を探していた時にAli Hassan Kubanに出会って、すぐに虜になった。リズムとペンタトニックなメロディが直接的に響いて、同じエネルギーを表現できる音楽を書き始めたのさ。


―私は音楽の起源は祈りや祀りにあると思っており、そういった祈りや祭りの要素をMYDの音楽から感じ取りました。ダンスミュージックのプリミティヴな形と言ってもいいかもしれません。これは誤った解釈でしょうか?

いや、とても良い解釈だと思うよ。アリ・ハッサン・クバーンの音楽も、祈りであり祀りでもある婚礼のために書かれていると思っている。


―昨年8月5日リリースのシングル「アナザー・ウェポン」は、特別な意味を持つ曲ですか?次のスタジオアルバムにも入らない予定とのことですが。

(セカンド)アルバムをリリースしたころ、どのバージョンを録るか決めてなかったことと、あの曲は満足のいくものにするためにDan Careyにお願いしていたところだった。あの曲が特別な意味を持っていたのは、曲を書いていたときに、自分のことがコントロールできず、全てをウェポンとしてつかみ取ろうとする難しい人たちとのやり取りをしていたからさ。



【MYD「Another Weapon」アフリカ音楽のリズムを基に、パーカッションがどこか明るい響きすら感じさせるノリノリなナンバー。産みの苦しみがあったことなど微塵も感じさせません】


―ピートさんは歴史を重ねて、よりアバンギャルドになっていっているように感じました。これからどんな音楽を作っていこうと思っていますか?音楽キャリアで何か目標がありますか?

アバンギャルドになっていってはいないと思う。僕の音楽は時代とともにどんどんダンスに近づいていっているし、僕の制作意欲を満たすものがあるとすれば僕の音楽が誰にでもアクセスできるものであるということ。音楽の目的地はなくて、誰かが希望をもって聴くことができて楽しめる音楽を作り続けることが目標だよ。そのためにアバンギャルドな音楽を作ることに今のところ興味がないね。


―日本にどんなイメージを持っていますか?日本のファンへのメッセージをお願いできますか?

僕のイメージでは日本はとても美しくてミステリアスでエキゾチックな場所だと思っている。歴史が詰まっていて、素敵な文化があって。Melt Yourself Downを気に入ってくれてとても嬉しいし、ファンの方々のために日本に行けたらと思っているよ!


アルバム紹介


『Last Evening On Earth』
(CDN$24.25/amazon.ca価格)


ピートさんも仰っているように、今作ではヴォーカルに一番の変化がみられます。言葉を伝えようという意図がみえるのです。ダンサブルな面は更に推し進められているものの、言葉を伝えようとしているヴォーカルが中心になる曲も多くあります。とはいえクシャルの絶叫や独自言語も健在。何よりも楽しく踊りながら聴くべし。



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