蔵の道其の十一(2012年 5月17日記事)

もろみの話

日本酒は昔から「1麹、2もと、3造り」といわれ続けています、と前回と前々回のコラムにも書きました。今回は3番目に大事だといわれている「造り」についてお話したいと思います。原料米、水、麹、酵母、と今までお話してきた全ての材料を1つにまとめるのを「造り」といいます。これら全てが1つのタンクに入り、日本酒の本仕込み、本発酵がはじまります。この段階が、日本酒造りの中で最も時間を要するところであり、忍耐力が必要になってきます。

ワインや焼酎は20度から30度程度の高温で発酵させるのですが、日本酒は10度から15度という低温で発酵させます。さらに発酵期間も他の酒類よりも長く、純米酒や本醸造などでは25日くらい、大吟醸や純米大吟醸などの最高級クラスになると、何と30日から35日かけて発酵をします。「低温長期発酵」が日本酒の発酵の一番の特徴でもあります。この日本酒の発酵ですが、世界でも類を見ない特徴的な発酵の形態をとります。世界の醸造酒は単発酵や単式発酵が主流です。つまりすでに存在する糖分を酵母がアルコールに変える発酵です。これに比べ、日本酒の発酵は「並行複発酵」という形態をとります。

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この発酵はどのようなものかと言うと、同じタンクの中で「糖化」と「発酵」が同時に行なわれるということです。麹が米を糖化して糖分を作り、その糖分を酵母が取り込みアルコールに変える、という作業が25日から35日も続きます。このように酵母に対して餌である糖分を最後まで麹が供給できるので、日本酒は世界の醸造酒の中でもまれに見る度数の高いアルコールを作り出すことが出来ます。ワインは14度程度ですが、日本酒は純米酒で18度近くまでアルコールが出ます。

そして、このような低温長期の並行複発酵により、アルコールも出ますが、それ以外にたくさんのアミノ酸も作り出す事ができ、日本酒はあのような豊かな味わいになります。千年以上も前から、このような世にも不思議な難しい発酵形態を考えだし、それを使いこなしてきた古の日本人はすごいと、あらためて感じます。このように手間と時間をかけて、一滴のお酒が出来上がりますので、日本酒を飲むときはじっくりと味わいながら楽しんでください。



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