蔵の道其の六(2012年12月21日記事)

無ろ過の話

今、日本で非常に高い評価を受けている地酒には、キーワード的な言葉があります。「無ろ過」「生原酒」このような、言葉がラベルに書かれた日本酒が非常に好評を得ています。福島県の飛露喜、山形県の十四代、をはじめ、非常に多くの地酒蔵が現在日本酒のろ過をやめて、そのまま出荷する事をしています。

南部美人でも10年前から炭素ろ過を一切廃止して、しぼったままを、そのまま飲んでいただけるように酒造り、貯蔵、全てで努力してきました。

picture 普通の日本酒は、貯蔵中に熟成による着色や、風味の変化をおこします。これは特殊な火入れの方法や、完璧な冷蔵設備が無いところは、ほとんどそのようになります。その着色や風味の変化を矯正するために、真っ黒な墨の粉を日本酒に入れ、フィルターを通すのが炭素ろ過です。炭素は多面体吸着物質ですので、色や風味を吸着し、日本酒を綺麗にします。

しかし反面、悪いところも取りますが、良い部分も取ってしまい、味も香りも薄く、特徴の無い日本酒になってしまいます。

私たち「地酒」を造る蔵は、他の蔵と同じ味わいを求めていません。しかし、日本の地酒と言われる蔵元のほとんどが炭素ろ過をした日本酒を出荷しています。これは、日本で昔ブームになった新潟酒の「端麗辛口」を今でも追いかけている蔵元が多いことや、戦後の級別検査の時代までさかのぼり、その際には水のような色の酒が一級になっていたことなどが原因であります。今現在、カナダでも「無ろ過」の日本酒は南部美人をはじめ、数えるくらいしかありません。

無ろ過の日本酒は嘘をつけませんので、蔵の技術がはっきりとわかります。また、味わいがとても豊かですので、どんなお料理とも楽しむことが出来ますし、日本酒自体をじっくりと味わうことも出来ます。もちろん蔵としては、炭素ろ過に頼ることが出来ませんので、しっかりとした火入れの計画、そして冷蔵貯蔵、冷蔵輸送を徹底します。

まだまだカナダには少ないですが、近い将来、日本で評価される「無ろ過」の日本酒が今後輸出され始めると、今まで以上に日本酒を比べて飲む楽しさが増えます。ろ過に頼らずに出荷できる蔵元の海外進出を今後も願います。


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