蔵の道其の十(2012年4月19日記事)

酵母の話

日本酒は昔から「1麹、2もと、3造り」といわれ続けています、と前回のコラムにも書きました。今回は2番目に大事だと言われている「もと」のお話をさせていただきます。

「もと」は別名「酒母」とも言われており、読んで字のごとく「酒の母」です。「もと」では日本酒のアルコールを造り出す「酵母」を2週間から3週間かけて育てます。
よく「山廃」とか、「生もと」などとラベルに書かれているお酒がありますが、これはすべて、この「もと(酒母)」の造り方の説明となります。「生もと」「山廃」のもとの説明についてはここでは長くなりすぎるので割愛しますが、これらのもとは、伝統的な古くからある製法で造られており、今では数少ない製法になっているということを理解していただき、今回は広く今一般的な「速醸酒母」について説明します。

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この、アルコール発酵を司る「酵母」には様々な種類があります。昔は家付き酵母と言われ、蔵の中に住んでいる酵母を自然な状態で培養して使っていました。約100 年前に醸造試験所が出来て酵母の研究も盛んになり、良いお酒が出来ている蔵のもろみから酵母を採取、醸造試験所での培養が始まりました。この酵母は「協会酵母」として全国の酒蔵に配布され、日本全国で良いお酒が出来るようになったのです。協会酵母は1号から現在では
18号まであります。このような全国版の協会酵母に対し、東北では各県でオリジナルの酵母開発が盛んに行なわれています。秋田県の「AK-1」を筆頭に、福島県の「夢酵母」など様々あります。岩手県でも「岩手吟醸2号酵母」という酵母を開発して、オリジナル酒米とオリジナル酵母で岩手特有のお酒を商品化しています。さらに同県では近年、また新しい酵母「ジョバンニの調べ」と「ゆうこの想い」の2種類を開発。酵母の開発が頻繁に行なわれていることからもわかる通り、今の日本酒製造の現場において、酵母の選択肢の広さはとても重要になっています。
酵母は香りを司っていますが、現代の酵母、特に協会16号と17号、18号に関してはバイオテクノロジーを駆使しています。吟醸香の成分の中でも特徴的なリンゴの香り(カプロン酸エチルエステル)を特異的に出すように、遺伝子学の技術を用いて作られています。しかし、同じ酵母、同じ米を使っても、違う蔵で酒造りをした場合、どうしても同じ味にはなりません。これは水の違いもあるのですが、元来蔵に付いている「家付き酵母」という超オリジナルの酵母が香りや味に多少の影響を与えているようです。

日本酒は、酵母の種類で様々な香りを楽しむことが出来ますので、意識して味わってみてはいかがでしょうか?


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