Tomori NagamotoのLife Lessons lesson.36

(2013年5月17日記事)


グループで仕事をしていると、ある人は計算に強く、ある人はコミュニケーション能力が高いなど、それぞれの持ち味が見えてくる。たとえ本人が、私には取り柄がありませんと言っても、もの静かな性格がグループに良いムードを与えてたりして、実はそれこそが一番の特性だったりする。

かつてのプロジェクトで、ある女の子をリーダーに抜擢したことがある。選んだ理由は、彼女が「暇だった」こと。
これ一点。 そのプロジェクトには他に経験もあり、才能もある人たちが集まっていたのだけど、皆それぞれ別の仕事も抱えていて、誰もリーダーなんて引き受けたくない。自分の仕事がある時だけスタジオに来て、作業が終わったら即撤収するスタイル。僕は僕で、他に4つも同時にプロジェクトをやっていたので、ほとんど顔を合わせる暇すらなかった。
そんな時、唯一ボランティアで、肩書き無しで参加してくれていた子がポツリとつぶやいた、「居るだけなら出来ます」と。当時、無職だった彼女には時間だけが無限にあったのだ。

その日から2か月間、彼女はスタジオに泊まり込みを開始し、スタッフが来たら夜中であろうが早朝であろうがドアを開けてくれた。この、スタジオに「いつも誰かがいる」状態は、予想以上に好影響を与えた。 スタッフは自由な時間にスタジオに立ち寄り、それぞれの作業を済ませる。作業が終わってウダウダしているうちに、他のスタッフが来て話に加わる。そうしてコミュニケーションが生まれ、新たなアイデアが立ち上がったりした。彼女はそれを後押しするように、疲れた人にはコーヒーを淹れ、腹が減った人のためにテイクアウトの食べものを買いに出掛けた。それだけでなく、各スタッフの作業状況をグラフにして、誰もが共有できるスケジュール表を作った。僕はただスタジオに行き、彼女に進行状況を確認するだけで全体の流れというものが把握できたし、誰と誰の相性がいいとか、誰が寝不足で体調が悪そうだといった、現場にいなければ決して分からない事柄を知ることができた。

そのようにして、彼女はハブの役割を果たし、見事プロジェクトを成功に導いたのである。普通であれば、スキルが無い、技術が無いこと=「何もできない」と思い込んでもおかしくないが、彼女の場合、他の人はみな「時間が無い」けれど、自分には「ある」ことに気づき、それを強みとして生かしたのである。

日本に帰国した彼女は今、ある有名企業のプロジェクトマネージャーとして活躍している。もちろん、もう24時間の泊まり込みなんてしてないだろうが。誰かの「できない」をチャンスととらえる。僕は彼女からそれを学んだ。

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