蔵の道 其の二(2012年8月17日記事)

蔵元=杜氏の酒

十四代

カナダの皆さんこんにちは。前回のコラムは自己紹介で終わってしまったので、今回からは色々な情報を織り交ぜて書いていこうと思います。
まず、蔵元と杜氏のお話をしましょう。現在の日本の地酒業界で人気の高いお酒は、「蔵元=杜氏」という図式が完成しているところが多いです。
蔵元はその昔、南部杜氏や越後杜氏など杜氏集団にお願いをして蔵に来てもらい、酒を造っていました。杜氏集団とは農家の出稼ぎの人たちの事で、農家は冬に仕事が欲しいですし、蔵は酒造りをする冬の時期だけに人数が必要ということで、需要と供給が見事にマッチした素晴らしいシステムでした。この杜氏集団の中で、最も有名で最も構成人数の多い集団が、私の蔵のある岩手県にある「南部杜氏」です。300名以上の認定された南部杜氏がおり、岩手だけでなく、北は北海道から南は四国まで、全国に足を運んで酒造りをしています。そのほかには「越後杜氏」や「丹波杜氏」などが有名です。
しかし、このシステムも農家の高齢化により杜氏の高齢化も必然的に出てきており、中には杜氏を呼ぶことが出来なくなる蔵もここ10年でたくさん出てきました。
そんな中で、杜氏がいなくなり、蔵元の息子が杜氏となって大成功した蔵が山形県にあります。かの有名な「十四代」の蔵です。ここは息子さんである専務が東京で修行中に杜氏さんが蔵に来られなくなり、酒造りを断念せざるを得なくなりました。ここで専務さんが意を決して杜氏を継いだのです。彼の造り出した酒は全国で評価され、たちまち十四代は山形の小さな無名の蔵元から全国でも手に入らない酒NO・1の蔵になりました。
十四代の成功以降、蔵元の息子が杜氏を兼ねる蔵は非常に多くなりました。これは自分の家の酒を杜氏集団に外注するのではなく、自分の思いのこもった酒に自分で造り上げたい、という自然な気持ちから、このような流れになってきています。そしてそのようなお酒は、間違いなく全国で高い評価を得ています。
まだカナダには少ないですが、蔵元が杜氏を兼ねるお酒としては「富久長」「獺祭」などが日本でも高い評価を得ています。自分の蔵、会社、銘柄を実質背に背負っている人間が造る酒には「うそ」や「ごまかし」は一切ありません。是非その「魂の酒」を飲んでみてください。


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