蔵の道其の八(2012年2月15日記事)

仕込み水

日本酒は米、米麹、水を原料として仕込まれます。その中でも最も構成比の高いものが「水」です。ワインはブドウの水分を使って仕込みをしますが、日本酒造りでは水分の無い米を液体化し、発酵しやすくするために水を使います。日本ではこのお酒を仕込む水を「仕込み水」と言って、お酒の会や懇意にしている近しいレストランで飲んでもらっています。また、秋田の天寿さんや石川の福光屋さんなど、この仕込み水を一般販売している蔵元もあります。

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水には軟水と硬水がありますが、基本的には日本の水はヨーロッパなどと比べると軟水の部類に入ります。しかし、その中でも硬水と軟水とに分けられます。
昔は発酵技術が未熟で「灘の宮水」を代表とした硬水の水での仕込みが重宝されておりました。ミネラルをふんだんに含む硬水は発酵を助成し、お酒が造りやすかったようです。また硬水で仕込んだお酒は春の酒の味が硬く、熟成させて秋あがりが良いとも言われています。
反対に軟水で有名なのは広島県で、広島はこの軟水を使用した吟醸酒造りで一躍全国へ名を轟かせました。この仕込み水の中には、存在してはいけない成分が1つあります。
それは「鉄分」です。
仕込み水に鉄分が多いと、麹の造るデフェリフェリクリシンと結びつき、赤橙色のフェリクリシンという物質になって酒を着色させます。南部美人ではどうかというと、仕込み水は中硬水となります。鉄分は全く含まれませんし、汚染もされておりませんので、ろ過や鉄分を取り除く作業など、一切の処理をすることなく、湧いている井戸水をそのまま使うことが出来ます。

井戸の中をのぞいてみると、真っ青に光った水が湧いています。この井戸ですが、仕込みが始まる前には全部水を出して中を綺麗に掃除します。また、仕込みが終了した後も同様に綺麗に掃除します。このように蔵元は仕込み水を非常に大切に考えています。米は買えても仕込み水は買えないからです。さらに、仕込み水は環境破壊が進むと使えなくなってしまいます。蔵元は環境にも配慮して、毎日を過ごしているのです。


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