蔵の道其の十六(2013年 10月18日記事)

火入れについて

以前も書きましたが、日本酒には防腐剤が入っておらず、殺菌は火入れと呼ばれる熱殺菌で行なわれます。日本酒を腐らせる菌は「火落ち菌」と呼ばれ、乳酸菌の一種です。
この菌を殺菌することと、生酒の酵素の働きを止めて安定した熟成をさせることを火入れは目的にしています。火落ち菌は60度以上の温度で殺菌できることから、通常は62度から65度の温度にお酒を加熱して殺菌します。

殺菌に関してはフランスの細菌学者ルイ・パスツールが1600年代に発見した低温殺菌法が有名ですが、日本ではそれより前の室町時代、1400年代に火入れの技術を考案していたとも言われております。昔の日本人の知恵には驚かされます。
さて、火入れは通常、「本火入れ」と「出荷火入れ」の2回、行なわれます。本火入れとは、しぼった生原酒に対してする1回目の火入れです。通常の方法はタンク貯蔵用火入れと呼ばれ、蛇管かプレートヒーターでお酒の温度を上げて、それをタンクにホースで持って行 き、タンクが満タンになったら水をタンクにかけて冷却いたします。
それ以外の方法としては瓶貯蔵用火入れがあります。こちらはしぼったお酒を一升瓶や720ml瓶に詰めてしまい、そのまま湯煎で温度を約 65度まで上げて、その後水をかけたり、大型扇風機で風を当てたりして急冷却する方法です。

タンク貯蔵用火入れのメリットは、大量のお酒を場所取らずに貯蔵が出来ると言う点です。デメリットは、お酒の劣化を非常に促進してしまうこと。65度でタンクを満タンにするためには1万リッタータンクで約1時間かかってしまいます。そうなると、お酒は長い時間、高温の状態におかれます。そして、1万リッターのタンクを10度以下まで冷やすには約1日かかります。つまり、高い温度に長く置かれるためにヒネ香や着色の促進が始まり、お酒の劣化のスピードが速くなるのです。

瓶貯蔵用火入れのメリットはお酒の劣化が非常に少なく、しぼったままのフルーティな香り、綺麗な味わいを保てることです。前述のタンク貯蔵用火入れと比べると圧倒的に短い時間で火入れすることが出来ます。一升瓶、720ml瓶に生酒を入れて湯煎するのですが、65度まで 上がるのに約30分、そして10度以下まで冷却するのに約1時間と、圧倒的に早く冷却することが出来ます。
デメリットは、タンク貯蔵に比べると貯蔵の場所を多く必要とすることです。

Sakekasu そこで、南部美人ではこの両方の良いところを取り入れた最新の火入れ方法を考案し、ほぼ全てのお酒に使用しております。
65度に熱したお酒を急激に10度以下まで下げてタンクで貯蔵するものです。1リッターのお酒を65度に加熱、その後10度以下まで冷却するのには約1秒で終了してしまいます。これは瓶火入れよりもはるかに短い時間となり、香り、味とも生酒とほとんど変わらないほど変化がありません。現代の酒造りは火入れも非常に大事な味の確定要素となります。

<写真: 南部美人オリジナルの火入れ装置>


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