蔵の道其の九(2012年3月15日記事)

麹の話

日本酒は昔から「1麹、2もと(酒母)、3造り(もろみ)」といわれ続けています。この言葉からもわかる通り、麹造りは酒造りにとって非常に重要になってきます。

味は麹から、香りは酵母からと言われるように、麹は日本酒の味に対して非常に大きな影響を与えます。日本酒をつくる麹は「黄麹菌」と言われる種類が使われます。この麹菌は甘みが強く、酸味がほとんど出ません。まさに日本酒らしい味わいを造りだします。これに対して、焼酎は「白麹」や「黒麹」という種類を使います。これらは 甘みよりも酸味を多く出す麹菌で、日本酒では使うことがとても難しいです。

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麹は糖化酵素や液化酵素などを供給する役目をしており、現代ではこの麹が供給する酵素はほぼ解明されています。しかし、そのような、麹が作り出す酵素を使い、麹を一切使わないでお酒を仕込んだ実験では、日本酒の味とは全く別の味わいを持ったものが出来上がったそうです。このことから、麹は酵素を供給することが1番の目的ではありますが、日本酒らしい「味」を決める上でも重要な要素となっていることがわかります。

そんな麹造りですが、酒造りの中では非常に労力と経験や技術が必要となります。例えばもろみは約30日かけて出来上がりますが、麹は48時間から55時間という、もろみよりも短い時間で完成させなければいけません。よって、作業の時間経過は、1時間後とか、2時間後とかで考えないといけなくなります。そうなると夜も寝る時間が無くなってしまいます。交代で仮眠を取りながらやってはいますが、非常に大変な作業となります。

南部美人でも麹造りは非常に力を入れており、2001年に新しい麹室を作り、手造りのまま、麹にとって最高に良い環境を準備して造っています。ところで、昔から「酒蔵に行くときは納豆を食べてはいけない」と言われていますが、これは実はこの麹と深い関係があります。

納豆を作る納豆菌は非常に繁殖力が高く、麹を造る部屋に入ってしまうと、好環境ですので麹菌よりも早く繁殖してしまい、ネバネバの麹になってしまうのです。ですから、麹を扱っている私達蔵人は冬の間は一切納豆を食べることが出来ません。このような苦労をして日本酒の味の基盤である麹を手造りで造っていますので、これから日本酒を飲むときは麹の味わいなのだと感じながら飲んでみてください。


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